L’OPERA DE PARIS パリ・オペラ座公演から
Balanchin/Brown/Forsythe
エトワール結集の現代作品トリプル・ビル
2月2日〜15日、ガルニエ宮でジョージ・バランシン、トリシア・ブラウン、ウィリアム・フォーサイスの作品を集めたトリプル・ビルが上演された。配役にはエトワールたちが総結集。ガラ公演のような華やかさで現代作品を上演するという、オペラ座ならではの演出が利いたプログラムで、老若男女とりまぜた観客を集めた。私は残念ながら初日しか観られなかったが、14日はローラン・イレールの引退公演を兼ねてモーリス・ベジャールの『さすらう若者の歌』(マーラー曲)も加えた特別プログラムで上演され、スタンディングオベーションの中、多くの観客が涙したという。
「アポロン」 |
「アポロン」 |
バランシンの『アポロン』
ジャン=ギヨーム・バールのアポロンに、アニエス・ルテステュ、ナタリー・リケ、ステファニー・ロンベルグという長身のミューズ3人がそろった豪華な舞台だった。1947年にオペラ座のレパートリーとなって以来、上演回数はじつに123回を重ねる作品。バランシンが目指した質素で完結された造形美を、身体的に粒のそろったオペラ座ダンサーたちが再現してみせる。
なかでもアニエス・ルテステュのように完璧な身体性とテクニックを見せつけられると、超人的で、いささか物質化した世界に、ぞくっとさせられるほどだ。ふだんは色男の役にぴったりのバールも、その個性をのぞかせる余地がない。バランシンの世界に限りなく近づこうとするダンサーたちの、殉教者にも満ちた精神性が際立った舞台だった。
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「アポロン」 |
ブラウンの『オー・コンポジット』
この日の配役、オレリー・デュポンとマニュエル・ルグリ、ニコラ・ル・リッシュのために2004年に創作された作品だ。外見の美意識にこだわったバランシンとは対極にあって、ステップの一つひとつ、ダンサーどうしの絡みあい、言葉への身体的反応を通して、人間の内なる声に観客の注意を喚起する。
バックに流れるロリー・アンダーソンの音楽につけた詩の朗読では、アルファベットが特別な意味をもつ。例えば、ALL I COULD SEE FROM WHERE I STOOD というフレーズの一文字一文字を、三者三様に表現するわけだ。実際のところは、振付家ブラウンがダンサーひとり当たり6文字を与え、「3文字はポストモダンのスタイルで、3文字はクラシックスタイルで」と要求したという。ダンサーの想像力と、異なるダンス様式が複雑に重なって、不思議な模様を描き出してゆくという手法だ。
とはいえ、全体的には抽象的で難解な振付が連続するなかで闇に放りだされたような感覚も味わったのも事実。途中で席を立つ観客も見受けられた。それでも、ルグリの完璧なプレースメント、リッシュのエネルギーに満ちた跳躍、デュポンの安定感---。ダンサーたち三者三様の確信に満ちた動きが織り成す世界は、見ているだけで心地よかった。
「オー・コンポジット」 |
「オー・コンポジット」 |
フォーサイスの『The vertifinous Thrill of Exactitude(精密の不安定なスリル)』
音楽はシューベルトの第9番交響曲からの抜粋。これが本当にフォーサイスかと思うほど、ちゃきちゃきのクラシック・テクニックを散りばめているが、どことなくバランシンの『ジュエルズ』に通ずるところもある。衣装は、前後に上演されたモノトーンの色調とは一変して、色鮮やかな黄緑色と黄色のチュチュが舞台に花を咲かせる。
この日の踊り手は、エレオノラ・アバニャート、エミール・コゼット、メラニー・ユレルという3人の女性プルミエールダンスーズ陣と、アレッシオ・カルボーヌ(プルミエール・ダンスール)、ニコラ・ポール(スジェ)といった新鋭の男性たち。表題どおり、目が回る速さでダンサーたちが炸裂し、スリルある場面展開を味わう。
