【第39回】骨コントローラーへの道・序章~単体骨を操る~

全身には200本ほどの骨がある。
骨が「形を作り」、骨を動かすことで次の形へ変化する。
そんな全身の骨一本一本の動きを把握して、完璧にコントロールすることができれば...なんて夢見ることはありませんか?

しかし上から下まで。前も後ろも、右も左も。なにせ200本もある骨をまとめて動かすことは、そう容易ではありません。

まずは「ひとつの骨を意識する」ことから始めて、数回に渡り「骨コントローラー」となるべく、お話を進めましょう。

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「骨一本を誇張する」

たくさんある骨から一本だけを意識して、その骨の動きを強調することで、「全身の他の部位を導く」リーダーとさせます。

例えば「二の腕」の骨を選択して、意識します。二の腕は肩、肘の二箇所で肩の骨と、下腕の骨を「ご近所さん」として隣接しています。このご近所さんたちを二の腕に向かって締める。幅を詰めて「寄ってくる」ような力を入れるとどうでしょう?骨を縛るような筋収縮で、関節はガチッと固まるような「止まるためのアクション」を起こします。腹もグギッと固まるのでは?
逆にご近所さんたちを二の腕から「遠ざける」ようにすると、脇も背中も膨らむような「伸びるためのアクション」を示すはずです。

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二の腕の収縮と伸張2.jpg

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「どこでも膨らむ」

二の腕のみならず、どこでも「意識する骨一本」を誇張して、そこから全身に「伸びのある滑らかな動き」を転移させていきます。例えば肋骨背面部。
肋骨ひとつひとつのリングも、軟骨を挟んでいくつかのパーツに分かれています。故に動きに滑らかさと柔らかさが増して、動きに余裕を持たせることができます。これを、力を持ってグッと締めると、わざと動きを封じてしまう、もったいない現象と言えるでしょう。

DanceCube39イラスト_003.pngグッとした背中.jpg

肋骨を筒状に考えて、表面的な力で外から内へ押し込むような力が「ガッチリ固定」の力。体幹の動きは止まっているのに、腕や脚はバラバラであたふたとしているように見えてしまいます。
肋骨内部から、骨を優しく押し広げるように。角張らず、丸いカーブをイメージして。骨が外向きに優しく広がった感じがしたら、肋骨一段一段の「幅も広げる」イメージで引き上げてみましょう。息が止められない、腹筋が奥で縦に伸びる感じがすれば、インナーマッスルが上手に働いています。

DanceCube39イラスト_004.png開いた肋骨と腹筋.jpg

「手足の繊細な感覚」

バレエのダイナミックな動きの中で、足はとにかく力一杯なのに対し、手は力なくフニャっとプラ~ンとしている人を多く見ます。人間の手は、触れることでそのものが何なのか察することができたり、小さな部品を掴んで器用に組み立てたり、指をバラバラに動かしてピアノを弾いたり、キーボードを打ったり。手は体のパーツで一番「能力の高い部位」であるのに、その手が意志を持たずフニャっとしていたら...?

指一本だけでも関節が3つ以上もあり、手首から先には20個以上の骨があります。その一本一本に意識を向けていない限り、どれかの指が曲がって脱力していたり、激しい力で固まっていたりします。
完全に意識の抜けている手は、垂れているゴム手袋のように。そのゴム手袋に少し空気を吹き込んだように「骨と骨の隙間に空気の張りがある」かのように、骨の感覚を広げる意識を持ってみましょう。

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足も同じく、力を入れることが「ただ足を縮める」となると、土踏まずが「柔軟性のない弱さ」を生み出し、また趾のスジを引っ張り上げるという連鎖が、スネや腿の筋肉もガチガチにしてしまいます。
つま先を伸ばす。地面を押す。高いルルヴェに立つ。などの「足を押し出す」というアクションにおいて、足裏の骨を「土踏まずの奥へ押し込むように」ではなく、「骨を足裏の方へ押し広げる」とイメージしてみましょう。

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このように、手や足に向けて「骨を広げるように。遠ざけるように」という意識が、腕全体、脚全体に及び、伸びのある体幹の動きへと繋がるように。

骨があるならば「内から外へと」広げてみましょう。

全身の骨の向かうところ.jpg

Check
>>> エクササイズ[ 39 ]「手足のユビのお導き- エクササイズ-」

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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