【第48回】ミラクルストレッチは仙骨から~後編~
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バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座
普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。
仙骨は背骨の根っこ。体の中心として、動きの芯として感じ続けられるかどうかが重要になってきます。
仙骨を感じることで変わってくる体のポジショニングや、動きのクオリティのためのポイントをお伝えします。
やはりド真ん中の仙骨
前回ご紹介したところ、背骨の根っこである仙骨は、下腹部の奥で、ほぼ体のド真ん中に位置することが解りました。今度はその「中心核」を支える、または動いて移動させる「脚」との関係を見てみましょう。
側面から見た股関節
パラレル時の状態
人は大体、股関節はどこですか?というと前から触り、背骨は?というと後ろから。まるでイスの前脚で背もたれを支えている印象を持っています。
イラストのように骨盤を側面から見てみると、股関節と背骨の根っこは、ほぼ真っ直ぐな上下関係でいて「コップとそれを支える台」のような関係にも見えます。
アンデオールを誤解しない
先ほどのイラストでは、両脚が平行立ち、パラレルの際には、脚と股関節が安定したテーブルのように、仙骨コップを支えているのが分かります。
ではアンデオールに両脚を外旋させたら?
骨盤は一つのしっかりした骨の塊なので、どんなに頑張って力を入れても、さほど形状は変わりません。
しかし、「股関節を回す」「腿を回す」などの、お尻の筋肉を無理に締めることで、傾きが発生します。
骨盤の背面。仙骨と両腸骨の並びは、お尻側から触れば「平らに並ぶ骨」に感じますが、実際は凹凸もあり、なかなかの丸みを持った骨盤です。
アンデオールに脚を開いたにせよ、骨盤はイラストのように、仙骨コップを支えやすい形状だとイメージしてみましょう。
傾いて大いに結構
両脚を地に付いてじーっと立ち、下腹部の奥に、今回紹介した分厚い「ガラスのコップ」がイメージできたら、今度はコップの中の「水の動き」を感じてみましょう。
両脚立ちでコップも水も、ド安定を感じるのであれば、片方の脚を上げて、片脚立ちになれば、当たり前ですが「コップは傾く」ことを考えてみましょう。
バレエでもピラティスでも「骨盤を真っ直ぐに」ということを正しき事と感じる、教わるかもしれませんが、何を以て骨盤が真っ直ぐなのか?骨盤は水平に真っ直ぐでなければならないのか?と自分に問い正してみるべきだと思います。
片方の脚を上げるならば、必ず骨盤は傾きます。脚を高く上げるつもりならば、骨盤をかなり傾けなければ脚はあがりません。
前後左右どの方向であれ、脚が上がる側のお尻は、軸足のそれより少なからず「浮上」します。それに伴って「仙骨コップ」に傾きが発生します。
1、水をこぼさないように、安定したスピードで仙骨コップを傾けていく
2、その場にとどまるのであれば、水はこぼさず。大きく動くのであれば、安定したスピードで水をこぼしていく。
二回に渡ってお伝えしました「仙骨の感覚」。表からは絶対に見えない、感じることすら難しい「奥深くの意識」です。
パッと動いてサッと理解できるような簡単なことではないので、10秒くらいじっとできる忍耐を付けて。想像力を強く鍛えていきましょう。
>>> 【第48回】仙骨支点のムーブメント - エクササイズ-
バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座
[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)
12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。
●藤野富村バレエアート代表
https://www.fujinotomimuraballet.com
[イラスト]あゆお
仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。