【第40回】骨コントローラーへの道・2章〜関節間の開き〜

「関節が詰まるように締まる」というのは、聞くだけでよろしくない印象。「軟骨がすり減る」などと聞けば、骨に圧力を加えて使ってしまうほど「間違った使い方」と感じるはず。これらの事象から「関節は広げるように使う」というのが、正しい考え方と捉えられるはずです。

骨コントローラー第2弾は「関節は柔らかく開く」についてお話します。

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山折りになる側を開く

基本的に関節とは、曲がったり伸びたりができる「動きのある箇所」なので、屈曲することで「山折りと谷折り」になる二つの側が現れます。肘を曲げた状態で手首と力こぶをグッと引くように力を入れると、筋肉が収縮して肘関節を詰まる感じに。特に肘の内側、谷折りになっている側が、まるで割り箸を挟んで折るか?の勢いで締まります。これが「関節を詰める」となるので、「関節を開くように」とは、外側に大きく伸びている方「広げるように伸ばす」というのが今回のテーマとなっています。


アームスをアンバーまたはアナヴァンの「丸い輪っか」にして、肩、肘、手首それぞれの関節で、どこが一番山折りになるか見つけてみましょう。体の中心から見れば、すべて「外側を向いている」はず。関節には「骨のすき間」があると思って、山折り側に三角の杭を入れるとイメージ。優しく息を吐きながら、骨のすき間が外向きに膨らんでいくように、伸ばす力を加えていきましょう。

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開く気持ちの源

体とは、どこか一部が強烈に締まっていると、それに習うように全身が固くなっていくものです。例えば首や肩、または腰がグッと凝っていたり、痛みを発していたりしたらどうでしょう?

それらの硬くなる代表者たちが「さあ皆さん伸ばしますよ〜広げますよ〜」と全身に呼びかけてくれたら、腕や脚も伸びやかに強く動かせるはずです。

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現代の生活習慣からなのか、なかなか多くの人が胸を真正面より下向きに落としてしまっていて、それを平気に思っているところに、僕は大きな不安を感じます。

胸骨が下がると、胸筋を中央で引き下げてしまうため、肩が上手に広がらず、どんな動きも首や肩上部で無理やり引っ張り上げる形になってしまいます。

アゴ下、ノドの頂上を頂点。胸と脇の境界線で、体温計をはさむ部位を底辺とした「三角形」をイメージしましょう。この3つの角をそれぞれから一番遠くへ離した、最大面積の三角形を、真正面より少し上の空を見上げた姿勢にしてみましょう。普段から胸を上げることに慣れていないうちはとっても辛いかと思いますが、いつもこの状態でいられるように頑張りましょう。

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胸を起こす際の注意点。下を向いている胸が「少し前方に倒れている」のであれば、背中を起こすということが「強く後ろに引く」となってしまうと、今度は胸筋で肋骨を奥に押し込んで固めてしまうことになります。

骨コントローラーの醍醐味は「外向きに骨を広げる」でしたね?ならば、肋骨は内から手をまわし、胸と背中の前後方向ともに、傘が広がって上がっていくイメージで「広げ&上げて」いきましょう。

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腰も三角に張る

骨をギュッと締めない。外に向かって優しく張るように。というのは腰も同じ。腰椎も縦にグッと力ずくで起こすと「反り返る」力が働いて落っこちてしまう。

腰椎の両脇には腰方形筋をはじめ「体全体のバランスをとりながら、しかも大きく動く」為の筋肉がたくさん並んでいるため、腰椎そのものが縮んで動かない姿勢を取ると、体全体の動きが悪くなる。
従って腰も「広げる&伸ばすように」何とか使いたいところですね。

胸と同じく、腰椎の上の方を頂点、お尻ポケットの両端あたりの2点を底辺とする三角形をイメージして。お尻ポケットがジワーと広がったら、腰椎をじっくり引き上げていきましょう。お尻の骨、腸骨は丸みのある骨なので、ビンと横に張ってしまわずに、ベルトのラインでカーブしていくように広げましょう。

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滑るような肘膝関節

肘と膝。特に体重がしっかり掛かる膝関節も、グッと締めないように。緩やかに滑るような関節でありたいですね。

以前にも紹介したように、肘から先、膝から先は2本の骨があります。その頂点部の肘と膝関節に繋がっている辺りで、2本の骨のすき間をどうするか?が運命の分かれ道になります。

2本の骨のすき間を埋めるように。強いゴムでギュッと2本の骨を束ねるように力を入れると「引き下がる、固まる」。肘膝関節を引き込んでしまうような「関節が擦り減る系」の力が入り、肩や股関節もビックリして固まってしまいます。
2本の骨のすき間には「三角の杭」を差し込み、そーっと傘を開いて上昇していくようなイメージを入れてみましょう。肘膝関節も浮き上がり、どんな動きもスムーズに感じるはずです。

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結論

体中どこの骨をセレクトしても「外部から内部へ」と押し込む力を持ってすると、そこには最終的に「引ける、下がる」という結果が付いてきます。

逆に「内から外へ」と張りを出していくようにすれば、それは「押す、上げる」という、内なる柱によって際限なく登っていく力を得られるでしょう。

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バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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