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針山 愛美
[2015.12.28]

アレッサンドラ・フェリが復帰を果たしたノイマイヤー振付『ドゥーゼ--エレオノーラ・ドゥーゼについての舞踊の想像力』世界初演を観る

DUSE   Choreografische Phantasien über Eleonora Duse

1512Ferri_01.jpg Alessandra Ferri, Carsten Jung
photo/Holger Badekow.

以前からアレッサンドラ・フェリが復帰公演として、ノイマイヤーの新作を踊ると言うことは話題になっていたので、『ドゥーゼ--エレオノーラ・ドゥーゼについての舞踊の想像力』世界初演は、ドイツのメディアでも大きく扱われていた。
主題となっているエレオノーラ・ドゥーゼ(Eleonora Duse:1858年10月3日〜1924年4月21日)はイタリアの著名な女優で、19世紀から20世紀にかけて活躍し、当時の舞台芸術に大きな影響を与えた。イタリアの詩人、劇作家のガブリエーレ・ダンヌツィオやイプセンの戯曲を演じた。フランスの大女優サラ・べルナールのライバルとも言われ、大いに人気を博した。
やはりイタリア人であるアレッサンドラ・フェリが、ドゥーゼを演じたことも注目を集めた。ノイマイヤーが彼女のために作った作品で、ドゥーゼとフェリの人生がかぶるようなシーンもあり、フェリでなければこの作品の良さが失われそうとも感じられた。
非常に内容が濃く、良く考えられ重く深い作品で、ノイマイヤーは相当な時間をかけてこのバレエの振付を行ったと想像される。

舞台は2幕構成で、第1幕ではドゥーゼの生涯を描き、20世紀初頭を思わせる衣装とセットでフェリの踊りも、当時の写真から抜け出て来たような雰囲気だった。この第1幕はほぼベンジャミン・ブリテンの曲が使われ、途中1曲のみアルヴォ・ペルトのが組み込まれていた。ベンジャミン・ブリテンの音楽は、リズム、メロディとも踊るには容易ではないが、モダンな曲調を逆にしっとり踊るフェリのケミストリーが新鮮に感じられた。
第1幕前半では、ダンヌンツィオとドゥーゼの駆け引きが鮮やかに踊られ、彼女が栄光と喝采を浴びる幸せな瞬間が描かれる。後半は一転して、ダンヌンツィオとサラ・ベルナールの関係が描かれ、見向きもされなくなって行くドゥーゼと喝采を浴びるサラ・ベルナールの対照的な姿が、コントラストよく良く描かれていた。

1512Ferri_02.jpg Marc Jubete, Alessandra Ferri, Alexandr Trusch, Karen Azatyan, Carsten Jung
photo/Holger Badekow.
1512Ferri_03.jpg Alessandra Ferri, Carsten Jung
photo/Holger Badekow.

第2幕は、ドゥーゼと彼女にとって重要だった4人の男性による5人の登場人物を中心に展開された。ドゥーゼの死後の世界を抽象的に表わし、30分間のモダンな雰囲気な演出だった。ここでは、すべてアルヴォ・ペルトの曲が使用されていたが、ミステリアスな雰囲気の曲が彼女の死後の世界を浮かび上がらせた。
アレッサンドラ・フェリは、引退後数年間のブランクがあるとは思えないしなやかさと軽やかな動きで観客を魅了した。足先からストーリーが伝わって来るような美しい脚線美も健在で、ポワントワークも素晴らしかったのだが、裸足で踊った時にはさらに美しく、思わず見とれてしまった。
ノイマイヤーは、ドゥーゼを女性として、またバレリーナ(舞台女優)として二つの顔を持ったヒロインとしてこの作品を作り上げていた。舞台上に芝居の舞台を設置し、観客の役は群舞のダンサーたちが務めた。私たち観客は、舞台を見ながらもう一つの現実世界の舞台も見ていて、同時に二つの世界観が体験されるという、たいへん興味深い手法で描かれていた。フェリはゲストで主演し、他はハンブルク・バレエのダンサーが踊った。華麗なリフトを何度も見せてくれ、からみあう踊りが多く素晴らしかったのだが、さらにいえば、もう少し男性たちそれぞれの踊りと、フェリのソロも見たいところだった。
幕が降りた後、ノイマイヤー自身も舞台に上がり盛大な拍手を浴び、フェリと共に成功の喜びを分かち合っていた。

1512Ferri_04.jpg Alessandra Ferri, Carsten Jung
photo/Holger Badekow.
1512Ferri_05.jpg Alessandra Ferri, Karen Azatyan
photo/Holger Badekow.

『DUSE   Choreografische Phantasien über Eleonora Duse』
2015年12月6日 ハンブルク・バレエ団 ハンブルク歌劇場 世界初演
[スタッフ]
音楽     ベンジャミン・ブリテン、アルヴォ・ペルト
振付、演出、照明、衣装  ジョン・ノイマイヤー
[キャスト]
エレオノーラ・ドゥーゼ   Alessandra Ferri
彼女の御付き(Désirée von Wertheimstein)     Hélène Bouchet
兵隊(Luciano Nicastro) Alexandr Trusch
彼の友人 (Annunzio Cervi)     Jacopo Bellussi
指導者 (Arrigo Boito)    Carsten Jung
誘惑者(Gabriele D'Annunzio ガブリエーレ・ダンヌンツィオ)   Karen Azatyan
友人 (Isadora Duncan イザドラ・ダンカン)    Anna Laudere
ライバル(Sarah Bernhardt サラ・ベルナール)  Silvia Azzoni
彼女のファン    Marc Jubete