【第50回】右のものと左のもの

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

「旗上げゲーム」はお得意ですか?「赤上げて、白上げて」というものです。あれは、誰かの指示に素早く反応して、どちらの手が赤白を持っているか「右手と左手」に脳内で転換して(反射神経)、その腕を上げ下げする(運動神経)というゲームで、はっきり言って「体を動かす」というよりは「頭を使う」ものです。

今回は「振りを上手に覚えるコツ」のテーマと言いたいところですが、どちらかと言うと「自分がどの腕脚を使っているか?」の認識を見直してみましょう。

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左右の概念を捨てる

どちらが自分の右腕で、どちらが自分の左脚であるか?という「左右当てゲーム」の概念は捨て去ってしまいましょう。人に「右手を見せて」と言われて出すのと、自分が「この手を見て」と差し出す右手は、すでに全く違う次元の意識にあります。自分にとっての右腕は「この(右)腕」であり、左腕は「この(左)腕」であって、意識が向いてその「腕を動かしている」という感覚を持つことが大切です。

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感覚の再確認

「考えるより感じてみよう」です。
両腕を左右で同じように上げたとしても、人は必ず、どちらかの腕に意識が強めに入っています。よくよく「こっちが右でこっちが左の腕」と意識を向けてみて、はじめて「それぞれの腕が何をしているか?」を感覚で捉えることが出来て、そうでなければ無意識=利き腕が勝手に強めに動いている、ということになります。
ではどのようにすれば、両の腕を一気に感じて動かせるのでしょう?
答えは様々ありますが、一つは「左右の中央を接点とした、一本の繋がりを考える」です。

脚の中央接点.jpg

腕の中央接点.jpg

両腕の中央接点は、肩口から鎖骨を越えて「胸骨」。背中側で見てみると、肩胛骨を越えて「胸椎(胸裏の背骨)」
両脚の中央接点は、股関節を越えて、骨盤前後の中央を考えるといいですね。背面は骨の繋がりがはっきりしているので、前回ご紹介した「仙骨」を中央接点として結ぶと良いでしょう。

中央接点から左右の波を読む

前のもの「胸骨」と裏のもの「胸椎」を同時に意識するのは、左右のものと同じく、なかなか難しいことなので、最初はどちらか一つに的を絞りましょう。

イラストのように、胸骨から帯のように繋がる左右の腕へのラインや、仙骨から繋がる両の脚へのラインをイメージして。一つ肝心なのは、胸骨や仙骨は「常に正面、背面へ向けていなければならない」という概念は捨てて。胸骨や仙骨そのものが「意識、動きの要」となって、傾きや移動を優先して考えましょう。

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今回の「右のもの、左のもの」の真意は、普段から何気なく使っている左右のものを、より明確に認識することで、センターを再確認でき、全体の繋がりも見直すことができる。例えば、今見ているものを「右の目」で見て、そして「左の目」で見て。それから「両の目」で見てみると、さらに強い「見る意識」を感じられると思います。

誰にでも挑戦することができる「感じる」という力ですね。

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バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。
●藤野富村バレエアート代表
https://www.fujinotomimuraballet.com

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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