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関口 紘一 
[2014.05. 2]

東京バレエ団創立50周年記念のクライマックスは「祝祭ガラ」とベートーヴェン『第九交響曲』

創立50周年を迎えた東京バレエ団の記念公演のシリーズが、活発に展開されている。昨年12月14日、15日の『ザ・カブキ』(ベジャール振付、黛敏郎音楽)公演を皮切りに、東京バレエ団創立50周年記念プロジェクトは始まった。その後、ギリシャへの海外公演などの後、ジョン・ノイマイヤー振付の『ロミオとジュリエット』(プロコフィエフ音楽)を、日本のバレエ団として初めて上演し、大いに注目を集めた。
また、3月23日には東京バレエ団代表・佐々木忠次氏が、長年にわたる芸術を通じた日仏文化交流への功績が評価され、フランス政府より国家功労勲章グラントフィシエが授与される、という嬉しいニュースも入った。そして東京バレエ団の海外公演に心血を注いできた佐々木氏の努力が実り、27回目となる海外公演がヨーロッパに向けて5月20日には出発する予定だ。

140502tokyoballet_09.jpg photo : Kiyonori Hasegawa

8月には、50周年記念公演もクライマックスとなる「創立50周年祝祭ガラ」が上演されるが、その演目とキャストも発表されている。
上演される演目は『ペトルーシュカ』(フォーキン振付、ストラヴィンスキー音楽)『ラ・バヤデール』影の王国(マカロワ振付、ミンクス音楽)『スプリング・アンド・フォール』(ノイマイヤー振付、ドヴォルザーク音楽)『オネーギン』第3幕パ・ド・ドゥ(クランコ振付、チャイコフスキー音楽)『ボレロ』(ベジャール振付、ラヴェル音楽)である。
ゲスト出演は東京バレエ団と縁の深い世界のトップダンサー3名参加する。まず、今年11月から東京バレエ団のアーティスティック・アドバイザーに就任が決まったウラジーミル・マラーホフが、ニジンスキーも踊ったペトルーシュカを踊る。バレリーナ役は川島麻実子、ムーア人役は木村和夫が踊る。オペラ座のアデュー公演でもこの作品を選んだマニュエル・ルグリが、『オネーギン』の極付のパ・ド・ドゥを吉岡美佳と踊る。シルヴィ・ギエムは東京バレエ団とともに、世界中の人たちの魂を揺さぶった20世紀を代表する記念碑的傑作『ボレロ』。そしてまた、『ラ・バヤデール』影の王国(上野水香、柄本弾)では古典的な、『スプリング・アンド・フォール』では清新な現代的なアンサンブルを東京バレエ団が踊る、というプログラム構成となっている。

140502tokyoballet_06.jpg photo : Kiyonori Hasegawa 140502tokyoballet_07.jpg photo : Kiyonori Hasegawa
140502tokyoballet_08.jpg photo : Kiyonori Hasegawa 140502tokyoballet_10.jpg photo : Kiyonori Hasegawa

さらにもうひとつのクライマックスを飾る公演がある。11月に予定されている東京バレエ団がモーリス・ベジャール・バレエ団と共同制作する、べジャール振付の大作ベートーヴェン『第九交響曲』だ。ズービン・メータ指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏、独唱、合唱とともに踊られる。2010年には「奇跡の響演」として、メータ指揮イスラエル・フィルと東京バレエ団、モーリス・ベジャール・バレエ団の共同プロジェクトとして『春の祭典』公演が、既に実現しているが、「第九」となると規模が異なる。ダンサー、オーケストラ奏者、歌手、合唱団の総計は350名にもおよぶ、一大スペクタクルである。

140502tokyoballet_04.jpg photo : Shinji Hosono

ベートーヴェン『第九交響曲』の振付指導は、ベジャール・バレエ団芸術監督ジル・ロマンと、20世紀バレエ団で踊り、指導者としても活躍したピョートル・ナルデリが行っている。4月11日には一ヶ月以上におよんだリハーサルをまとめた通し稽古が公開された。当初は第1楽章は東京バレエ団、第2、第3楽章はベジャール・バレエ団、第4楽章は両カンパニー合同で踊ることになっていたが、おそらく、すべての楽章を通して両方のカンパニーの共演になる予定。この日は東京バレエ団ダンサーだけで行う通し稽古。指導にあたっていたナルデリは、当意即妙、カタコトの日本語を交え、ユーモアたっぷり。稽古場にはあちこちで笑顔が見られ、じつに雰囲気の良いリハーサルだった。
『第九交響曲』は、1964年にベルギーの王立サーカス劇場で初演され、パリのパレ・デ・スポールあるいはメキシコ・オリンピック・スタジアムなどの大会場で上演されてきたが,あまりに規模が大きく再演されることが少なくなり、振付も失われてしまったのではないか,と懸念されていた。だが、1996年パリ・オペラ座バレエ団がリヴァイヴァル上演に成功した。その際に尽力したのがピョートル・ナルデリである。
ベジャールは『第九交響曲』は、楽曲に寄り添ったバレエというより、「むしろ人類全体の共有物である音楽作品に対して、人間的により深く関わっているというべき」・・・「これは根元的な意味での、<表現>なのである」と語っている。
大震災を始めとする大きなの受難を受け、しかし、今、復興しようと努力する日本。そうした中で、バレエを通して根元的な表現を創ろうとする試みは、ぜひとも成功してもらいたいと思う。
東京バレエ団創立50周年記念公演はその後も続き、9月は『ドン・キホーテ』、12月には『くるみ割り人形』、2015年3月には『ジゼル』が予定されている。
1964年、東京オリンピックが開催された年に創設されたチャイコフスキー記念東京バレエ団は、ベジャール、ノイマイヤーをはじめキリアン、ワシーリエフなど優れた振付家とコラボレーションを展開して、多くのレパートリーを形成してきた。それはまた、20世紀のバレエの歴史ともリンクする面を持っている。創立50周年の記念公演を観ることは、そうしたストーリーの一部にも触れることができるのである。

Bejart-Photo_F.Paolini.jpg photo : F. Paolini 140502tokyoballet_05.jpg photo : Shinji Hosono
140502tokyoballet_02.jpg photo : Helikon 140502tokyoballet_03.jpg photo : Kiyonori Hasegawa