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児玉初穂 
[2017.05. 2]

Noism1新作『Liebestod-愛の死』/レパートリー『Painted Desert』の記者会見&ルーマニア公演報告

Noism1の次回公演、新作『Liebestod-愛の死』とレパートリー『Painted Desert』の記者会見が、4月26日東京日本橋の<ブリッジにいがた>で開かれた。作品の紹介に先立ち、今年3月から4月にかけて行われたルーマニア公演についても、詳しい報告を聞くことができた。司会は堀川いづみ Noism広報、登壇はりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館舞踊部門芸術監督及び、Noism芸術監督 金森穣、副芸術監督でダンサーの井関佐和子。

1705_liebestod.jpg 「Libestod―愛の死」photo:Ryu Endo

ルーマニア公演について
まず広報の堀川から概要が報告された。「ルーマニア公演は国際交流基金の主催で、今年3月27日から4月8日にかけて、2都市で開催されました。Noism1とNoism2の合同公演です。首都ブカレストとシビウで、それぞれ『ラ・バヤデール-幻の国』(全1回)と『マッチ売りの話』+『passacaglia』(全2回)を上演しましたが、3回とも劇場は満席で、スタンディングオベーションを受けました。
初日の前日に行われたプレスカンファレンスには、芸術監督の金森穣、在ルーマニア日本国大使の石井喜三郎、シビウ国際演劇祭総監督のコンスタンティン・キリアック、JTIコミュニケーションディレクターのジルダ・ラザル、国際交流基金の武田英和が登壇。作品について、またNoismメソッドについて、活発な質疑応答が交わされました。」

続いて金森による報告。「2007年から海外公演をやっていますが、ブカレストが最もハードでした。仕込みが遅れて徹夜になる、開幕が30分遅れる。幕が開かないんじゃないかとまで思いました。ただし反響は好く、観客は深いレヴェルで作品を理解してくれました。シビウの方は演劇フェスティバルがあるので、観客が慣れていることもあったと思います。
ブカレストでは万全の照明が見せられなかったので、リベンジしたいです。ただ今回の経験を通して、パフォーミング・アーツにとって何が重要なのか、改めて確認できました。舞踊家がどれだけ舞台にエネルギーを注ぐか、舞台で生きているか、ということです。それがあれば、観客に届くことが分かりました。」

1705_noism_Romania.jpg 劇的舞踊「ラ・バヤデール―幻の国」のブカレスト公演のカーテンコール

主役を踊った井関からは、「これほどぶっつけ本番の経験はありませんでした。新人たちを無事に舞台に立たせたいと思い、穣さんに『任せて下さい』とは言いましたが、自分自身がすごく緊張していました。でも一旦舞台に立つと、観客の熱い視線をひしひしと感じることができました。終演後のロビーでは‘駆けつけてくれる感’がすごかったです。日本では味わえない感覚です。心に何をもっているか、見抜かれている気がした程です。いろいろあって辛かった分、余計に嬉しかったです。」との実感あふれる言葉が聞かれた。

1705noism_kanamori.jpg 金森 穣

続いて質疑応答。
Q:字幕、仕込み、観客層についてはいかがでしたか
金森「ルーマニア語字幕を壁に出したのですが、見えたかどうか。それよりも舞台そのものから作品を理解していたようです。仕込みに関しては、『あると言ったものがない』、劇場側の完全な不手際ですね。
ブカレスト国立劇場はオペラ・ハウス、ナショナル・ハウスなので、オペラやバレエ好きな、少しおしゃれな感じの人が多かったです。一方シビウは、演劇祭をやっているので、もっと若い年齢でカジュアルな客層、でも見巧者が多い感じ。レセプションや終演後の言葉で、彼らがそこまで分かってくれているのか、と感動しました。身体トレーニング方法についての質問もあり、Noism2のダンサーをプロダンサーとまで言ってくれました。身体の重心の位置とか、身体表現の深度を測る力が(彼らの中で)培われてきたことが分かりました。」

Q:『ラ・バヤデール-幻の国』の背景になった満州については、どう理解していましたか

金森「具体的にあれは史実かどうかが問題なのではなく、『歴史的考察を踏まえた上で現代社会への洞察を感じさせる』と言ってくださった方もありました。また、ある批評家からは、社会において考えるべき、普遍的なものを含んだ作品という言葉を頂き、嬉しく、励みに思いました。」

Q:ルーマニア公演に至る経緯について聞かせてください。

金森「国際交流基金の方から話をいただきました。ルーマニア側では最初にNoismを呼ぶのは難しいのではないかと言われていたのですが、JTIコミュニケーションディレクターのジルダ(ラザル)と、シビウ国際演劇祭総監督の(コンスタンティン)キリアックが、Noismの資料を見て、絶対に呼ばなければだめだと、強く推してくれたらしいです。キリアックには、6月にワークショップをしに来てくれと、熱心に口説かれています。東西を掛け合わせたNoismメソッドに興味があるようです。」

