【第33回】 ジャンプの軌跡〜イメージして跳ぶ〜

クオリティの高いジャンプを求めるのに必要なものとは何か?脚力?気合い?若さ?確かにこれらの「筋力」に関わるものは、ジャンプの威力にプラスとなりますが、現時点で持ち得ないパワーを身に付け、劇的な変化を生み出すほど鍛えるのは、ちょっと無理があります。
ジャンプの見所と言えば「高さ、華やかさ」かもしれませんが、成功か失敗かが分かるポイントとなれば、それは「着地の瞬間」と言えるでしょう。
「鮮やかに着地」を決めて、ジャンプを華麗に仕上げる為のイメージについて、お話したいと思います。

成功のイメージ失敗例「何が空中に舞うのか?」

とにかく頑張って跳ぶ、というのも一つの手ですが、効率よく素早く高さを出すには「何をどの高さに持っていくのか」をイメージする必要があります。
棒高跳びで考えてみると、真っ先に棒より高い位置に持っていかなくてはならないのは「ボディ」。ボディの底部分に当たる「骨盤」が棒を越えなければ、飛び越えることができません。
軽やかで素早く高さの出る、ジャンプの上手なダンサーの特徴をよく分析してみると、跳ぶ直前に必ず、自分が跳ぶ方向や高さに「顔、または意識の目」を向けています。下を向いていたり、鏡を見ていてはジャンプが上手くいくはずがありません。
自分の骨盤を「箱」として考えてみて、空中にその箱をはめ込む「四角い空間」を先に見定めて、そこへ骨盤を持っていきましょう。開脚を加えるにせよ、脚を揃えにいくにせよ、回転しながらにせよ、助走または踏み切りの時点で、骨盤を持っていく位置をイメージしておきましょう。

「何が空中に舞うのか?」「何が空中に舞うのか?」

「鮮やかランディング」

ジャンプの高さの次は、どれぐらいの距離を跳ぶか「ジャンプの幅」を考えます。この移動の幅は、踏み切るポイントから着地する位置までの距離のことで、特に着地する「足あとポイント」は跳ぶ前からイメージしておきましょう。
助走を付けて跳ぶ、回転を加えながら跳ぶなどの際には特に、踏み切り点と着地点を結ぶ直線を先に見据えることで、跳ぶ距離だけでなく「方向性」をしっかりさせることができます。回転しながらのジャンプでは特に「ねじれの防止」などに役立ちますね。

「鮮やかランディング」

「鮮やかランディング」この「鮮やかランディング」でお話したい最も重要で、割と意識の薄い部分は、着地の際の「プリエのクオリティ」です。跳んでしまう前にどれくらいの「ショック吸収」を行うか考えてあげるということですね。この「着地の柔らかさ」を考えることが、ジャンプの高さ、シャープさ、正確性の向上に繋がるので、大事に扱いましょう。
踏み切り時に地面をグッと押す力と、着地の時にドンと押す力を比べると、着地の衝撃の方が大きく、負荷は倍以上掛かります。例えば、それぞれの踏み込みを「泥沼」の上で行ったとすれば、脚が泥に刺さる量は、着地の方がズブっとはまり込むはずです。
着地する瞬間に衝撃を感じるのでは遅すぎるので、踏み切り時に行う「地面押し」と「プリエの膝の曲げ具合」の力を1と考えると、着地時に行うそれらの力と量は2以上。1:2以上を跳ぶ前から考えておきましょう。
イメージとしては、踏み切りのドンが床下10センチに届くならば、床下20センチの着地に備える感じです。

プリエ意識の備え

「そして流れる軌跡」

高さの縦軸、移動幅の横軸が整えば、あとは「跳んでいく軌道」を考えます。移動距離が長くフワ〜リとしたジャンプであれば放物線のような。着地点が近くスッと空中へ舞い上がるジャンプならば、昇りのきつい反比例のグラフのような「曲線」をイメージします。
これももちろんクオリティが大切です。とにかく体をブン投げるように跳んでしまうと、空中で荒さの際立つ部分から崩壊してしまうので、何かしらの「丁寧さ」を作り出すイメージが必要です。
骨盤が「お皿」だとすれば、その上に「ケーキ」を乗せて、またはおそば屋さんの「重ねたおそば」をイメージして、ケーキが形崩れしないように、おそばがバラバラにひっくり返ってしまわないようにと考えてみると、ジャンプのクオリティも上がり、また踊りが楽しくなってきますよ!

跳んでいく軌道を考える

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>>>エクササイズ[ 33 ]「ジャンプの為の楽しいエクササイズ」

バレエ・ピラティスによるカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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