(荒部 好)

『名作バレエ50 鑑賞入門』

渡辺真弓/文・監修  瀬戸秀美/写真

Dance Cubeで創刊号から2006年7月まで、パリに滞在してオペラ座を中心としたパリ情報を担当した渡辺真弓が監修・執筆した一冊が刊行された。「これだけは知っておきたい」とサブタイトルが付けられたバレエ名作50タイトルの鑑賞入門書だ。
ハンディサイズにまとめるためにタイトルも50作品に絞り、ストーリー、見所、データ、エピソードを舞台写真とともにコンパクトにまとめている。瀬戸秀美撮影の美しい舞台写真が豊富に納められ、ページを繰るとまるで劇場にいるような臨場感が感じられる。写真に映されているダンサーも最新の舞台となっているので、衣裳や舞台美術などを含め「今日のバレエ」に接する楽しさがある。
伝統的なクラシック・バレエからバレエ・リュス、20世紀のバレエまで作品選択も誠に妥当で、監修者のオーソドックスで豊穣な鑑識眼の確かさが現れている。コンパクトにまとめるための監修と編集の細部への配慮も行き届いていて、作品理解のための基礎知識が要領よく理解できるように工夫されている。

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巷にバレエ入門書は多いが、筆者の独り善がりや知識の浅薄により偏って編集されたものも多い。ロシアの専門家が書くとアメリカが手薄になったり、フランスのバレエを偏重して英国バレエがおざなりになるなど、入門書としての不十分なケースが多々見受けられる。あるいはまた、ダンサーの人気に便乗した軽薄な編集やビニール本にして読者に気を持たせるなどの傾向があり、正統的なバレエの知識に基づいた編集がなされたものは、厳格に見ていくと非常に少ない。
そうした中で『名作バレエ50鑑賞入門』は大いに推奨したい一冊だ。

バランシンは「101 Stories of the Great Ballets」を編み、シリル・ボーモントは「Complete Of Ballets」を執筆した。ともに広い視野と潤沢な知識によって偏向することなく基礎的情報を掲載しているので、今日でも基本資料として得難い書物となっている。本書の著者にも、さらに詳細で浩瀚な一冊を期待したい。