【第44回】輪切リングを向ける

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

前回の「関節は柔らかく回すように」というお話に続き、今回は「体各部の輪切りのリングを上手に操る」というお題です。

輪切リングを向ける

脚と胴体の結合部となる股関節ですが、体と脚を一旦スパッと切り離してみると、イラストのような「丸い切り口」ができます。体側の方が「差し込み穴=受け皿」で、その穴に「脚という」をはめ込んでいるとしましょう。

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脚を外巻き=アンデオールにする際に、誰しもがこの輪切リングを「外巻きに回そう」と考えますが、それは股関節周りの環境を「搾って固める」ということになってしまうので、輪切リング、特に受け皿の側を、回すというよりは「脚の方に向ける」という意識が、より長く強く、伸びのある脚の力の助けとなるでしょう。

首&腕の輪切リング

首の付け根の「ネックレスライン」。肩の「アームホール」も股関節と同様に「腕と頭の方へ」輪切リングを向けたいところ。頭と腕は、急速に動かすと胸筋や胸鎖乳突筋といった「胸や首の前面の筋肉」にビックリな収縮を起こしてしまい、首と肩の輪切リングを締める&「強く引く」という現象となってしまいます。
首と肩の輪切リングは、意識の入りにくい「裏側の半円」を特に、首は後頭部へ。腕は二の腕から手の甲のラインへ「穏やかに向ける意識」を持ちましょう。

ネックレスと後頭部.jpg

肩裏から二の腕ライン.jpg

肋骨と骨盤の向かうところ

胴体を上と下に分けるとすれば、はっきりと境界線を感じる「肋骨の底」と「骨盤の上部」。肋骨の底面、横隔膜のラインでの輪切り。骨盤をお椀のように考えたときの、トップの輪切りを感じてみましょう。

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これらの輪切リングから、スポットライトのような「光」が出ているとイメージすると、それぞれの光が向かう道は2択。「上に向かう」か「下に向かう」になります。

ポールドブラなど、上体が動きを出すときに、その土台「受け皿」となるのは骨盤。輪切リングをグッと締めて固めたり、極端に下がって落ちるようにしてしまうと、上体の動きが小さくなったり止まったりします。骨盤輪切リングは、骨を内から広げるように、上に光を放つように「引き上げましょう」。

骨盤輪切リングの光.jpg

肋骨輪切リングの光.jpg

そして肋骨の輪切リングは下向きに光を放つように。脚の動きを脚だけで行ってしまうと、股関節にて動きの流れが止まってしまうため、肋骨の輪切リングも「フワっと広げながら」「引き上げながら」、両の足下を照らし出すように、意識してその輪切りの口を向けてみましょう。

上への光.jpg

下への光.jpg

体からは両の腕脚に頭も加えると、5つのパーツが胴体から生えていることになります。そのそれぞれが「右のは右へ」「左は左へ」「上にも下にも」・・・となってくると、体は振り回される力に抵抗することで精一杯になります。
今回紹介した大きな「輪切リング」のみならず、手首や膝など、体中に輪切りスポットがあります。
直接、向いていないとしても、一つの動きの向きに対して、すべての輪切リングが光を「同じ方に」向けていると意識してみましょう。

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バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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