【第47回】ミラクルストレッチは仙骨から〜前編〜

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

ダンサーとして。人の体として。
現在、僕が最も重要視している「仙骨」について。
今回から数回に渡り、お話していきたいと思います。

体の中心に位置する仙骨

全身に数百個ある骨を、数珠繋ぎにして考えると、そのほぼ中心に位置するのは「骨盤の中核」「背骨の土台」となる「仙骨」
「仙骨から広げよう」と思う動きは、伸びを生み出し、「仙骨を縮める、締める」という感覚は、全身に硬さを促してしまうことでもあります。

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アルデンテお尻の真意

カラダ講座を通してお伝えしてきた「お尻は締めない、アルデンテお尻」ですが、その真意は今回の「仙骨を締め付けない」という目的が大きいです。
仙骨は両側にお尻の骨「腸骨」に挟まれる形にあり、仙腸関節で繋がっていることを、以前お話しました。仙腸関節は、繋がりの硬い、ほぼ動きのない関節ですが、この「狭間に如何にゆとりを与えるか?」が重要になります。

お尻の筋肉を締める=仙骨腸骨を押し込む=仙骨が締まる

骨盤内部から仙腸関節を押し広げるように。仙骨が広がるイメージは、その分「脚が長くなる」「背筋が押し上がる」ことを、イラストで確認して試してみて下さい。

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仙骨は太い根っこ

仙骨は背骨の根っこ。土台として腰椎から上の上半身の重みを、一点で支えています。仙骨を正面、或いは後方から見ると「平べったい亀の甲羅」のような姿が想像できると思いますが、側面から見るとなかなかの厚みを持った「聖火タイプ」の土台とイメージできます。

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その形状から力の入れ具合を想像してみて欲しいのですが、仙骨の背面(外から)引っ張り上げるのと、前面(内から)押し上げるの、2つのパターンを用意しました。どちらが効率が良く、そして強く。全身に広がりと締まりの影響を及ぼすか。じっくり感じて、考えてみましょう。

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仙骨からすべての良き流れを

背骨は全身に繋がる神経のパイプライン。その根元で神経を束ねた太いケーブルが「仙骨」の前面を通っています。
仙骨前面には自律神経系が存在していて、全身の筋肉に向けて緊張を促す「交感神経」と、弛緩を促す「副交感神経」のバランスは、仙骨の状態により影響を受けるとも言えます。仙骨を温めるとリラックス効果がある、など聞いたことはありませんか?
背面から仙骨を締め付けるように力を入れれば、全身がビキビキと固まっていくような。
仙骨を骨盤内から押し広げるように広げれば、体も気持ちも、じんわりと広がるような伸びるような。

仙骨の使い方ひとつで、体質も踊りも「人生観も」変わっていくような。知れば使える「ミラクル仙骨」を是非、活用していって下さい。

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Check
>>> エクササイズ[ 47 ]「背骨を通す呼吸法 - エクササイズ-」

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。
●藤野富村バレエアート代表
https://www.fujinotomimuraballet.com

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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