「VERTIGINOUS THRILL OF EXACTITUDE」 |
「VERTIGINOUS THRILL OF EXACTITUDE」 |
バランシンの『アゴン』
先の『アポロン』がオペラ座で初演された10年後に発表された作品で、再びストランヴィンスキーの音楽が用いられた。バランシンが常日ごろから口癖にしていたのは「音楽は見るもの、ダンスは耳を傾けるもの」。音楽とダンスの関係をバランシンほど重視した振付家はいない、といわれる所以だ。
最初のパ・ド・トロワは、バンジャマン・ペッシュとノルヴェン・ダニエル、ミリアム・ウルドブラアム。第二のパ・ド・トロワは、レティシア・プジョルとヤン・ブリダール、カール・パケット。音楽のテンポを一人ひとりのダンサーが忠実に守ることによって、非の打ち所のないコンビネーションが生まれていた。
しかし、何といっても圧巻だったのは作品の最後を飾ったマリ=アニエス・ジロとカデル・ベラルビのパ・ド・ドゥ。造形美を超えた“何か”を、この二人は表現しようとしている。作品に限りなく忠実にありながらも、バランシンの世界にただ飲み込まれるのではない。形式を超えて“自分”らしさを模索するダンサーの姿勢そのものが、バランシンが望むところだったのではないのか。そんな思いを残してくれた晩だった。
ブラウンの作品を除き、すべてヴェロ・パーン指揮、パリ・アンサンブル・オーケストラの演奏。
「アゴン」 |
「アゴン」 |
DON QUICHOUTTE 『ドン・キホーテ』注目の配役情報
ヌレエフ版『ドン・キホーテ』が2月27日から4月1日まで、バスティーユ劇場で上演される。ゴヤやグスタフ・ドレの絵画にインスピレーションを得た舞台美術や衣装、キトリとバジリオによるウルトラ C級のパ・ド・ドゥはヌレエフ版の見どころだ。
今回のキトリとバジリオの配役は以下に紹介するが、注目されるのは、キトリ役に初挑戦のノルヴェン・ダニエル。バジリオ役では、昨年末のオペラ座内部の昇級試験でスジェに上がったばかりの19歳の新鋭、マティアス・ハイマンがオーレリ・デュポンと組む。そのほか、新国立劇場バレエにも度々招待されているボリショイ・バレエ団のデニス・マトヴィエンコがゲストダンサーとしての登場が予定されている。
もうひとつの重要な役どころエスパーダには、個性派のジャン=ギヨーム・バール、プルミエ・ダンスールに昇格したばかりのクリストフ・デュケーヌ、ステファン・ブイヨン(初挑戦)。このところ目立った役がなかったミテキ・クドーは、二幕のクピドン役での出演が決まっている(3月4日、26日、4月1日の予定)。
3月15日以降のキトリとバジルの配役は以下のとおり。(2月9日現在の発表)
3月15日 午後7時半開演
キトリ:オーレリ・デュポン バジリオ:デニス・マトヴィエンコ
3月17日 午後7時半開演
キトリ:オーレリ・デュポン バジリオ:デニス・マトヴィエンコ
3月23日 午後7時半開演
キトリ:ノルヴェン・ダニエル バジリオ:カール・パケット
3月26日 午後7時半開演
キトリ:ミリアム・ウルドブラアム バジリオ:エマニュエル・ティボー
3月28日 午後7時半開演
キトリ:レティシア・プジョル バジリオ:ジェレミー・ベランガール
3月31日 午後7時半開演
キトリ:ミリアム・ウルドブラアム バジリオ:エマニュエル・ティボー
4月1日 午後2時半開演
キトリ:レティシア・プジョル バジリオ:ジェレミー・ベランガール
「ドン・キホーテ」 オーレリ・デュポン |
「ドン・キホーテ」 オーレリ・デュポン |
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