(荒部 好)

『名作バレエの踊り方』

谷桃子 監修・雨矢ふみえ 著/健康ジャーナル社 刊
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『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』『ジゼル』『ロミオとジュリエット』他の古典名作バレエは、いつの時代にも踊られ続けられ、これからも踊られていく。
それぞれのバレエ作品には、物語と音楽と振付があって、それにそってダンサーは登場人物を演じつつ踊る。ダンサーは、振付を学ぶと同時に登場人物の心理や感情を明確に理解して、表現を作ってく。
そのためには、バレエのテクニックを修得するのと同じように、古典名作バレエの世界をより深く理解する必要がある。そして古典名作バレエは、シンプルな物語であっても様々な解釈が許されているし、登場する人物像も様々な面から掘り下げていくことができる。
もちろん、コンクールなどで全幕バレエの一部分を踊る場合も、その人物がバレエ全体の中でどのような立場にあるか、をしっかりと把握して踊らなければ表現を作ることはできない。

この『名作バレエの踊り方』は、そのような視点から名作バレエの重要なポイント、物語、役作りのヒント、テクニック&アドヴァイスを解説している。チャイコフスキーの三大バレエを始めとして、代表的な名作バレエの17作品ををとりあげていて、今日、よく踊られている作品は網羅されている。
そのほかにも、東京バレエ団のプリンシパル、井脇幸江のインタビューや実際に踊るためにどういうことが必要になるか、をQ&Aで極めて具体的にアドヴァイスしている。
この本の特徴は、「コンクールの選者はどこを見るか」という視点を現場のバレエ教師の声を通して、できるだけ具体的にダンサーに伝えようとしていることである。そこが踊りの現場を知らない人の安易な上から目線の通り一遍の解説とは違う、ダンサーに対して説得力のある表現になっている。
テクニックの修得のみに目が注がれがちだが、もし、この一冊を書店で見る機会があったら、ぜひとも監修者の谷桃子の言葉だけでも一読してもらいたい、と思った。

『名作バレエの踊り方』
谷桃子 監修 雨矢ふみえ 著
健康ジャーナル社 刊
定価:本体1,800円(税別)