【第41回】骨コントローラーへの道・ファイナル 〜骨の流れのように〜

ひとつの骨を意識できる。骨を張ったり広げたりする感覚を知ったら、最後は「骨の流れを合わせて動きを出す」というイメージを、できる限り紹介します。

「骨の流れとは?」

体中どこにある骨も、必ず関節で繋がっていて、必ず隣接する骨がいます。その「お隣さん」も他の骨と隣接していて、どんどん繋がっていって、体中の骨はどこでも「どこかからの一本の線で繋がっている」ということになります。
例えば「手を動かす」といって、手の骨だけをヒョイと持ち上げると、腕はビックリして引いてしまう。体はその反動で揺らいでしまうこともあります。だから、指一本動かす為にも、より体の芯となる部分から流れを生み出すという「より丁寧で、より精密な動き」を心掛けます。

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「理想のスタートライン」

腕を動かす、脚を動かすとなると自然に、または無意識に「付け根から動き始める」傾向があり、肩と股関節まわりの強い筋肉がギュンと唸るように、力が入ってしまうところがあります。
腕や脚には根っことなる部分があり、その根っこはまた、「体の中心部」となるパーツに繋がっていることを知りましょう。

無意識に唸る筋肉たち.jpg

腕の根っこ部分となるのは鎖骨と肩甲骨。それらをセンターで結ぶのは胸骨と背骨になります。
右腕を横から前へ。アラセゴンからアナヴァンへ運んでくるとして、腕の生え際から突然に動かすと、根っこの鎖骨と肩甲骨はグッと固まり、筋肉の土にきつく埋められてしまう感じがします。またそれは鎖骨肩甲骨を、センターである胸骨と背骨に「詰め寄せる」流れを作るので、体幹部が動きを止めて「固まる姿勢」を促してしまいます。

まずはセンターとなる胸骨の側面、鎖骨との関節を意識して。胸骨自体が軽く回転して、鎖骨を運び、またその鎖骨から上腕→下腕。そして手首を介してそれぞれの指へと、流れを一つの「波」で繋ぐように動かしてみましょう。

全面の胸骨&鎖骨ラインは「腕の前後の動き」を得意とするので、アラセゴンからどこかへの様な「水平軸の動き」で主として、背骨&肩甲骨ラインは「腕の上昇と下降」を得意とするので、その流れもイメージ図で確認して下さい。

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アンオーへの背骨&肩甲骨1.jpg

アンオーへの背骨&肩甲骨2.jpg

「脚はどこから?」

股関節を支点に腿を振り回すと、お尻や股関節まわりの筋スジをグイグイと、綱引きを引っ張りまわす状態になるので「脚を動かすことで体を振り回す」となってしまいます。大腿骨のソケットがはまっている部分「腸骨」が脚の根っことして、腿の動きに合わせる必要があります。

腸骨の関節=骨の結合部は二箇所。恥骨と仙骨です。まずは脚で地面を押すことでその二点を「やる気のある状態」に立てる、起こす。そして腕の原理と同じく「そこから流れを生み出す」。

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腸骨は「蝶々の羽根の羽ばたき」のように、ある程度動きのあるものだとイメージして、デュバーン、アラセゴン、アラベスクとそれぞれに、腸骨の動きの向きを感じてみましょう。

前後横の腸骨の流れ.jpg

「そして中心を結ぶ」

アームスは胸骨から、レッグスは仙骨から。それぞれに上半身と下半身の「動きのターミナル」が出来上がったら、今度は上と下を結ぶ方法を考えなければ、動きがバラバラになってしまいます。
胸骨は肋骨の、仙骨は骨盤のセンターポジション。肋骨の間で「腹筋と腰椎」が取り残されています。

胸骨&仙骨は、間を結ぶ架け橋は何もありませんが、体内で直接に直線の「イメージのトンネル」で繋がれたと考えてみましょう。
頭の中で胸骨と仙骨を「光る骨の板」として浮き彫りにし、「透明のチューブ」で結びます。
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腕を動かす際に、骨盤内から仙骨を意識。仙骨からエネルギーを吸い出し、それを胸骨へと汲み上げ、胸骨から頭や腕へと「エネルギーの波を拡散させる」ように。
脚を動かす際には、また胸骨から「仙骨を経由して」脚へと伝えるように動かすと、自然とお腹を通した「体幹の動き」を感じるはずです。

胸骨仙骨からの拡散エネルギー1.jpg

今回紹介したものは「イメージが生み出す繊細な力、動き」であって、そこに「そう働く筋肉がある」というわけではありません。
しかし、肉体は皆さんが知っている以上に、精巧に作られた、個人所有の「素晴らしいギフト」です。
「こうしたい、こうありたい」と願う強い想いが、動きや踊りとなって必ず表現されるので、大切に扱ってあげましょうね。

ロボットと踊り子.jpg

Check
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バレエ・ピラティスによるカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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