【第35回】 負けない足首、折れない心

トゥシューズを履いて様々なテクニックをこなす中、初心者でも熟練者でも頻繁に感じる「足首の弱さ」。ほんの少し立ち方がズレただけでクキッと崩れてポワントから落っこちてしまう。時にひどいケガにも繋がってしまうので、出来れば強化して「安心感のある強さ」を手に入れたいところですよね。皆さんはどのようなトレーニングを考えていますか?

今回は「強い足首」から自信を得ること。そこから繋がる「引き上げへの道」についてお話したいと思います。

「足の支えあっての足首」

まずは「足首って何ができるのか?」を知る必要があります。
・柱となり全体重を支える安定感・・・内からの張りと、縦の長さを強調します。
・バネとなり、強く蹴り出す弾力性・・・上からギュギュウと踏み込めるバネまたはゴムをイメージ。
・足をグルグル回したり、よく動かすことができる柔軟性・・・滑らかなボールジョイントを意識する。
3つとも大切な役割ですが、本人が「どれ?」をしっかり意識していなければ、性能が混同してしまい「弱さ」として露呈してしまいます。例えば「しっかり立ちたい(安定感)けど、早く動きたい(柔軟性)」のようなケースで、コキっと倒れてしまうなどですね。「今は立つ時っ!」っと、安定感一つに集中力を注ぐ、など試してみましょう。

「足の支えあっての足首」

ポールジョイント今回求めるのは「足首の強さ」。多少の負荷では折れない「柱」を作ること。安定感のある柱を立てるには、しっかりとした「土台」を作ることが大事です。
足首と足を「椅子の脚」としてイメージすると、安定した椅子にするためには支えるポイントは3点。「母趾球、小趾球、踵」となります。この3点をいかに広い面積で。いかにアーチを張るかで、足首を支える強さに影響を及ぼします。

「椅子の脚」としてイメージ

「手の指は器用。足のゆびは不器用?」

ちなみに手首は体重を掛けてもしっかり安定して強いですか?手首を強く固定するには、指をどのように使えばよいかを考えてみましょう。
まず指5本を隙間なくピチっと揃えて、手のひらをベタっと床に、体重を掛けてみましょう。手首が「詰まる」。ちょっとでも動くと手首にもっと変な力が入って、バランスを失うはず。それでは指の感覚を思い切り広げてはどうでしょう?少し安定感が増えて、指先の方に体重を移しても倒れる気はしません。しかし、指のない手首側に引いてみると?
それでは写真のように親指をもう少しグリっと開いて「踵の役目」をさせてみるとどうでしょう?これが実は「足が求める、土踏まずの役割」という感覚になります。

指の使い方と手首への影響

「強い土踏まず」って、一体どのような状態のことをいうのでしょうか?「しっかり力を入れる」には、趾をどのように使えば良いのでしょう?
大きく分類して、手と足の指に共通してできることは2つ。「開く」と「閉じる」です。この2つの動作は全く異なった「力の方向性」を示し、「全く違う部位」に力が入ります。
まずは5本の指の隙間をピチッと塞ぐように「閉じる」と、手の甲側のスジがギュッと締まるのを感じます。もっと強くギュウ〜と締めると、今度は手首の方に強く縮まりそうになる力が入ります。手の甲側の強い緊張に比べて、手のひらは皮がしわくちゃブヨブヨで、あまり力を感じられないのではないでしょうか?

今度はある程度パーに広げた指を、ゆっくりと更に、指の間の「水かき」の皮を伸ばすように「開いていく」とどうでしょう?手のひらの皮がどんどん広がって、強い張りが出てきます。まだまだ開き続けると、指が遠ざかっていくように「伸び出ていく」感じもするはずです。

指を「閉じる=掴む」は手の甲の緊張=「引く」
指を「開く=放つ」は手のひらの伸び=「出す」


これは「足のゆびと土踏まず」の関係で全く同じ流れを生み出します。アテールでもルルヴェでも、もっと強い足首を生み出すには「足裏の面積を広く」するように、趾と踵を「張って開いていく」。その上で更に強固に張って引き上がっていく足首を感じてみましょう。

「足のゆびと土踏まず」

内ももと足首」

今回の「手首足首の強い張り」を元に、次回は「引き上がっていくカラダ」を作るために何ができるかのお話です。その触りとして、最後に「内ももと足首」の関係をお話します。
「内ももに力を入れる」となると、誰もが両脚を「閉じて締める」ことで、グッと硬くなる方向を考えると思います。それではももを合わせた状態から更に、ギュウ〜っと締めてみましょう。足首はどんな感じでしょうか?上方へと引っ張り上げられる感じで、足の甲も縮まり「何とか床を掴もう」としている気がしませんか?
では逆に「内ももの隙間を広げる」ように。股上から膝へと、内もものカーテンを広げるように。足下は地面を踏みしめて「仁王立ち」する方へ力を入れると、足首はどうでしょう?

「仁王立ち」

Check
>>>エクササイズ[ 35 ]「様々な FootWork 〜足裏の意識と強化〜- エクササイズ-」

バレエ・ピラティスによるカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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