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浦野 芳子 
[2012.03.19]

小池ミモザの祈り 3.11 モナコ公国 モンテカルロ・バレエ団公演・追悼セレモニー

舞台の隅、固く、石のようにうずくまっていた身体の一部が、小さな音に導かれるように目を覚ます。やがてその音が、しんと静まり返った空気の中に輪を作り広がり始めると、腕が、脚が宙を掴むように伸び、悲しく冷えきっていたその身体に、やわらかな生命力が甦っていく…。
モンテカルロ・バレエ団来日公演の千秋楽が3月11日と重なった。
この日、三時開演を予定していた『シンデレラ』全三幕上演前に、東日本大震災・追悼セレモニーが行われた。30分弱のセレモニーではまず、同カンパニーの日本人プリンシパル、小池ミモザ振付の小作品『La Vie』が上演された。一年前のこの日、この悲しい報せに接し、しばらくは不眠に悩まされるほど心を痛めたというミモザ。感受性豊かなアーティストであるからこそ、多くの人が受けたであろう苦しみや悲しみを想うにつれ、それがリアルなもののように本人の心に重くのしかかったのだろう。作品のタイトルLa Vie、は仏語では人生と訳すが、ミモザさんはこの言葉に生、生きること、を重ねたという。
固く縮こまっていた身体に少しずつ呼吸を吹き込んだのは、シンキングボウルの鐘の音、そして密やかな呼吸。カンパニーのブリンシパル、ガエタン・モルロッティが奏でるその音に合わせ、ミモザの身体が徐々にほどけていく。シンプルな白いワンピースの衣裳から伸びるミモザの長い手足は、鞭のように強くしなやかで表情豊か。孤を描いて宙に浮く瞬間などは、空気のふくらみを抱きしめているようにも見える。やがてミモザの身体は、音の持ち主であるガエタンの身体に出会い、ふたりの呼吸と身体が同調しそこに絆が結ばれる…。そっと肩を寄せ合う場面にはそんな印象さえ抱かせるラストシーンまで五分強の、小さな作品。しかし、冷たい雪に閉ざされていた地面に小さな花のつぼみの膨らみを見つけたような、そんな温かさが、ぽっ、と心に灯る想いがした。
今から5年前から振付をするようになったというミモザだが、現代舞踊の巨匠、ジャン=クリストフ・マイヨーのもとで踊っているだけあり、その身体はボキャブラリーが豊かだ。その真価は、続けて上演された『シンデレラ』の仙女=母親役でも存分に発揮され、とくにその繊細な感情表現は見事。仙女の時は、此の世のモノではない存在ならではのユニークな身体の動きに、こちらまで魔法にかけられてしまうかのように吸い込まれてしまったし、母親を演じるときは、流れるようなその身体の動きのエレガントさに惹きつけられた。
ダンサーとしてより成熟し、そして振付家としても新たな才能を開花させようとしている小池ミモザ。海を隔てて活躍する日本人の一人としてこれから大いに注目していきたいひとりである。
(2012年3月11日 東京文化会館)

(C) 細野晋司