【第7回】アンデオールのすすめ~後編~

後編では「股関節」の扱いについてお話します。お尻は締まってるか抜けてるかの単純な判断で処理されがちですが、縦横斜めにたくさんの筋肉が包んでいる股関節。体の中でも群を抜いて奥が深く、取り扱いの難しい箇所ですから、心して掛かりましょう。

「股関節は回さない」


まずはイラストで、お尻側の筋肉を確認しましょう。
腿の骨をアンデオールに回すための外旋筋群が扇状に広がり、それらを大臀筋(だいでんきん)が覆う形に付いています。
横ポケットの位置に大転子という腿の骨の出っ張りがあり、これらの筋肉は全て、この大転子から骨盤各部に繋がっています。

「股関節は回さない」

奥の外旋筋が組体操の扇をしている人たち、表の大臀筋がロープを引いている人、とイメージして下さい。
アンデオールで股関節を回す、ということはこの大転子を後ろに回し込むと考えてしまいますが、それは大殿筋がロープを引いて、外旋筋を縛り込む、ということになります。外旋筋、すなわちインナーマッスルというものは「表の筋肉が適度に緩んでいるときに、中から張ることでその能力を最大に発揮する」ものなのです。従って、大転子を仙骨や尾骨に送り込まずに、逆に遠ざけるように「股関節を開く」のが理想です。
お尻アルデンテ」も参考にして、表ふっくら中しっかりのアンデオールを目指して下さい。

アンデオールのすすめ

アンデオールのすすめ

「脚が起こす螺旋(スパイラル)」

脚全体の筋肉の流れを、理容室の看板のようなスパイラル(螺旋)と考えると、巻き上げ下げ、内外回しの4通りがあります。アンデオールに開くとき、やはり落ちるのは良くないと思うのか、人は自然に持ち上げる方向、上昇気流の螺旋を一番に考えてしまいます。

上昇気流(悪い例)

上昇気流(悪い例)

下降気流(良い例)

下降気流(良い例)

「足、ポアントの先が沈まないように」と地面に刺さった杭を引き抜くように持ち上げる=上昇気流というのは分かりますが、一番上がって固まってしまうのが大転子なんです。これでは脚の筋肉はもちろん、お尻や背中もガチガチになってしまい、逆にアンデオールに開きにくくなってしまいます。

そこで大転子を外向きに張り、そこから下降気流の下巻きスパイラルで脚を長く「張る状態」を作り、その果てに足で地面を押します。杭は地面に刺さり込み、その上に上体が押し上がっていきます。
大転子を下げる時に、横ポケットは外に広げるように。しかし内に締め込むように力を入れると、お尻は下向きに「締まって」ガチガチになってしまうので、こちらも注意しましょう。

「脚が起こす螺旋(スパイラル)」

× 悪いパッセ

× 悪いパッセ

× 悪いパッセ

× 悪いパッセ

○ 良いパッセ 締まったお尻

○ 良いパッセ 締まったお尻

体中の筋肉はほとんどが「こちらの骨とあちらの骨を結ぶ=架け橋」のように作られています。例えば前腿だったら膝と股関節。そして「前腿は膝から股関節に向けて締まるもの=逆流」と筋肉が学習してしまうと、よほど意識して変えようとしない限り、いつも同じパターンに締まります。前腿は「股関節から膝へ向かって=清流」も収縮させることができます。
股関節は人生をかけて、体の中心で上体の重さを支え、脚からの衝撃に耐えながら頑張っています。そんな股関節を固めて、傷めてしまわないように、大事に使っていきましょう。

「脚が起こす螺旋(スパイラル)」

Check
>>> エクササイズ[ 7 ] 「Spine Stretch(スパインストレッチ)」

バレエ・ピラティスによるカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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