BALLET DE L'OPERA パリ・オペラ座情報
10月9日〜28日、オペラ座に多大な影響を与えた功労者セルジュ・リファールの『白の組曲』『ミラージュ』、オペラ座では初登場になるビアリッツ・バレエ団を率いるティエリー・マランダン振付の新作『イカロスの飛翔』が世界初演された。一般観客に初披露された10日、ガルニエ宮で観た。
Serge LIFAR : SUITE EN BLANC
オールスター競演のリファール『白の組曲』
プログラム最初のリファール振付『白の組曲』には、オペラ座のオールスターが勢ぞろいした。新進エトワールのマチュー・ガニオとエルヴェ・モローが登場したテーマ・バリエーションは、プレミエール・ダンスーズ(第一舞踊手)のエミリー・コゼットとのパ・ド・トロワ。『椿姫』でも全く対照的なアルマン役をみせた二人が、今度は同じ舞台でその個性をぶつけあう。特に目を引いたのが跳躍。気品あるガニオと味のある身体表現のモローはライバル意識を秘めてか、それぞれに持ち味を存分にアピールしていた。
ソロではセレナードのミリアム・ウルド=ブラアム(プレミエ・ダンスーズ)がプレースメントに忠実に、安定した踊りで作品の特徴をよく出していた。しかし、何といっても別格だったのは、シガレットを踊ったアニエス・ルテステュ。冷徹でストイックな表情、手先足先に神経を張り詰めたデリケートさ、ポワントの安定感・・・完璧なまでに美意識に裏付けられた身体性が出色だった。続くソロのマズルカでは、ジャン・ギヨーム・バールの自然体で人間味あふれる表現力が、民族色の強いリズムと絶妙にマッチしていた。
さらにオーレリ・デュポンとマニュエル・ルグリによる夢のように美しいアダージオ、クレール=マリ・オスタの魅力的なソロ・・・と名場面が続き、リファールへのオマージュに相応しい競演の夕べとなった。 |
『白の組曲』 |
Tierry MALANDAIN : L'ENVOL D'ICARE
不燃焼気味のマランダン『イカロスの飛翔』
期待していたマランダンの新作『イカロスの飛翔』だが、人間の身体性を限りなく追求するといったマランダン本来の身体ボキャブラリーが使い切れていなかったのが残念だった。「リファールへのオマージュ」を意識しすぎたのか、全編を通してユニゾン、腰を落とした動きが多い。6番、7番のステップやニジンスキーの『牧神の午後』を思わせるようなポールドブラが随所に使われているが、ディアギレフ時代の様式を現代に読みかえる作業が不燃焼だ。表面的な振りに固執していて、イカロスの内面的葛藤がみえてこない。シュールなアルフレッド・シュニトケの『ピアノと弦楽のための協奏曲』を選んだ必然性も感じられなかった。
しかし、作品を救っていたのは、オペラや演劇を数多く手がけているアラン・ラガルデの舞台美術と衣装だ。非常にシンプルな舞台に、古典的な衣装。時空を超えたネオクラシックというマランダンの意図を汲んだお膳立てだった。さらに、主演したエトワールのバンジャマン・ペッシュとプレミエ・ダンスーズのノルヴェン・ダニエルも、動きの少ない振付のなかで好演していたといえる。身体の曲線から紡ぎだされる人間の悲しみが、幾重にも重なって印象的だった。
『イカロスの飛翔』 |
『イカロスの飛翔』 |
Serge LIFAR : MIRAGES
演技力が際立ったリファール『ミラージュ』
1944年にオペラ座でゲネプロが行われていながら、初日はパリ戦線解放で停電となって見送られ、3年後、終戦記念として初公開された曰くつき作品だ。内面に迫り、ドラマ性を重視したバレエとして人気を集め、1954年には100回、1990年には200回公演を記録した。
月(エミリー・コゼット)の宮殿に、影(マリ=アニエス・ジロー)とともに若い男(ニコラ・ル・リッシュ)が迷い込む。月にそそのかされて「夢」「富」「愛」の扉を開けてゆくが、すべては幻想でしかないことを悟り、影と連れ立って宮殿を去る。が、まばゆい陽の光のもとでは影も消えうせ、孤独という現実に立ち返る――。
月と影という魅惑、その狭間で揺れる男心がキーワードとなってメタフォリック(比ゆ的)なテーマを提示するが、なかでも、影を演じたジローの存在感が大きかった。月に嫉妬して怒り、若い男にひたむきな愛情を注ぐ。セカンドキャストのアニエス・ルテステュもそうだが、長身ダンサーならではのダイナミックな表現力が女の二面性をドラマティックに演出する。初演時のキャスティングでは、ここまで影の印象は強くなかったのかもしれない。
演奏はオペラ座管、指揮ヴェロ・パーン。
『ミラージュ』 |
『ミラージュ』 |
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