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関口 紘一
[2016.10.31]

本番直前取材! 伊藤範子振付、酒井はな他出演『ホフマンの恋』バレエ協会クレアシオン公演

今週にもワガノワ国際バレエコンクールで日本人の女性と男性が優秀な成績となり表彰されるなど、日本人ダンサーのレベルは格段の進歩を見せている。しかし、舞踊創造の基幹となる振付家に目を転じると、新進の人材が次々と現れている、とはとても言えないだろう。そうした中でも伊藤範子は数少ない女性振付家として、2013年の『道化師〜パリアッチ〜』、14年『ホフマンの恋』、今年の『Ballet Princessーバレエの世界のお姫様たち』、そして先月の谷桃子追悼公演の『追憶』と創作バレエ作品をなかなか良いペースで発表し続けてきている。そして11月には文化庁海外特別研修により、ミラノ・スカラ座に行くことが決まった。

161024_3.jpg 酒井はな、浅田良和、堀登

その伊藤範子が世田谷クラシックバレエ連盟に振付けた『ホフマンの恋』が、会場を変え新なキャストを加え、ヴァージョンアップして再演される、と聞いて取材した。
ジュリエッタに酒井はなを配し、オランピアに宮嵜万央里(井上バレエ団)、アントニアに佐藤麻利香(谷桃子バレエ団)、ニクラウスに堀沢悠子、リンドルフに堀登、ホフマンは初演と同じ浅田良和というキャストだった。ペアとしてはオランピアの宮嵜万央里、ジュリエッタの酒井はながそれぞれ浅田良和と初めてパートナーを組むという。
新宿の花伝舎スタジオで熱のこもったリハーサルの真っ最中に伺い、オランピアからアントニア、ジュリエッタまでのホフマンの恋の主要シーンのリハーサルを見ることができた。
ホフマンが悪魔から買った眼鏡で人形のオランピアに恋するが失敗するシーン。人形振りが多く使われ、宮嵜のくっきりとした明快な表現が良く映える。続いて美声の天才歌手だが病弱のアントニアとの恋は、医者の姿をした悪魔の賞賛の声に誘われたアントニアの儚い死で消える。佐藤のほっそりとした華奢な身体が役によく似合っていた。そして酒井はなのジュリエッタ。バーで身体をほぐしている時から既に、酒井の存在感が感じられたが、スタジオの中央に立つだけで、全員の視線を自然に集中させてしまうところはさすがという他ない。多くの経験を重ねてきたホフマンだったが、酒井のジュリエッタにたちまち魅了される。しかし結局、リンドルフの思惑どうりに冷たく突き放される。

161024_1.jpg 宮嵜万央里、浅田良和 161024_2.jpg 佐藤麻利香

それぞれの動きの流れの中でつい振付をなぞってしまい、登場人物の気持ちが入っていない動きがあると、たちまち振付の伊藤から指摘があり、細かく丁寧なアドヴァイスが与えられていた。また、ソリストだけでなく、仮面を着けた艶やかな女性たちのアンサンブルなどにも様々な工夫が凝らされていた。初演よりアンサンブルの人数も増えて、振付自体はあまり変わっていないが、細部をより厳密により丁寧に作られた新しいヴァージョンとなっている。
オランピアの可愛らしさ、アントニアの従順、ジュリエッタの魅惑、すべてを合わせもつ女性が男性の理想となる、という考えが下敷きとなった恋の悲劇で、ダンサーのそれぞれの特徴をうまく引き出して踊らせることが、大きなポイントとなる。これからさらに、本番の劇空間をかなり厳密に意識して、演出・振付の伊藤と出演ダンサーたちが表現に磨きをかけていくから、本番の舞台を大いに期待したい。音楽は、ほとんどをオッフェンバックの曲から再構成し、アントニアとホフマンのパ・ド・ドゥのシーンのみチャイコフスキーの曲を使用している。

161024_4.jpg 酒井はな、浅田良和

平成28年度バレエクレアシオン
日 時:平成28年11月5日(土)
開 場15:30 開演16:00
会 場:メルパルクホール

中弥智博振付「Synapse」
下村由理恵振付「氷の精霊」
伊藤範子振付「ホフマンの恋」

http://www.j-b-a.or.jp/stages/平成28年度バレエクレアシオン/


(公社)日本バレエ協会 (TEL) 03-5437-0372 (FAX) 03-5437-8464
http://www.j-b-a.or.jp/stages/ticket_information/