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秀 まなか 
[2009.11.24]

若手が順当に昇進した男性ダンサーのパリ・オペラ座昇格試験

18日の女性ダンサーの試験に引き続き、20日にはパリ・オペラ座バレエの男性ダンサーの昇級試験が行われた。結果は以下の通り。

プルミエ・ダンスール:ジョシュア・オファルト、ヴァンサン・シャイエ
スジェ:フロリモン・ロリュー、ファビアン・レヴィヨン
コリフェ:ヤン・シャイウー、アドリアン・クヴェ、ミカエル・ラフォン


カドリーユクラスに与えられた課題はハラルド・ランダーの『エチュード』からマズルカ。13人の受験者の中から昇進を勝ち取った、2004年入団のアドリアン・クヴェは、自由曲でジョゼ・モンタルヴォの『竪琴の笑い』を踊った。小柄な体躯を生かしたテクニシャンで、2005年の『ドガの小さな踊り子』の給仕役で見事な足裁きを紡ぎ出したことが印象深い。どちらかというと、ネオ・クラシックやコンテンポラリー作品に起用されることが多く、『ジョワイヨ』のルビー、ベジャールの『春の祭典』の2人の若者役、また、マッツ・エックの『…のようなもの』では、2008年のパリ・オペラ座での初演キャストに選ばれている。
セルジュ・リファールの『白の組曲』のマズルカを自由曲に選択したミカエル・ラフォンは、入団直後の2007年12月の『パキータ』で、幕開きの3人の村人のうちの1人を先輩スジェたちに交じって毎晩演じ、バレエ団の期待を伺わせた。その後は大きな役に恵まれていないが、容姿といい、踊り方といい、NYCBの芸術監督のピーター・マーティンスを彷彿とさせ、大成する予感を覚える。
まもなく、上演されるルドルフ・ヌレエフの『くるみ割り人形』から、2幕の王子/ドロッセルマイヤー(ヌレエフ版の王子役はドロッセルマイヤーとの一人二役)のヴァリアシヨンが課題のコリフェクラスの受験者も、13人。『ドン・キホーテ』から1幕のバジルのヴァリアシヨンを踊って、トップで通過したフロリモン・ロリューは2005年入団の22歳。昨年コリフェに上がったばかりなので、2年連続で昇進を果たしたことになる。2008年のウィリアム・フォーサイスの『アーティファクト組曲』で見せた、長い手足で空間を切り裂く踊りは、ソリスト役を凌ぐほどの勢いがあり、圧倒的であった。
2位で昇進した2003年入団、23歳のファビアン・レヴィヨンも、頻繁に起用されている一人。『パキータ』から2幕のリュシアンのヴァリアシヨンを踊った彼の初めての大役は『ライモンダ』だ。まず、2008年4月の、3幕からの抜粋上演で、準主役級の友人役、ベランジェ役を貰ってバットゥリー満載のデュオを披露。同じ年の年末の全幕上演の際には、もう一人の友人役のベルナールとして、同じデュオでの成長ぶりを見せた。長身の金髪で、甲の高い美しい爪先を持つ彼は、以後、コリフェながらほとんどスジェ扱いで起用されており、どんな舞台でも実に楽しそうに、生き生きと踊っている。

注目のスジェクラスでは、8人がプルミエ・ダンスールの空席を争った。課題曲は来年5月に上演予定のルドルフ・ヌレエフの『ラ・バヤデール』から、2幕のソロルのヴァリアシヨン。指導者は、ソロル役を得意とした元エトワールのジャン=ギョーム・バールだ。
大方の予想通り、25歳のジョシュア・オファルトが1位通過。2002年入団後、2004年のヴァルナ国際バレエコンクールで、同期のマティルド・フルステと組んで銀賞を受賞し、同年スジェに昇進する。入団当初から将来を嘱望されていたものの、主役に抜擢されたのは意外に遅く、5年後の2007年の『くるみ割り人形』の王子/ドロッセルマイヤー役だった。確かな技術も去ることながら、なかなかの演技力を見せて健闘し、今年の『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』でも主役のコーラスで登場。王子役が見事に嵌る甘いマスクの長身の持ち主だが、ナチョ・ドゥアトやマッツ・エックといったコンテンポラリー作品にも強く、2008年のジョゼ・マルティネスの『天井桟敷の人々』では、プレイボーイのフレデリック役を軽快に踊ってみせた。
その『天井桟敷の人々』のラスネール役で一気に注目を浴びたのが、オファルトと同期の25歳のヴァンサン・シャイエだ。ダンサー全員が停止する中、スポットライトを浴びてソロを踊るストーリーテラーの儲け役を、長い脚で生み出すダイナミックなジュテを交えて、第1キャストのバンジャマン・ペッシュと劣らない域にまでに仕立て上げた。その秘密は卓抜した演技力だろう。たとえ『ジゼル』の村人の一人であっても、そこにいる意味を常に考えている知性派であり、独特の雰囲気を帯びる。モーリス・ベジャールの『火の鳥』のフェニックス、ナチョ・ドゥアトの『ホワイト・ダークネス』などのコンテンポラリー作品でも、一味違うものを見せるのだ。
自由曲でローラン・プティの『カルメン』のドン・ホセのヴァリアシヨンとベジャールの『アレポ』を踊った2人。この年末には、オファルトは、一昨日プルミエール・ダンスーズに昇進したばかりのリュドミラ・パリエロと『くるみ割り人形』、シャイエは「バレエ・リュス」公演の中の『三角帽子』でそれぞれ主演することになっている
昇進したダンサーの顔触れを見てみると、皆、近年の舞台で頭角を現した若手ダンサーたちだ。ヴェテランのダンサーの受験者が減っている事実も確かにある。だが、男性ダンサーの新旧交代が着々と進んでいるパリ・オペラ座の現状を、顕著に表した昇進試験だったと言って差し支えないだろう。