(荒部 好)

『芸のこと技のこと』江口隆哉対談集

金井芙三枝・今井重幸・坂本秀子/監修

江口隆哉は高田雅夫・せい子夫妻に師事。大正時代、妻の宮操子とともに当時、最も先端的だったドイツのマリー・ウィグマン舞踊学校に入学。ドイツのモダンダンス、ノイエタンツを学ぶ。帰国後、「新興舞踊」を提唱し、日本の現代舞踊に大きな影響を与えた。また、日本女子体育大学の講師に就任し、舞踊教育にも大きく貢献した。
昨年、江口・宮アーカイヴにより、『プロメテの火』『スカラ座のまり使い』などの復元公演が行われたので、その作品の一端に触れた方もおられるのではないか。

1209book.jpg

『芸のこと技のこと』は、江口自身が自費で1953年から72年まで出版していた月刊誌『現代舞踊』の特別企画「芸のこと、技のこと」をまとめたものである。主体となって監修にあたっているのは舞踊家の金井芙三枝。
対談の相手には、じつに様々なジャンルの人々が招かれている。
名前を挙げると林家正蔵(八代目)、伊東深水、武原はん、藤原義江、中能島欣一、宇野重吉、淡谷のり子、棟方志功、木村伊兵衛、伊藤熹朔、伊福部昭、川尻泰司、小野喬、坂東三津五郎(八代目)、本郷新、團伊玖磨、小川哲男、伊藤武雄、高田せい子、東山千栄子、栃ノ海、高野松山、飯田十基、徳川夢声、田中良、千田是也、遠山静雄、伊藤大輔、河野鷹思、坪内士行となる。
もちろん、各界の錚々たる人物であり、筆者ともそれぞれのジャンルで深い関わりもつ人物が多いから中味が濃く、達人の域に達する言葉にもしばしば出会う。
それにしても昔の舞踊家は人物が大きかった。様々な分野に精通しているし、言葉も充分な重みを持っていて説得力があるのだ。
一つだけ、個人的に興味があり関心を引かれたことを挙げておくと、映画監督の伊藤大輔が映画を目指す前は、バレエに魅せられていた、ということ。有名なことなのかも知れないが、私は知らなかった。もし、バレエの道に進んでいたらどんなダンサーが誕生していたのだろうか。

『芸のこと技のこと』江口隆哉対談集
金井芙三枝・今井重幸・坂本秀子/監修

アートダイジェスト 刊 定価・本体2,400円(税別)