【第31回】アルデンテお尻・実用編<脚を上げるために>

お尻の表面的な筋肉を締めずに、骨盤のを内から外へ広げるように使うことで、深層筋の働きにより「動く骨盤」を促す「アルデンテお尻」
前回はアラベスクの軸足の在り方をお話したので、次にアルデンテお尻を生かした「骨盤で脚を上げる」方法をご紹介します。

「アルデンテお尻」

「リーダーは仙骨」

骨盤を後ろから見ると、真ん中の仙骨と、それを両側で挟む腸骨の、3つの骨が仙腸関節で繋がっています。
アルデンテお尻の定義を簡潔に説明しますと、お尻の一番協力な筋肉「大臀筋」で、外環から固まるように締めると、仙腸関節がギュッと締まり、骨盤の動きを拘束してしまう、つまり「腸骨が仙骨を挟んで動かないようにする」ということになります。
従ってアルデンテお尻の目指すところは、仙腸関節を張るように保つことで、自由を得た「仙骨」がリーダーとなって、体や脚を動かしたい方向を決める事だと言えます。

「リーダーは仙骨」

「土台を作り、脚を押し上げる」

軸足が地面を押す→骨盤がしっかりとした土台になる→体と上げ脚を押し上げる
。この力の構図と、股関節まわりの筋肉の在り方を、解り易くイラストで説明しましょう。

「土台を作り、脚を押し上げる」軸足の股関節を繋ぐ筋肉から、内側「内転筋群」、外側「中殿筋、大腿筋膜張筋」を重要視してみます。これらが弛む=落ちると、骨盤が軸に「もたれる」状態となり、持ち上げる脚が更に重くなってしまいます。ならば股関節まわりを強く締めてみると・・・実はこれらの筋肉に「短く締まる力」を与えると、骨盤が軸足の股関節に強く寄ることになり、それはそれで「軸にもたれる」ことになってしまいます。

「外側を張ることが難しい?」

バレエの基本の教えとして「股関節は両側からサンドイッチするように締める」というところに落とし穴があります。僕がお伝えしたいのは「股関節は外向きに張って使うもの」ということなのです。
前述した外側の筋肉はどちらも、上が「腸骨のガードレール」、下が「大転子」として繋がっています。この上下の骨をどっちがどっちへ向かうかを考えれば、解りやすいと思います。

腸骨が大転子に沈んでいる

Bは押し込むように締めた状態外向きに張った状態Aは腸骨が大転子に沈んでいる。骨盤を引き上げる意識もないので、片足に移した方へ、腹も沈みます。
Bは押し込むように締めた状態。腸骨と大転子は「お互いに近づく」。両足立ちの時は固めることができますが、片足に移ると骨盤が軸に乗りかかる方へ。股下、内ももが開いてしまうので、バランスを失って上体が倒れます。
Cは外向きに張った状態。高く位置した腸骨から、下の大転子を「遠ざける」ようにすると解り易いです。外側の筋肉を張れば張るほど、内ももも長さを増して伸びてくれるので、上体が支えられます。

「さあアラベスクを上げよう!」

結局今回も軸足のお話になってしまいましたが、持ち上げる側の脚やお尻の状態をいくら考察しても、土台がなければどうしようもない、ということです。「右のお尻は締めて、左を開く方に力を」ということが、かなり器用でなければ出来ないように、「両のお尻の力と方向性を揃える」ということが、脚を軽く高く上げる術に繋がると思います。

「さあアラベスクを上げよう!」

「さあアラベスクを上げよう!」

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バレエ・ピラティスによるカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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