新作『Liebestod-愛の死』と『Painted Desert』について
まず金森から作品紹介があった。「山田勇気(Noism2専属振付家件リハーサル監督)の作品『Painted Desert』を選んだのは、Noism2のレパートリーの中で一番優れているからです。作品の構造的強度が高い。作品を踊ることで舞踊家が力量を発揮できる作品、いわゆる舞踊家がよく見える作品です。若い血がみなぎる、と言った青臭さがない。Noism1のダンサーたちが別の振付家を踊ることで、新しい彼らを見られると思いました。
自作『Liebestod-愛の死』では、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』より前奏曲と「愛の死」を使います。物語はなく、実験をしている訳でもない。音楽に触発された純粋な思い以外の何ものでもない作品です。創作的欲求、向学的欲求からではなく、ただ舞踊とは何かを追究したい。純粋に創りたいと思っています。」

1705_Painted-Desert.jpg 「Painted Desert」(2014年)初演より photo:Isamu Murai

その『Liebestod-愛の死』を踊る井関からは、「言葉は必要ではない、この作品について穣さんから聞かされた時、それだけで感動しました。穣さんの目が輝いていて、凄かったです。舞踊家として、振付の感動を自分の体を通して観客に見せられるのが、喜びです。今回はクリエーションが素直に楽しい! 穣さんの頭脳が見えない、心しか見えないことに、感動しています。」と、井関の踊りそのままの、熱い言葉を聞くことができた。

続いて質疑応答。
Q:ワーグナーの音楽との出会いについて話してください。
金森「(ルードラにいた)18歳の時、ベジャールの作品『M』で出会いました。最後の曲です、黛敏郎の編曲でしたが。ベジャールには悪いですが、舞台でやっていることよりも、音楽の方が凄かった。感動しました。ただ(この音楽が)なぜ自分の魂に触れてくるのか、分かりませんでした。
(その答えを出すには)自分は振付家なので、作品を創るしかありません。(作品作りが)音楽との出会いから25年かかったのは、その間、舞台(のイメージ)が見えなかったからです。今回、一度頭で考えるのを止めよう、心に語ってくるものだけで、振付をしよう。理屈はいらないと思った時、この曲しかありませんでした。」

1705noism_iseki.jpg 井関佐和子

Q:井関さんの相手役に吉﨑裕哉さんを起用した理由を教えてください。
金森「いろいろなことがありますが、言葉にしたくないのです。舞台上で彼の踊りを見て、感じていただきたい。起用の理由は、舞踊家が自分で見つけるべきだと思います。理由を知ったら、借りてきた猫になりますから。」

Q:頭で創るのと、心で創るのは違いがあるのですか。
金森「感覚や心で創るのは、全く違います。ワーグナーのリサーチは当然していて、ワーグナーが影響を受けたショーペンハウアーの『意志と表層としての世界』も読みました。ですが、ワーグナーの音楽と同じくらい(ショーペンハウアーにも)感動したので、こうして名前を出しているだけです。こういったことを言語化しようと思えばできますが、この作品に関しては、嘘になるので。振りを創るときも、出ない時は出ないままにしています。」

Q:『ASU』(14年)の第2部も感覚で創ったと言っていましたが、今回と違いはあリますか。
金森「『ASU』第2部は動物的、今回の『Liebestod』は人間として、と言うか、舞踊家として創っています。バレエという文脈や、身体と向き合ってきたもの、42年間培ってきたものをすべて出します。概念に捉われると、心の部分が見えづらくなってくる。魂に触れてくるものを作品にしたい、人を感動させたいと思います。
『Liebestod』は男女二人だけが登場します。自分が死にゆくことを知っている余命短い男と、生命の輝きにあふれた女が出会って、愛し合う。ドラマはありますが、まず男女がいることから始まり、そこにワーグナーの音楽が流れてきて、ドラマが展開するという形です。神話から題材をとったワーグナーの原作よりも、音楽そのものに触発された作品です。」

Noism1 新作『Liebestod-愛の死』/レパートリー『Painted Desert』

●演出振付:
新作『Liebestod-愛の死』: 金森 穣(Noism芸術監督)
レパートリー『Painted Desert』: 山田勇気(Noism2専属振付家兼リハーサル監督)

<新潟公演>
●日 時:2017年5月26日(金)19:00/27日(土)17:00/28日(日)15:00
●会 場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉

<埼玉公演>
●日 時:2017年6月2日(金)19:00/3日(土)17:00/4日(日)15:00
●会 場:彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉

主 催:公益財団法人新潟市芸術文化振興財団
共 催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団 *埼玉公演
製 作:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

Noism公式サイト http://noism.jp/
公演PRページ  http://noism.jp/liebestod_pd/

▼公演詳細はこちら
http://www.chacott-jp.com/magazine/information/stageinfo2/lebestod-painted-desert.html