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【ニュース】第15回の節目を迎える「世界バレエフェスティバル」、記者会見で概要が発表された

今年8月に開催が予定される3年に一度のバレエの祭典、第15回〈世界バレエフェスティバル〉の発表記者会見が、3月5日、都内で行われた。主催者の日本舞台芸術振興会(NBS)専務理事・高橋典夫氏は、第15回を迎える今年のバレエフェスは様々な意味で節目の回になると強調した。すなわち、〈世界バレエフェスティバル〉を創設した佐々木忠次氏(前専務理事)が2016年に亡くなってから初めての開催になること、東京オリンピックに向けて盛り上げていく良いタイミングになること、株式会社コーセーの特別協賛により若者向けの格安席「コーセーU29シート」を初めて設けること、会場の東京文化会館(東京都歴史文化財団)を初めて共催者に迎えることの4点を挙げた。
Aプロ(8月1〜5日)とBプロ(8月8〜12日)に加えて、恒例となった〈ガラ〉公演を8月15日に開催するという。ただし、この〈世界バレエフェスティバル〉が海外では長年"ササキ・ガラ"と呼ばれてきたことを受け、今回は〈ササキ・ガラ〉として行われる。さらに、バレエフェスの開幕前に、〈全幕特別プロ〉として東京バレエ団による『ドン・キホーテ』公演(7月27、28日)に2組の参加ダンサーがゲスト出演するという。

高橋氏は、「世界バレエフェスは、〈ガラ〉という名称が知られるきっかけになったフェスティバル」と語り、第1回が開催された1976年当時は、著名なダンサーが国や所属バレエ団の枠を超えて集まることが極めて稀だったとも指摘した。「佐々木の強い意向で、英国のマーゴ・フォンティーン、ロシアのマイヤ・プリセツカヤ、キューバのアリシア・アロンソという当時の三大プリマを揃えたことが世界に衝撃を与え、この初回の成功がその後につながりました」という。ついでに、初回に参加したフォンティーンが米「リーダーズ・ダイジェスト」誌のインタビューに答えて、イタリアで生まれ、フランスで発展し、ロシアで完成されたバレエの歴史を踏まえ、「バレエは、イタリアの時代、フランスの時代、ロシアの時代を経て、これからは日本の時代になる」と語ったというエピソードも披露した。

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高橋氏は「日本のバレエが国際化したのも、このバレエフェスの影響が大きいのではないか」と誇らしげ。実際、この42年間で、世界最高峰のダンサーによる美と技の競演の場として、また世界のバレエ界の"今"を縮図のように伝える場として、〈世界バレエフェスティバル〉は世界で最も豪華なバレエの祭典として知られるようになった。これをバネに、「文化資産としての価値もあるバレエがもっと活用されるようになれば」と高橋氏は期待を寄せた。 

特別協賛するコーセーの執行役員で宣伝部長の北川一也氏は、「コーセーは、化粧品を中心とする美の創造企業として、美と健康を追求してきており、アートとスポーツの分野でも支援を行っている」と前置きした上で、「これは世界中のトップダンサーが集うフェスティバルであり、本物の美しさが見られるまたとない機会と思い、協賛することにしました」と述べた。「コーセーU29シート¥4,000」は、満29歳までを対象に、Aプロ、Bプロの毎公演に「C席」相当の席を30席(計300席)用意し、1席4,000円で提供するもの。通常のC席料金は16,000円なので、若いバレエファンには有難いことだろう。

高橋氏は東京文化会館が新たに共催者になったことに触れて、同館が美術館等の点在する上野公園にあることを活かし、屋外でパブリック・ビューイングができないか検討したいとも語った。実現すれば、夏休み中の開催でもあるので、反響を呼びそうだ。さらに、第16回の開催は2021年だが、オリンピック・イヤーの2020年に、オリンピックの直後でパラリンピックの前の8月半ばに、〈世界バレエフェスティバル〉の特別公演を計画しているとの嬉しいサプライズも発表された。

