(荒部 好)

『ダンサーなら知っておきたい「トレーニング」のこと』 

『ダンサーなら知っておきたい「からだ」のこと』
水村真由美 著 / 大修館書店 刊

かつてはクラシック・バレエのダンサーがモダンダンスやコンテンポラリー作品を踊ることは希だった。しかし、今ではコンテンポラリー作品を踊らないクラシック・バレエのダンサーはいない、と言っても過言ではない。クラシック・バレエを教えるための学校でも、年々、コンテンポラリーのクラスが増えている。中にはもう既に半分以上がコンテンポラリー系のクラスになっているバレエ学校もある。実際、バレエ学校を卒業してもクラシック・バレエだけしか踊れなくては受け入れてくれるバレエ団の門戸は極端に狭くなってしまう。

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これはダンサーにとっては大きな問題で、単に学校や既成のカリキュラムだけをこなしていたのでは、状況に対応していけなくなってしまう。どうしても自身の身体を管理し、それに応じた訓練を行っていかなくてはならなくなる。しかし、一般のバレエ教室などでは身体の仕組みとダンスの関係を教えてくれるところは、現状ではほとんどない。
『ダンサーなら知って起きたい『トレーニング』のこと』『ダンサーなら知っておきたい「からだ」のこと』は、そうした必要性に応えるダンサーにとってじつにタイムリーな本である。

「からだ」のこと、は既に刊行されて版を重ねているのでご存知の方もいるかもしれないが、骨、筋肉、関節など身体の部位の基礎知識から始まって、動きの仕組みとして、アラベスク、脚を高くあげる技、重心移動、足裏の役割、目の動き、音楽との関係、社交ダンスやスパニッシュ、ハワイアンや日本舞踊ほか様々なケースを丁寧で分かり易い図解入りで解説している。さらに水分やエネルギー、栄養補給についても説明している。
そうしたことを踏まえた上で、「トレーニング」のこと、はダンサーの身体に即したトレーニング方法を体系的に語っている。

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クラスなどのダンサーの基礎訓練と舞台で踊る本番との運動量のギャップがいかに大きいか、ということから語り起こして、ダンサーとしての「からだ作り」が如何に大切か、またそのためにはどのようにしたら良いか、などが懇切丁寧に述べられている。そして実際に行うトレーニング方法と効果も、部位別に駒割りの写真入りで細かく説明される。
最後の章は、「ダンスで起こるからだのトラブルとその予防」。ダンスによる怪我の発生要因、予防法、ヘルスケアほかあらゆるトラブルへの対処法をまとめている。
筆者は、6歳からバレエを習い始め、谷桃子バレエ団に在籍して踊っていたこともあるが、その経験からダンサーの立場に合わせた記述を心がけていて説得力がある。現在筆者は、お茶の水女子大学の身体教育学専攻博士課程を修了し、同大学大学院の準教授で身体運動科学を教えている。

『ダンサーなら知っておきたい「トレーニング」のこと』 
定価(本体1,600円+税)

『ダンサーなら知っておきたい「からだ」のこと』

定価(本体1,700円+税)

水村真由美 著
大修館書店 刊