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浦野芳子
[2011.04.18]

Noism1が外部の振付家を招いて『OTHERLAND』を上演
2011年春公演『OTHERLAND』公開リハーサル

 Noismが4年ぶりに振付家を招いて『OTHERLAND』を上演する。4月8日、新潟、りゅーとぴあのスタジオで招聘される振付家、稲尾芳文、アレッシオ・シルヴェストリン、そして金森穣が参加して公開リハーサルが行われた。
Noism芸術監督の金森穣は外部から振付家を招いて行う公演について、「過去数回は、その都度、台風に見舞われるような感じだった」と言う、つまり、外部からもたらされる刺激に、良くも悪くも大きく揺るがされていたところがあったのだと。しかし、「この4年間で、金森作品の方向性、追求すべき身体性、そしてNoismとしての集団意識が、確立され、向かうべき方向が見え始めた」。集団としての在り方を明確にし始めたNoismとは、例えるならば遊牧民であるという。その遊牧民たちが、「金森穣というルールが通用しない新たな大地(=振付家)に出逢い、そこに自ら飛び込んでいき、さまざまな体験をする。その中で、各々個人はもちろんですが何よりも私自身が、メンバーのひとりひとりの今まで見えなかった面を発見する、それを期待しています」。

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 当日はまず、アレッシオ・シルヴェストリン作品のリハーサルが公開された。前半、ダンサーたちの身体が今まさにピアノの鍵盤からこぼれ落ちた音、新たに視覚化された音符のごとく、空気を運んでいく。やがて、楽器はピアノからフルートに、こぼれるようなリズムは、和の音階のしんとしたものに変わると、ダンサーたちの身体が表す“音”も、静謐なものとなる。観る者の視界の中で、音と共に拡大と収束を繰り返すダンサーたちの動きは、まさに視覚化された音楽というべきものであろう。身体のものであるところばかりが強調されがちなダンスだが、実はそれを超えた空間芸術なのである。本公演では、それを理知的かつエレガントに、眼前に突きつけてくれるであろう予感に、期待が高まる。
 アレッシオ・シルヴェストリンに遅れて新潟に入った稲尾芳文&クリスティン・ヨット・稲尾作品は、この時点ではまだリハーサルに入って4日め。作品のイメージはすでに出来上がっているものの、動きの質はダンサーらと向かい合う中で見つけ、その中で作品を膨らませてゆきたい、と言う。作品のイメージを先行するものは、音楽。「自分が“いいな”と思う音に、共通して流れているもの。それは、僕という人間の歴史の中にある、音の記憶、なんじゃないかと、ふと思ったんです。子供のころから今に至るまでの僕の中に、脈々と積み重ねられてきた、心に引っかかる音の、記憶」。
今回の作品には、“ムビラ”というジンバブエの民族楽器を使った、米国の作曲家による“ジャパニーズ・ララバイ”という曲を選んだ。「放課後のグラウンド、遊び続ける子供たち、集団下校、影の中にぼんやりと浮かび上がる風景、屏風、仏像、金色の光の広がり…」。自分の心にある原風景のようなものが、イメージの核にはあるというが、「具体的にどういう動きになるかはスタジオでやってみなければわからない。逆に、はじめに決めたこと、自分に課したルールのようなものが、壊れたり外されていくことも、ある種の楽しみです」。それを受け入れ、乗り越えた時にさらに大きなものが生まれる、創造とは、そういうものなのかも知れない。
 そして、金森穣レパートリーは、09年公演『ZONE〜陽炎 稲妻 水の月』で上演された『Psychic』である。短い作品ではあるが、それを観た人の心には恐らく、鮮烈な印象が残っていることだろう。目に見えない影(何か)に脅える少女、その前でまるで無関係に繰り広げられる決して接点を持たない人間たちの対話、関係。ある意味、現代社会の縮図ともとれるその作品に今回は新たなラストパートが加えられ、それを金森穣自身が踊るという。「人生には、さまざまなインパクトが起こります。今、この時代に公演を行うことで、私たちは何を考え、何を伝えるべきか、それを考えたい」と言う金森に、それはやはり、今回の震災、そして日本が置かれている状況を意識したものになるのかと問うと、「やはり・・・希望は必要ですよね」、そういう答えが、返ってきた。

この3人の振付家は、ルードラ・ベジャール・ローザンヌで同時期を過ごした経緯もある。同じ環境に学び、後に異なる環境のもとで踊ってきた彼らが、振付家としてひとつのカンパニーと向かい合う。「同じ時代に生まれその空気を呼吸する中で、異なる背景を持つわれわれが、Noismという集団と出逢ったときに、そこからどんな現象が立ち現われるのか、それが楽しみ。だからあえて、公演に際しての言語化できる共通テーマはつくらない」と金森。
今、という時を同時に生きる振付家が、舞踊、という専門的な手段を用いて、表現を行う。まさに、今、この瞬間を生きる芸術である舞踊だからこそ感じられる、オルタナティヴな問いかけが、そこに立ち現われるのかも知れない。
舞踊の、新たな可能性の目撃者となるべく、新潟まで小さな旅をしてみよう。

りゅーとぴあレジデンシャル・ダンス・カンパニー Noism1『OTHERLAND』
外部振付家招聘企画第4弾

●5/27(金)19:00、28日(土)・29日(日)17:00
●りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
●演出振付=
稲尾芳文&クリスティン・ヨット・稲尾
アレッシオ・シルヴェストリン
金森穣(りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館舞踊部門芸術監督/Noism芸術監督)
●出演=Noism1
●一般5,000/学生2,500(全席指定・税込み)
●お問い合わせ=りゅーとぴあチケット専用ダイヤル 024-224-5521 (11:00〜19:00 / 休館日を除く)

※新潟公演では、金森穣振付によるNoism2の新作を同時上演いたします。
同時上演(予定)新作『火の鳥』
●演出振付=金森穣
●出演=Noism2

<滋賀公演>6/18(土)17:00 / ぴわ湖ホール