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関口 紘一 
[2011.04.21]

首藤康之、花柳昌太朗、尾上青楓、小野絢子、百合子が受賞した舞踊批評家協会賞の贈呈式

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去る4月16日、東京・表参道にあるNHK青山荘で、2010年1月1日から12月31日までに日本国内で公演された舞踊活動を対象とした、第42回舞踊批評家協会賞の贈呈式が行われた。
今回は新人賞と合わせて5名が受賞したがその授賞理由は、
首藤康之=「『アポクリフ』の世界ツアーを始め、新しいダンスの創作にダンサーとして主体的にかかわって、大きな舞台成果をあげた実績に対して」。
花柳昌太朗=「リサイタル能う会における『山椒大夫』の優れた創作性を追求した舞台の成果に対して」。
舞踊批評家協会新人賞として、尾上青楓=「新作舞踊劇『梅雨将軍信長』でみせた、信長と家臣・平手某、二人の心理の葛藤から、戦場の群舞へ展開するダイナミズムのある振付、演出に対して」。
小野絢子=「『シンデレラ』『火の鳥』などの舞台でみせた、日本人バレリーナらしいタッチの細かな表現力と、新国立劇場バレエ団を代表するダンサーとしての大きな活躍の可能性に対して」。
百合子=「『デルメトーレ佐緒里』『雪道夢ーゆきみちゆめ』の舞台で謎めいてシュルレアリスティックな手法など、舞踏の新境地を展開しつつある予感に対して」。(五十音順)
12時から行われた贈呈式では授賞者に対して会員が推挙の弁を述べ、受賞の言葉が返されるという形式で進められた。続いて同じ会場でレセプションとなり受賞者およびその関係者と批評家協会会員とが交流の場をもった。

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私もその一員を務めさせてもらっているが、舞踊批評家協会は会員の会費を主な財源として運営しており、種々経費がかさみ経済的にもなかなか厳しく余裕は無い。しかし、舞踊作家と批評家が公開の場で交換することは意義深いし、クラシック・バレエからコンテンポラリー・ダンス、舞踏、日本舞踊まで広くジャンルを越えて舞踊関係者が交流する機会は、日本では皆無だろう。その意味でも非常に<貴重な場>といってくださる方は多い。これはもちろん、諸先輩の考案した伝統として、私たち舞踊に関わる者は、敬意をもって継承していかなくてはならない。

今回の舞踊批評家協会賞の特色のひとつは首藤康之の授賞だろう。
それは端的にいうと、現在のコンテンポラリー・ダンスが模索しているものを理解しなければ、今日のクラシック・バレエの直面している問題を捉えることはできないし、その逆もまた事実である、ということを表している。
たとえば、ウィールドマンやミルピエあるいはビゴンゼッティと言ったクラシック・バレエをベースにして仕事をしている気鋭の振付家たちの問題意識を理解するためには、コンテンポラリー・ダンスの、とりわけベルギーのダンスが試みている時代のリアリティを共有する必要がある。これはもちろん、現代の舞踊作品と共感するためには、誰はコンテで彼はバレエ、また誰それはモダンなどと勝手に色分けして事足れりとする、ドメスティックな発想では如何ともし難いことも意味している。
クラシックのバレエダンサーからスタートして、シェルカウィの作品に参加した首藤康之の舞踊活動の軌跡は、そうした今日のダンスの有り様を如実に映し出している。かといって首藤は、バレエダンサーを卒業してコンテンポラリーのダンサーになったわけではない。昨年末、首藤が振付けた『くるみ割り人形』の見事な動きで構成された舞台が、そのことをなによりも雄弁に物語っていた。
ともあれ、首藤康之の舞踊批評家協会賞受賞が今日の日本のダンスに一つの刺激を与えることができれば良いのだが、と私は思う。