関口 紘一
[2010.05.17]

若者たちの魂の叫びを歌うロックミュージカル

2006年にブロードウェイで開幕され、トニー賞作品優秀賞、楽曲賞、脚本賞他8部門を受賞し、09年には日本で上演されて大きな反響を呼んだミュージカル『春のめざめ』が、再び自由劇場で上演されている。

『春のめざめ』は、ドイツのフランク・ヴェデキントが1891年に発表したの同名の戯曲をミュージカル化したもの。映画化もされて世界中で上映されている。
原作はおよそ120年前に書かれているから、もちろん今日とは時代背景は異なっている。しかしそのためにかえって、ドイツ帝国時代の抑圧的な社会と激しく対立する青春期の身体、という構造がはっきりと浮かび上がって問題が理解しやすくなっている。
物語は19世紀末のドイツのある学園で繰り広げられる。教条的な考えで凝り固まった教師たちの無味乾燥な授業、子どもたちの問題に正面から向き合おうとしない親たち・・・。閉塞感に胸を押し潰されそうな少年メルヒオールと幼なじみ少女ベンドラの恋を中心に、毎夜、性的な「悪夢」に悩まされるモリッツなどの思春期の生徒たちのもがき苦しむ姿を通して、自殺、セックス、妊娠、近親姦など赤裸な問題を真正面から描いている。

作曲家のダンカン・シークはシンガーソングライターだが、他のミュージカルのようにいつも歌が物語を進めていく、というスタイルはとらず、この舞台をロック・ミュージカルに仕立てて見事にに成功した。
『春のめざめ』ではミュージカル・ナンバーが歌われるとき、ドラマははっきりとストップする。俳優たちはまるでロック・コンサートの歌手ように、抑えつけられた心情を激しく歌う。すると時代を越えた若者たちの情熱や悩みが、魂の叫びとなって今日の人々の胸に響き渡る。実際、19世紀末にはあり得なかったと思われる表現が、登場人物のこころの動きを表して鋭く観客にうっえた。
ダンカン・シークは出演者たちに、どんなボイストレーニングを受けてきたかは忘れ、ロック・スターになりきってリサイタルを行っている、と思って思い切り歌って欲しい、と注文を付けていたそうだ。ブロードウェイの上演に漕ぎ着けるまでには、紆余曲折があったそうだが、開幕するとネット上を中心に話題が広まったという。それはこうした120年を隔てた時空を交錯するようにして創作したことが、成功の一因だったのかも知れない。

劇団四季 ミュージカル『春のめざめ』
原作/フランク・デヴェェデキント
脚本・歌詞/スティーヴン・セイター
音楽/ダンカン・シーク
劇団四季 自由劇場

●名古屋公演 公演情報はこちら
http://www.chacott-jp.com/magazine/information/stageinfo5/post-43.html