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[2008.07.10]

H・アール・カオスが古典文学『神曲』に挑む、ダンスオペラのリハーサル


H・アール・カオスが古典文学『神曲』に挑む、ダンスオペラのリハーサル

  愛知芸術文化センターが取り組んできた<ダンスオペラ・シリーズ>の第5作目は、H・アール・カオスの大島早紀子の構成・演出・振付による『神曲』。
大島の指揮の下、白河直子をはじめとするカオスのダンサー、舞踏家の和栗由紀夫、コンテンポラリー・ダンサーの辻本知彦、ブレイクダンサーの群青、さらにソプラノの佐々木典子が新宿の花伝舎の一室で一堂に会し、最終段階の熱いリハーサルが行われている。
まず、白河直子のインスピレーション溢れる身体が、繊細なラインを描いている。すぐにそこが舞台の中心と分かる。スリムになっていっそう鋭さが増した辻 本知彦とスピード感が際立つ群青が、豹とチータのように素早い動きでからむ。和栗由紀夫の地獄の底を垣間見せる存在感と佐々木典子の天使の歌声。そして鍛 えられた5人のカオスの女性ダンサーたちが緊張感を漲れせて地を這う・・・・じつはこれが本番では宙吊りとなって、H・アール・カオスならではの劇的体験 へと観客のこころを浮揚させ、拉致する。
役者が揃って、さすがにリハーサルとは思えないほどの迫真力に、回りに控えるスタッフの表情も紅潮して見える。

『神曲』といえば、14世紀イタリアの詩人ダンテが、古代ローマの詩人ウェルギリウスに導かれて地獄、煉獄を、永遠の淑女ベアトリーチェに導かれて天国を遍歴する長編叙事詩。魂と宇宙の根源的な対話の中に、天国の至福に至る愛を啓示しようと試みた書である。
「三位一体」を作品全体で表しているともいわれ、構成の美しさと地獄・煉獄・天国の彼岸世界を精緻な想像力で描いている。古典文学の名作として、ミケランジェロやボッティチェッリ、チャイコフスキー、ゲーテなどや永井豪、車田正美にまで大きな影響を与えている。
大島は、今日の<身体性>を解明し、「身体こそが、神殿である」という信念の基に、天国の至福の啓示を試みる。コンテンポラリー・ダンスによる、壮大なあるいはひとつの極点とも言えるチャレンジである。
音楽は笠松泰洋が担当し、フランツ・リストの『ダンテ交響曲』ほかを使用し、名古屋少年少女合唱団が参加する。佐々木典子が歌う歌曲はラテン語。

 川口節子の構成・演出・振付によるモダンバレエの新作『イエルマ』が同時上演される。ロルカの戯曲を『レ・シルフィード』の音楽で構成するもので、小出領子、後藤晴雄、米沢唯など愛知県出身のダンサーが出演する。
(2008年8月2日、愛知県芸術劇場大ホール)

(関口紘一)