(荒部 好)

『パリ・オペラ座バレエ物語』夢の舞台とマチュー・ガニオ

大村真理子 著
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『パリ・オペラ座バレエ物語』は第1部が、パリ・オペラ座バレエ団のダンサー、今をときめく現役エトワールからバレエ学校の生徒までを広く取材して、「フィガロ・ジャポン」に連載した記事を加筆訂正したもの。第2部は若いノーブルなエトワールとして人気を集めるマチュー・ガニオに、その体験からダンサーとしての現在について密着取材したものをまとめた一冊である。
まずそのグラビア雑誌なみにふんだんに掲載されている写真が圧巻。オペラ座の良き協力が得られたからだろうが、今まさに踊っているエトワールたちが出演して盛んに上演されているレパートリーの舞台写真が、惜しげもなくページにあふれていてファンは充分に楽しむことができる。
そして世界最高の水準を誇るパリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちの、今の声も存分に収められている。
芸術監督ルフェーブルの方針もあるのだろうか、現役のエトワールたちが次々と振付作品を発表していることも、パリ・オペラ座バレエ団の大きな特徴のひとつ。そうしたいわば気心の知れた、しかしまたライヴァルでもあるダンサーたちがひとつの舞台を協力して創り上げていくことについてのコメントがなかなかおもしろい。

マチュー・ガニオは、まさに希有な素材である。クラシック・バレエの名作から、ベジャール、さらにはマクレガーのような気鋭のコンテンポラリー・ダンスまで、じつに自然に無理なく踊り、その美しさを苦もなく表現できるダンサーは彼を措いてはないだろう。
私が彼に初めて会ったのは、お母さんのドミニク・カルフーニとお父さんのデニス・ガニオを共同でインタビューした時。彼は母カルフーニの腕の中で満足そうに目を輝かせていた。そしてその日のソワレの『マ・パブロワ』で、母に手を引かれてデビューを果たした。あのよちよち歩きのマチュー君がエトワールとしてパリ・オペラ座の世界最高の舞台を牽引しているのだと思うと、まるでほんとうに夢でも観ているような気持ちにさせられる。
第2部で母カルフーニについても語っていて、まことに興味津々だった。

バレエの歴史は、日々刻々と刻まれていくのであるから、パリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちの今の声に耳を傾けておくことは、とても大切なことだと思われる。

阪急コミュニケーションズ 刊
定価:本体2,200円+税