【第42回】ポワント講座〜足首エキスパート編〜

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

今回は、トウシューズを履いて踊ることで「バレエそのものが上手になる」「身体的に向上する」ような、基礎の前に考えるべき、備えるべき、足の使い方の最たるものをお伝えします。

足首が弱いと感じる人へ

バレエのように、全身くまなく動かして踊る時、誰しもが「弱点を見つけ、それを克服すべく鍛える」という方向性を考えます。そんな中でも上位ランクインするであろう「足首が弱くてしっかり立てない」という、足首に焦点を当ててお話を進めます。

足首が弱い=しっかりしていない。ガクガクグニャグニャする。と思うのでしょうが、まず知って欲しいのは、足首は可動に優れた「スルスル関節である」ということ。力一杯に固めようとするのは、勿体ないことだと思います。
弱い足首を「強い足首」に変える、ということはまず「足首の動きをちゃんと理解、意識して、思った通りに動かす」ことだと考えてみて下さい。

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そもそも足首とは?

足まわりを指摘されて「○○を伸ばして、しっかり力を入れて」など注意されますが、その○○が時に「つま先、足の甲、足首」など様々な部位であったりします。そして自分の足の事をよくよく考えてみて下さい。その都度、指摘されている箇所に「明確に意識が入って」いますか?
正直なところ、膝から下は感覚が漠然としていて、何となく全体にギュッと力が入っているのではないでしょうか?

写真にて足まわりの「意識して動かしたい部位」を紹介します。自分の足でそれぞれが感じるか?動くか?また意識の低いところ、高いところを比較してみましょう。

足周りの感じたい部位.jpg

すべて大切な部位

この「バレリーナのカラダ講座」すべてを通して、よい体作り、よい踊り手になる為に「一番大切な基礎、基準」が、実は「足のゆびをどれだけしっかり意識して動かせるか?」であると断言します。趾に入れる力や動きの方向性は、もれなく全身に反映されます。
今回の「足首をしっかり動かす」の条件としても「ちゃんと趾が動く」が必須となります。
多くの現代人の趾は衰えている傾向にあるので、エクササイズで紹介するトレーニングにしっかり励んでください。

趾による悪いアラベスク.jpg

趾による良いアラベスク.jpg

まずは「ポワントで立っている。つま先を伸ばしている状態」からお話します。
足にとっては「全体重が掛かり、地面との間で挟まれている」ということになりますから、足自身が荷重で潰されてしまわないように「相当強く張っておく必要」があります。
イラストで見ると趾のスジは、表と裏と合わせてまるで「鳥かごのような。漁の網のような形」をしています。
趾を動かすスジは表も裏も、足首で束ねられて引いたり押したりされます。従って、足首での意識の構えが「押し出す=足を張る。引っ張る=足を縮める」という結果に繋がります。
「地面を強い足で押す」からには「縮めない。張るように広げる」という考え方が正しいのではないでしょうか?

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張る縮むポワント.jpg

ルルヴェアップとダウンのイメージ

ポワントで立っている力が強くなっても「ずっと立っている」わけではありませんから、ポワントの先へ「昇ったり降りたり」するメカニズムを考えなくてはなりません。
ソフトシューズよりトウシューズの方が「足をしっかりサポートされている」と感じるでしょうが、それでも趾の関節を動かして、デュミを通して立ったり降りたりする「繊細な意識」を備えたいところです。

グーで飛び乗るデュミを1.jpg

グーで飛び乗るデュミを2.jpg

足首をいち早くハイルルヴェの高さに持っていきたい!という「足首を引っ張り上げる」という動きは、足の甲を通るスジを引っ張る、縮める、固めるというアクションになってしまい、ガチガチ足を作ってから「飛び乗り。そして落ちる」という結果を生み出してしまいます。

立ち上がりの際には、先に「足首から趾スジを絞り出す、広げ出す」構えを取り、ゆび先へと広がっていく網を、広がったままキープして動かしたいところです。

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そして降りる際には足裏のスジを広げて、まるで「広げたシーツを敷くように」降ろしていくことで、ふくらはぎとアキレス腱のサポートをしながら、強い足首コントロールを感じることができます。

これらの「表裏のスジをコントロール」を見ていると、足首には「引くことも押すこともできる力」を備えなくてはならない、と思いますね。
足首にとっては「引くことは得意。押すことは苦手」というのが自然なことなので、「趾を張って、押しの力を身に付ける」方を鍛えましょう。

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Check
>>> エクササイズ[ 42 ]「趾を呼び覚ませ!- エクササイズ-」

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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