気になるのは今回出演するダンサーの顔触れ。発表されたのは33人だが、ほかにモーリス・ベジャール・バレエ団からも参加予定という。今や世界の著名なバレエコンクールで受賞する日本人が続出し、世界の名だたるバレエ団で日本人が活躍する時代になったが、今回、日本人ダンサーの参加はない。これについて質問されると、高橋氏は日本人ダンサーが海外のダンサーに劣らず極めて優秀なことを認めた上で、「実際問題として、どのバレエ団から誰を招くかはとても難しい」と述べた。

参加予定ダンサーは次の通り。
パリ・オペラ座バレエ団からは最多の7人。筆頭は芸術監督を務めながらオペラ座以外の舞台で踊り続けているオレリー・デュポンで、Aプロのみの参加。今や"最古参のエトワール"になったマチュー・ガニオと中堅として重みを増しているマチアス・エイマンのほか、円熟期にあるドロテ・ジルベール、エレガントに舞うミリアム・ウルド=ブラーム、新世代のエトワールと期待されるレオノール・ボラックとジェルマン・ルーヴェの4人は初参加。英国ロイヤル・バレエ団からは、スーパースターのスティーヴン・マックレー(Aプロのみ)をはじめ、サラ・ラムとフェデリコ・ボネッリがロイヤル・スタイルの伝統を披露する。イングリッシュ・ナショナル・バレエからは、バレエ団の活性化を推進する芸術監督のタマラ・ロホのほかに3人。初参加となるイサック・エルナンデスとセザール・コラレス(今秋より英国ロイヤル・バレエに移籍)に加え、名花アリーナ・コジョカルが公私にわたるパートナーのヨハン・コボーと出演する。

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ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン photo/Kiyonori Hasegawa

 ハンブルク・バレエ団からは、シルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコという看板ダンサーのカップルと、アンナ・ラウデールとエドウィン・レヴァツォフのペア。シュツットガルト・バレエ団からは甘いマスクも魅力のフリーデマン・フォーゲルと初参加の若手エリサ・バデネス。同団での名演が忘れ難い元メンバーのマリア・アイシュヴァルトも出演する。ベルリン国立バレエ団からは個性の異なる実力派のバレリーナ、ヤーナ・サレンコ(Aプロのみ)とポリーナ・セミオノワ。マラーホフに育てられたセミオノワは出産後の久々の来日になる。アメリカからは、サンフランシスコ・バレエのマリア・コチェトコワと、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)からバレエフェスの人気者となったダニール・シムキンとボリショイでも活躍した初参加のデヴィッド・ホールバーグ。オランダ国立バレエ団からはシュツットガルトから移籍した男性二人。王子役が似合うマライン・ラドメーカーとダイナミッックな踊りが得意の初参加のダニエル・カマルゴ。ミラノ・スカラ座バレエ団とABTの両方で活躍する"貴公子"ロベルト・ボッレも出演する。
ロシアからは、ボリショイ・バレエを退団後も変わらぬ活躍を続けるマリーヤ・アレクサンドロワと同団屈指のノーブル・ダンサー、ヴラディスラフ・ラントラートフ。ミハイロフスキー・バレエ団からは、躍動感あふれる踊りを見せるレオニード・サラファーノフが出演する。また今後、出演者のヴィデオ・メッセージをホームページで順次公開していくという。
〈全幕特別プロ〉『ドン・キホーテ』に客演するのは、7月27日がミリアム・ウルド=ブラームとマチアス・エイマン、28日がアリーナ・コジョカルとセザール・コラレス。〈世界バレエフェスティバル〉と〈ガラ〉の演目など、詳細は6月に発表の予定。

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アリーナ・コジョカル
photo/Kiyonori Hasegawa

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セザール・コラレス
photo/Kiyonori Hasegawa

 

ステージ & ワークショップ/コンクール

[記 事]
佐々木 三重子

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