インタビュー&レポート

レポート: 最新の記事

レポート: 月別アーカイブ

[2009.03. 2]

勅使河原三郎「ダブル・サイレンスー沈黙の分身」稽古場レポート

 3月21日からBunkamuraシアターコクーンで勅使河原三郎新作の「ダブル・サイレンスー沈黙の分身」」が公演されます。
Bunkamura20周年記念特別企画のこの公演のタイトルが示すとおりテーマは「沈黙」。チラシには「沈黙は身体によって作られる」という一文もあり ます。ダンスと沈黙。一番遠くにあるように感じるこのふたつが、一体どのように舞台で表現されるのでしょうか?
今回はこの公演の稽古場を取材して参りました。
  稽古場に早めに入れていただくと、グレーのリノリウムの上で8人のダンサーが縦横無尽に動き回っていました。階上から取材させていただいたためできた死角 に勅使河原さんがいらっしゃるようで、短く声がかかると動きが変わったり、人数が減ったり、あちこちで印象的な動きのモチーフが飛び出したりしています。

時間になるとこの公開稽古の目的や、意味、現在の状況について勅使河原さんから説明があり、氏が「希望と挑戦の余白」と称した稽古が始まりました。
後の質疑応答でも質問のあがった不思議な音と、行き交うダンサーと不思議なモチーフの踊り。時折勅使河原さんの指示が飛び、ダンサーが動きはじめたり、音 が消えたりと調整をくりかえし、最後は勅使河原さんと佐東さんがシンクロして30分の稽古があっという間に終了しました。

公開稽古後、勅使河原さんとKARASダンサーの佐東利穂子さんが質問に答えて下さいました。

「若いダンサーと一緒に舞台を創られるとのことですが、おふたりが触発されるということはあるのでしょうか?」

勅使河原 もちろんあります。彼らのキャリアは様々で、ダンスの経験のない人もいるのですが、僕がリハーサルも含めて 密に何年か(一緒に)やっていますので、そのキャリアを飛び越えて彼ら自身の独自のものができていると思うんですね。そういう意味では、彼らの持ってる直 感的なものから、人間同士刺激し合うということはあります。それから僕が教えることももちろんたくさんあるんですが、いつも言っているのはどれだけ実践を 持って稽古できるかということで、そういう意味で発見は日々あります。

佐東 若い彼らというだけではなくて、新しい仲間として毎日刺激を受けています。稽古への臨み方とか、素直にとか、根性とか(笑)、前向きにやるとか。彼らがいるから自分もここで終わっちゃいけないというのもすごくあります。

勅使河原 目的というのはもちろん作品を作ること、公演させていただくということなんですけど、誰かの後追いのような ことはしたくないし、いままでもしたことがないと思っています。今回のこの作品がおおげさではなく海外でも存在を問えるような、将来性を含めての問いかけ と具体的な成果として発表できるまで深めたいと思っています。




「テーマとなる「沈黙」どのように表現されるのでしょうか?」

勅使河原
 もちろん僕が導くものですから、僕が考えている演出の内容に沿う訳ですが、各個人個人の身体はレベルアップしなくてはいけないとは考えております。それは僕自身もそうなんですね。
よく言うのは「持続力」と「タイミングを逃さない」。
瞬間瞬間を逃さないということ、そしてそれはどこまでもいつまでも続くんだということ。
このふたつのテーマは芸術、創作においてもっとも大事なことだと思っています。
その中で独自性、オリジナリティは自ずと生まれるだろうと。
個性を表せなんてことは逆に言いません。なければおかしいものですし。
テーマ、公演に対して何が必要かということを日々探っていくということです。

「佐東さんは指導する立場に近いと思うのですが、その中で今回のテーマについて発見されることなどありますか?

佐東 何か感じることがあるとすればそれは身体からですよね。毎日毎日、毎秒毎秒が知らないことの発見です。その中でどこまでいくのかというのは、まだわからないですね。

勅使河原 わからないけれども、それはいいかげんになんとかなるでしょうということではなくて。作品を作るというのはある意味予兆というか「こうじゃないだろうか」「これだな」ということを空中に浮いているような状態で設定するんです。タイトルをつけるというのもそうですし。
ダンスの場合では身体が動けばいいという訳でも、配置すればいいという訳でもない、意味が伝達すればそれがいいという訳でもないーそれだったら物を書いてパンフレットだけで済ませるかもしれないし。
そうではなくて現場で何が起こるかということ。
身体っていうのは、今佐東の言った通りある意味不可思議な物ですし、挑戦し続けるというのが、ちょうど当日ーその前にーぴたっと一致するように振付家、演出家として照準をあわせているところです。

「音はどこから作られて、どのように身体か受け止めるのでしょうか?」

勅使河原
 音はー
メインになる音は今日もライブで出していた音があるんです。
音の専門家がスタッフにいらして、昔からある音響機材を使います。
それは音楽的な機械ではなくて、周波数を調整する機械です。ですから純粋な「音」です。
周波数の変化だけをとった音をメインに使いたいと思っています。
高音域は年をとってきた人は高い音が聞こえなくなるのが早いんです。
こうもりとかは超音波を反射させて位置確認をしているとか言いますけど。
高音に対してはとても受け取る側の聴力の差があるんですが、低音に関しては耳だけでなく、耳よりもむしろ身体全体で空気の圧力や振動が音として受け取られるんです。聴力を超えた音というかね。
そういうこともひとつの沈黙を前提とした上での音的装置として考えています。
空間構成の上では、装置のひとつと言っていいんじゃないかと思っています。

このダンサーを選んだ決め手はなんですか?という問いに
「この作品に世界中で最も適した人たちだから」とお答え下さった勅使河原さん。
一番下は中学2年生という若いダンサー達と創り上げる作品に注目です。

Bunkamura20周年記念特別企画
勅使川原三郎「ダブル・サイレンス ―沈黙の分身」 >>>発売中

●3/21(土)~29(日)
●Bunkamuraシアターコクーン
●振付・美術・照明・衣裳=勅使川原三郎
●出演=勅使川原三郎、佐東利穂子 ほかKARASダンサー
●S席7,000円/A席6,000円/コクーンシート4,000円
●開演時間=21・26・27日19:00、22・28・29日15:00、23~25日休演
●お問い合せ=Bunkamura 03-3477-3244(10:00~19:00)
http://www.bunkamura.co.jp