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浦野 芳子
[2016.01.20]

斎藤友佳理芸術監督により、ブルメイステル版『白鳥の湖』を3キャストで上演する東京バレエ団 ----斎藤友佳理芸術監督および主演ダンサーらが会見した

小寒も過ぎ、すっかりお正月気分も抜けきった2016年1月15日。東京バレエ団でブルメイステル版『白鳥の湖』の公開リハーサル、および芸術監督らを囲んでの記者会見が行われた。

1601tokyo_swan01.jpg 上野水香、柄本 弾 撮影:引地信彦

これまで東京バレエ団は、『白鳥の湖』をアレクサンドル・ゴールスキー版を上演してきたが、昨年新たに就任した斎藤友佳理芸術監督のたっての希望から、ブルメイステル版を上演することになった。ブルメイステル版『白鳥の湖』初演当時の演出にできるだけ忠実に、と、衣装はモスクワ音楽劇場から借りたものに手を加え、1幕と3幕の美術は新規制作されるというという。
「バレエといえばやはり誰もが思い浮かべるのは『白鳥の湖』です。その『白鳥の湖』を作曲したチャイコフスキーにちなんで私たちのバレエ団は、“チャイコフスキー記念・東京バレエ団”と名乗っています。ブルメイステル自身がチャイコフスキーの血縁であり、50年前の設立当時から世界中の名だたるバレエ団や振付家、ダンサーらと交流を深める中で成長してきた私たちのバレエ団の“今”をお見せする上で、これ以上にふさわしい作品はないでしょう。実は私がロシアで初めて学んだ作品もこの作品でした」と斎藤監督。
今回、この作品を上演するにあたりウラジーミル・ブルメイステルの娘、ナタリヤ・ブルメイステルに許可を請うたとき、ナタリヤは「父が大切にしていた作品を日本で上演してもらえるのは大きな喜びだ」と好意的に許諾してくれた。
新芸術監督のもと、新たな一歩を踏み出そうとしている東京バレエ団にとって、ブルメイステル版『白鳥の湖』は大きな意味を持つ作品である。

この記者会見には、この上演に際して指導者として来日しているマルガリータ・ルアノと、ニコライ・フョードロフも登壇した。ルアノはダンチェンコ記念国立モスクワ音楽劇場で活躍してきたダンサーであり、現在は劇場で指導に当たっている。フョードロフはボリショイ・バレエ団でダンサーとして活躍したのち、自身のプロデュース公演を行うなどの経験を重ね、やはり現在では指導者として活躍している。豊富な経験を持つふたりを指導、演出に迎え、バレエ団は一丸となって公演に向けリハーサルを重ねている。
「リハーサルは昨秋からスタートしましたが、ギエムのファイナル公演のツアーがあり、そこで東京バレエ団はフォーサイスやキリアンの難しい作品を踊ることになりましたから、このリハーサルは年末までお預けとなりました。大変だったとは思うのですが、その経験を乗り越えたことをぜひ、この作品で生かしてほしいと思っています」
公開リハーサルのこの日は、2幕と3幕を通して見学したが、印象的だったのは3幕の展開である。ブルメイステル版では、花嫁候補はじめ各国のゲストがすべて、ロットバルトの手下として登場する。
「3幕は、ドラマ性が最も強く出ている場面です。キャラクターダンスは悪の力により王子に羽を渡すことを目的に創られています。ダンサーたちは王子の心を虜にするために出てきます」とルアノ。
この『白鳥の湖』には3組の主演ペアが登場するが、オデット/オディールを演じる上野水香、渡辺理恵、川島麻実子らは口々にこういう。
「より伝わりやすいストーリーだと思いますし、スケールの大きさを感じます」(上野)。
「筋が通っていますよね。今まで、なぜ王子は黒鳥を白鳥と間違うのかしら、と疑問に思っていたけれど、この流れでは納得しながら取り組めます」(渡辺)
「この場面は、王子がオディールの存在をオデットの違う一面として受け入れていると解釈して踊っています。観客の皆さんにも伝わりやすいのではないでしょうか」(川島)

1601tokyo_swan02.jpg 渡辺理恵、秋元康臣 撮影:引地信彦 1601tokyo_swan03.jpg 川島麻実子、岸本秀雄 撮影:引地信彦

ファンタジーの世界に、王子はなぜ、愛を誓った白鳥のことを忘れてしまったのかという疑問を包み込む他の演出に対して、整合性のあるストーリー展開で応えるブルメイステル版は、演出の部分でもリアリティを追及する。初演時には登場人物の階級の違いが衣裳にも表現されていたというが、今回もそれを踏襲する。
「だって、村娘が宮廷の人たちと同じような豪華な衣裳を着ているのはおかしいでしょう?」と斎藤。
ブルメイステルとは両親が親しく、家族ぐるみの付き合いだったというフョードルフは「衣装はすべて振付家と衣装デザイナーが一緒に考え創っていた。ミラノ・スカラ座や、パリ・オペラ座でもレパートリーに加えられているが、今はすっかり豪華な衣装になってしまったね」と言う。
ほかのヴァージョンや、スカラ座などでの演出を否定するわけではないが、今回はこだわりを持って原点に返った表現をしたい、とルノアが言うと斎藤も大きくうなずく。

3組の主役ペアは、初日を踊る上野水香と柄本弾以外は、『白鳥の湖』の経験はまだ少ない、新鮮な配役である。最終日を務める川島麻実子・岸本秀雄組は、ふたりとも主演すること自体がはじめての経験だ。
「テンパりやすいたちなので、しっかりリハーサルから吸収し自信をもって舞台に臨みたい」と岸本が言うと、
「舞台を踏むたびに成長を感じさせてくれる岸本君ですが、この舞台を経験したらもっともっと成長できると思う。ひとつでも多くのことを吸収してほしいですね」と斎藤。そして重ねるように、他のダンサーたちへの期待を口にした。
「みんなの長所も短所も知っているつもりです。でも、長所をより引き出し、舞台に臨んでほしいですね。水香と弾はキャリアもありますから、これを原点からのスタートととらえ、さらなる進化と変身に期待したい。東京バレエ団に入って初めての主演の秋元康臣君と09年に『白鳥の湖』に抜擢された理恵ちゃんには、もともと持っている繊細な存在感にエネルギッシュさが加わるといいなと思っています。そして麻実子ちゃんと秋元君には自分をもっと出して、持っているものを輝かせてほしい」斎藤監督は語った。
古典でありながら、ひときわドラマティックな展開を見せるブルメイステル版『白鳥の湖』。その世界を表現するという経験を通して、東京バレエ団の、そして日本のバレエダンサーたちの表現力がエネルギッシュに開花することを期待したい

1601tokyo_swan04.jpg 撮影:引地信彦

東京バレエ団初演ブルメイステル版『白鳥の湖』

●2016.2/5(金)〜7(日)
●東京文化会館
●出演=[オデット/ジークフリート王子]
 5日18:30 上野水香/柄本弾
 6日14:00 渡辺理恵/秋元康臣
 7日14:00 川島麻実子/岸本秀雄

●お問い合わせ=NBSチケットセンター 03-3791-8888
(平日10:00〜18:00、土曜10:00〜13:00)
http://www.nbs.or.jp/