【第28回】引き上げポイントと大きな動き

バレエと共にあるキーワードのような「引き上げ」という言葉。では「なぜ引き上げるのか?」とよくよく考えてみると、それは「意識していないと落ちている部分があるから」ということではないでしょうか?
厳しいことを言うようですが、普段の生活から引き上げるべきところが引き上がっていれば、バレエを踊る際に「引き上げるという行為」を省くことができ、更に他のことを上達させる「余裕ができる」ということになります。

今回は「引き上げポイント」と、「大らかな踊り」をするための「持ち運びポイント」をご紹介しましょう。

「引き上げポイント」

「やはり体幹!肋骨と骨盤

体が引き上がっている、とは根本的にBody(体幹部)、すなわち肋骨と骨盤が上がっているかどうかによります。
では肋骨&骨盤が引き上がっている、または落ちているとはどのような状態なのか?イラストを見ながら考えてみましょう。

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

肋骨には肩関節を通して腕があり、骨盤には股関節を通して脚が生えています。上のイラストのように、鎖骨と肩甲骨と腕は「物干し竿」で、肋骨はその「支柱」。そして大腿骨という「脚立」に乗っている、骨盤という「ヘルメット」とイメージします。
肋骨や骨盤は浮かせるように「持ち上げているという意識」がない限り、まあ普通は落ちている状態にあります。図Aのように、肋骨は「脇が落ちている、首がすくんでいる」。骨盤は「股関節に乗っている、沈んでいる」となります。

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

肋骨の引き上げポイントは「脇下のあばら部」が脇下から腕を支えるように。支柱がポールを支えるように上げます。そして前は胸骨を上向き加減に。鎖骨が両端に向かってなだらかに下がって広がるようにしましょう。
骨盤は後ろにスライドしながら沈むので、少し前に、股関節にヘルメットを被せるように上げてきます。
図Bのように、ズボンを引き上げるように「骨盤の頂上部」だけ引き上げると、お尻が上がって股間が引けるように。逆に股関節を引くように固めてしまうので、「恥骨をほんのり前に」。骨盤を根こそぎ斜め前に持ち上げるようにイメージしましょう。

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

「引き上がった軸を移動させる」

これら引き上げポイントが「浮き上がるための筋肉」。そして次に紹介する「持ち運びポイント」が、以前お話した「体内の風船:横隔膜」と「サンタの手綱:腸腰筋」となります。
レッスン時に「もっと大きく動いて!」と注意されることがあるでしょう。その「大きな動き=大らかな踊り」を実現させるためのイメージをご紹介します。

動きを大きくするためにはズバリ「軸を移動させる術」をよく考える必要があります。

歩幅を広げようとして脚を。遠くへ掴むものを求めて腕を出そうとすると、力こぶや大腿筋にもっと強く「引く力」が生じてしまい、逆に後ろから背骨を前に突き出すようにすれば、背筋が締まり、前に進むどころか反っくりかえってしまいます。

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

体幹部の芯といえば背骨。背骨は肋骨や骨盤の一部でもあり、その背骨を「運ぶイメージ」とは「前から掴んで進みたい方向へ」です。腸腰筋は「腿を支えに腰椎を運び出す」。横隔膜は自然と息をすればみぞおちの辺りで、前部が上下、開き閉じするのですが、これはお腹が前に出たり引いたりに影響するので、より後ろの方、胃袋の裏辺りを意識して引き上げ、そこを前に持ち出してきましょう。
背骨を体の内から進む方向へ運び、軸を移したい場所を先にイメージしましょう。

「やはり体幹!肋骨と骨盤」

「一緒に動かしたい骨と骨」

遠くへ腕や脚を伸ばす〜。大きく運ぶ〜上で、腕や脚が単独で跳び出せば、置き去りにされる体は焦って変な力が入ります。
最後に「セットで連れていきたい骨と骨」を一本ずつお伝えします。
上腕の骨を動かす時に「背部の肋骨一本」(肩甲骨下の中段あたりがよいでしょう)。大腿骨の動きに対して「骨盤左右側の腸骨」が、セットでまったく同じ向きに、同じ力で動いているとイメージしましょう。感覚を上手に掴めば、無駄のないスムーズな踊りができるようになります。

「一緒に動かしたい骨と骨」

「一緒に動かしたい骨と骨」

「一緒に動かしたい骨と骨」

「一緒に動かしたい骨と骨」

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バレエ・ピラティスによるカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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