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[2005.09.10]

素晴らしかった吉田都の「 バレエ・マスター・クラス」公開レッスン

 英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル・ダンサー、吉田都の「夏休み バレエ・マスター・クラス 2005」の公開レッスンが、神奈川県民ホールで行われた。
これは、中学2年生から高校1年までのバレエ経験5年以上でプロのバレリーナを目指す人が対象。 全国から応募のあった95名から24名を選んで2日間の集中レッスンを行い、最後の3日目にバー、センターのクラスと一人一曲のヴァリエーションのレッスンを公開した。

バーやセンターのクラスでは、プリエから順々と複雑なテクニックを進めて行き、吉田は非常に細かく姿勢やポーズをチェックする。 同時に、動きは大きくとか、つま先を伸ばしてとか、バーを持つ手には力が入らないようにとか、パーツだけでなく身体全体を使うようにとか、音楽を良く聴くようにとか、要所要所で基本的な注意を与える。

ヴァリエーションのレッスンでは、『コッペリア』のスワニルダか『眠れる森の美女』の青い鳥のフロリナ王女か、どちらかの曲を一人づつ踊った。 2日間のレッスンですぐに舞台に立たなければならなかったこともあり、少々ぎこちない面もあったが、みんな一心によく踊っていた。 司会者が発表会ではないからと強調していたが、踊っている最中から吉田は気が付いた点をどんどんアドヴァイスする。その一声で、たちまち目に見えるほど踊りが素敵になることも、しばしばあった。

「音楽に遅れないように」、曲のテンポをしっかり頭に入れて動く。 「舞台のスペースは全部自分で使うくらいの気持ちで大きく動く」「後ろに重心を残さないで、前へ前へ」と進む、「上半身全体を使って肩はいからせない」「目線を下げない」 「頭の中で次のポーズをしっかりイメージして次に動けば、ふらふらしない」「ジャンプではつま先をしっかり伸ばしてぶらぶらさせない」などなどの注意点を指摘し、 その都度、吉田自身が動いてお手本を示す。そのお手本が正確無比。見事に決まっていてたいへんに見応えがあり、感心させられる。 つまり、バレエの動きは正確に気持ちを込めて行えば、自ずと美しくなるようにできている、そう改めて実感させられた。

このヴァリエーションを生徒たちが踊る前に、吉田は「私は14~16歳のころは、膝の怪我をして踊れない時期が何ヶ月もあった。 バレエを離れて不安だったのだが、やはり自分はほんとうに踊りたいんだ」という確信をもった時期でもあった。 「今日は、英国で21年間一人で踊って苦労してきたことを日本の生徒たちに、ぜひ伝えたい」と語った。
こうした貴重な経験を深く捉えた上での教えは、心のこもった非常に説得力のあるレッスンだった。 1500人以上も詰め掛けた観客の前で、吉田都の素晴らしいレッスンを受けることができた生徒たちは幸せだ、と感じられたものである。
(関口紘一)