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関口 紘一
[2015.02.27]

創立15周年特別記念のイベント「熊川哲也とK バレエ展」が始まった

150226kballet03.jpg オープニングセレモニーに登場した熊川哲也

TBSとK-BALLETが主催する「創立15周年特別記念 バレエに愛された男 熊川哲也とKバレエ展」が、2月26日午前10時、東京の松屋銀座8階イベントスクエアで始まった。これは「熊川哲也」と「K バレエ」の15年間にわたる軌跡を140点以上の展示物とトークショー、ミニコンサートなどによって公開展示するもので、3月9日まで開催される。
われわれがバレエに関する仕事をしているというと、「クラシック・バレエのことは何も知らないけれど、熊川哲也だけは知っている」と言う言葉としばしば出会う。それはつまり熊川哲也の存在を知ったことにより、バレエについてのキーワードを得たということだ。そして、熊川哲也の出現によって、バレエの存在が日本に大いに知れわたった今日、日本のバレエは大きなチャンスに巡り会いつつあるのかも知れない。
実際、1999年にK バレエが設立されるまでは、日本のバレエ団の軌跡をたどるエキシビジョンが都心のデパートで開催されることなど無かったし、成立するとも思われていなかった。ところが、オープンを待つ多くのファンが既に詰めかけていた。

オープニングセレモニーでは熊川哲也芸術監督が「この15年間、日本で全幕バレエ11作品を発表することができたのも、やはりたくさんの方々のご協力とご理解と、そして素晴らしい豪華絢爛な衣裳、セット、そういったものが無くてはなしえなかったことだと思います。自分の名前でこうして展覧会を催すというのは、非常に恐縮な気持ちでいっぱいです。
まだまだしなくてはいけないことがたくさんありますし、42歳という年齢で過去を振り返るというのが本当にいいのかどうか、まだ分かりません。しかし、素晴らしい作品が、この扉の中に山ほど詰まっております。今回は、9年ぶりに松屋さんのご協力を得て、また開催することができました」と、挨拶し続いてテープカットが行われた。

150226kballet01.jpg オープニングセレモニー テープカットの様子

また、記者たちの質問に答えて
-----展覧会をご覧になっての感想はいかがでしょうか。
熊川 我ながらよく、この年数の中でこれだけの作品を作り上げたな、と。
-----幼少期の作品のものもありましたが。
熊川 ダンサーとして、アスリートとして、非常にデリケートな年齢なので、そういった意味では若かりし頃の自分の “ライジング サン” みたいなね、なんていうのかな、輝かしい姿を見ると、切なさはあるけど豊かさもあるよね。自分を振り返るいいきっかけになるのかな。ただ自分だけの手前味噌になってしまうのはいけないので。これは僕というよりは作品とか、豪華絢爛な衣裳とかやっぱり素晴らしいです。今、見て僕自身もちょっとびっくりした。
-----ご自身の中で、この展示は一番印象に残っているのは何ですか。
熊川 いや、全てですよ。僕個人、というところではなくて、バレエの偉大さとして。僕はけっこう古き良き時代というか、偉人たち、先人たちの功績というものに対するリスペクトがある。それがあっての古典芸術ですから。そういった意味では僕のコレクションを少し展示してますので、僕を超越した、時空を超えた偉人たちの世界がここにあると思う。
-----最後に、バレエダンサーを志している若い世代の皆さんにメッセージをいただけますか。
熊川 よく聞かれるけれど、憧れはいいけど僕みたいになろうとは思わない方がいいと思う。自分らしい生き方をして、素晴らしい人間になってほしいなと。それが素晴らしい芸術性を生んで、素晴らしい人生を送れるんじゃないかなと思っている。

150226kballet07.jpg トークイベント

開場後の11時から始まった「オープニング・トークショー」にも多くのファンが詰めかけて立見までいっぱい。今や遅し、とダンサーたちの出を待った。
まず、英国紳士風にスーツを着こなしたスチュアート・キャシディを先頭に荒井祐子、浅川紫織のスターダンサー3人が登場。さすがにバレエダンサーの身のこなしは爽やかであり、会場に明るい雰囲気が溢れ、思わず待っていた人たちの表情に笑みが浮かぶ。
K バレエの15年間の軌跡の展示を見た感想を聞かれた、K バレエ創立のメンバーの一人だったキャシディは「立ち上げの時はどこまで続くかわからなかったけど、今、すべてを見て感動しています。15年間続いたことを誇りに思います。お気に入りの衣装は、コッペリウスのものです。あまりにきっちりと展示されていたので、先程、コッペリウスらしく少し崩しました。ダンサーは衣装を着けると役に入れます。王冠を着ければ王様になれるのです」
荒井祐子は「こうして見ると本当に歴史を感じます。お気に入りの衣装はやはり『白鳥の湖』。チュチュに羽根を使っていて、黒鳥のチュチュには黒い羽根の中に邪悪を表す赤が折り込まれていたり、デザインがとても素敵です。衣装はダンサーに魔法をかけて、登場人物の気持ちにしてくれます」
浅川紫織は「やはり、全幕作品の衣装を一緒にまとめて見ると凄いです。私のお気に入りも『白鳥の湖』。入団した時が『白鳥の湖』の初演の時でしたので、一番思い入れがあります。メークをしてヘアを作って役を練習しますが、衣装を着けたその時に役になることができます」
そして15年前と現在を比べて、またこれからのK バレエについて聞かれると、副芸術監督でもあるキャシディは
「そうですね、歳をとりました。それからカンパニーの中で担う責任が重くなりました。これからは、スクールもありますし、K バレエの歴史や作品を知った上で入団してくるダンサーが増えてくるので、いっそう発展していくと思います」
荒井祐子は「ダンサーとして成長しようと思って入団しましたが、今は見守る立場に立っています。9年前にもやはり、松屋銀座でK バレエ展を開催しましたが、さらにいっそうスケールが大きくなっています。バレエは長い歴史によってつくられてきましたので、カンパニーの15年の歴史をさらに発展させていきたいと思います。バレエに携われていることが幸せです」
浅川紫織は「15年前は生徒でしたから、まさかこんな環境で踊っているとは思っていませんでした。入団した時は18歳でしたが、12年経って今はスクールで教えています。その立場の違いに驚いています。熊川哲也というスターが作ったカンパニーですけれど、今、生徒がいっぱいいるので、熊川哲也を越えるくらいのスターが出現してほしいです」

150226kballet04.jpg スチュアート・キャシディ 150226kballet05.jpg 荒井祐子 150226kballet06.jpg 浅川紫織

展示スペースは、5章に分けられていて、
第1章は「天才ダンサーの誕生」として、熊川哲也が子供時代に着けた衣装やコンクールに参加した映像、日本人でただ一人熊川だけが持つローザンヌ国際バレエコンクールのゴールド・メダルとその映像。
第2章は「世界の頂点へ」。英国ロイヤル・バレエ時代の10年間を展示。『ラ・バヤデール』ソロルほか。熊川が身に着けて踊った衣装も展示されている。
第3章は「芸術への飽くなき探究」。熊川版全幕バレエの最初の作品『ジゼル』から最近作『カルメン』まで全11作の衣装を一堂に展示。『カルメン』のDVDのダイジェスト版が上映されている。
第4章「未来に向かって」。K バレエの明日を担う、K バレエ ユースと宮尾俊太郎座長率いる男性ダンサーユニットBallet Gentsの展示。
第5章は「偉大なる歴史との対話」。ベートーヴェンの「第9」の初版譜、バレエ・リュス公演プログラム、ニジンスキーの自筆サインなど熊川コレクションが展示されている。
全体に見応えのある展示物で、とりわけローザンヌ国際バレエコンクールでも踊った、手毬をつくちょっとスリリングなシーンの映像(ヨーロピアン・ヤング・ダンサー・オブ・ジ・イヤー金賞の映像)の前では、思わず立ち止まりしばしば回想に耽ってしまった。それから全幕バレエ11作の衣装が凄い。どれも細い手の込んだ装飾がほどこしてあり、素材が良く選ばれていて、雰囲気のある存在感を感じさせる。やはりここまで手を加えないと舞台上では映えないのだろう。舞台芸術というナマモノの恐ろしさというか、構築性の高さと複雑さに驚かされた。舞台上をロングショットで観るだけでなく、クローズアップで見てその細部を理解することもまた、バレエ理解の重要な要素であることを改めて教えられた想いだった。

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2015kumakawa_01.jpg (C) Nobuo Yano / Ayumu Gombi / Hidemi Seto

会 期:2015年2月26日(木)〜3月9日(月)
時 間:10時〜20時
(最終日は17時まで/入場は閉場の30分前まで)
会 場:松屋銀座8階イベントスクエア
入場料:一般1,000円/高大生700円/中学生500円/小学生300円/親子ペア(一般+小学生)1,100円
前売り券:一般前売券700円/高大生前売券500円/中学生前売券400円
(各プレイガイドにて2月25日まで販売)
主 催:TBS / K-BALLET
特別協賛:株式会社オンワードホールディングス
協 賛:チャコット株式会社
問合せ:松屋銀座 TEL03-3567-1211(大代表)