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針山 真実
[2014.07.22]

インターナショナル・バレエ・コンペティション・ジャクソン 2014に関わって感じたこと

1979年に第1回目が開催され、1982年以後はオリンピック開催年と同年に開かれていて、バレエのオリンピックとも呼ばれる『インターナショナル・バレエ・コンペティション・ジャクソン』は、モスクワ国際バレエコンクール、ヴァルナ国際バレエコンクールと並び、世界三大国際バレエコンクールの一つとされてます。
ジャクソン・コンクールでの過去の受賞者には輝かしいダンサーたちが名を連ねており、1986年にはニーナ・アナニアシヴィリがグランプリ、1990年にホセ・マニュエル・カレーニョがグランプリ、同年のジュニアの部で岩田守弘が銅賞を受賞、1994年にはヨハン・コボーがグランプリ、そして佐々木大が金賞を受賞。
2006年にボストン・バレエで活躍している倉永美佐、アメリカン・バレエ・シアターのプリンシパル、ダニール・シムキンが金賞を受賞するなど、近年では日本人の活躍も目立ちます。
そして今回、2014年にはシニアの部・女子で加瀬栞が金賞、宮崎たま子が銀賞を受賞し、再び日本人が国際コンクールで快挙を成し遂げました。金賞受賞を機に、加瀬栞は、所属するイングリッシュ・ナショナル・バレエからファースト・ソリストへの昇格が発表され、7月23日から27日までロンドン・コロセウム劇場で上演される『コッペリア』で、主役デビューを果たすことが決まりました。おめでとうございます。

1407jackson05.jpg ワークショップの教師陣とピアニスト

受賞者にはメダルと賞金が贈られます。またこのコンクールではバレエ団の団員契約や、研修生のオファーを貰えるチャンスがあることでも知られており、参加をきっかけに就職先が決まったダンサーは数多くいます。
今回私はワークショップ・ピアニストとしてコンクールに招待されました。コンクール開催中には、一般の子供たちが受けられるワークショップも行われます。このワークショップは2週間にわたって開催され、全米各地から教師、ピアニストが集まり、バレエ、ジャズ、コンテンポラリー、ヴァリエーション、パ・ド・ドゥなどのクラスが行われます。ワークショップに参加した生徒たちは毎日コンクールやその他のイベントを見学することが出来、生徒たちはレベルの高いコンクール出場者の演技にいつも興奮しています。
ジャクソン・コンクールに参加するには、書類とビデオ審査を通過して選ばれなければなりません。今回は99名のダンサーが全国よりジャクソンに集まり3週間を過ごしました。
ここで私が見たこのコンクールの素晴らしい点をご紹介したいと思います。

まず出場するダンサーの滞在費、レッスン費、食費は全てコンクール事務局によって賄われれます。
ダンサーはコンクール事務局が用意した寮に泊まり、寮にはいつも二人のスタッフが常在してダンサーをサポートし、安全を守っています。食事は三食バイキング形式で、カフェテリアに行けばいつでも食べられます。さらに空港送迎、寮とレッスンスタジオとシアターの交通も全てコンクールが用意しているシャトルに乗ることが出来ます。
知らない街に降り立ったダンサーたちが何処に行けばいいのか、どうしたらいいのかと困ることが無いようにコンクール事務局が細かく配慮してくれています。

1407jackson01.jpg リハーサルスタジオ

バレエクラスは毎日2回、9時30分と午後1時から行われ、好きな時に受けることが出来ます。審査員がレッスンを担当することもありました。
さらに毎日一人一時間のリハーサル時間が割り当てられ、必ず一時間のリハーサル室を無料で与えてもらえます。世界のコンクールに挑戦したことがあれば、開催地に到着してからリハーサルが出来るのかどうかを不安に思った人は多いのではないでしょうか。また、コンクールの実際のステージで場当たりやリハーサルが出来るのか、もしかしたらぶっつけ本番かもしれないと不安に思うこともあるでしょう。
ジャクソン・コンクールでは舞台での場当たりとリハーサルが、一人15分ずつきっちりとスケジュールされていました。

第1ラウンドは十数名ずつの7つのグループに分けて、4日間に分けて審査が行われました。第1ラウンドでは古典バレエの課題曲から選んで踊ります。
第1ラウンドと通過したダンサーは第2ラウンドへ進み、コンクール側が用意したコンテンポラリー・ダンスを披露します。そしてファイナルラウンドでは古典バレエと、自身が用意したコンテンポラリー・ダンスを披露します。

第2ラウンドへ進めなかったダンサーは、コンクールの計らいで、ファイナルラウンド用のコンテンポラリー・ダンスを披露する特別なパフォーマンスが設けられます。第1ラウンドで落ちてしまっても踊るチャンスがあり、数か月の練習を積んで来たダンサーたちにとって、とても良い機会だと思いました。
また、ファイナルラウンドへ進めなかったダンサー全員が踊る、特別な作品がファイナルのガラのために用意されます。この作品のために振付家が招かれ、皆でリハーサルに励み、最後まで舞台で踊る機会が与えられていることは素晴しいと感じました。

1407jackson03.jpg コンクール参加者クラス

このコンクールは4年に一度ということ、そして開催地がアメリカ南部のミシシッピ州のジャクソンという田舎町であることから、町の人々の団結心が強く、ダンサーたちの滞在をゲストとして扱い、町全体で協力してサポートしているのです。
老朽化が進んだ劇場は一時は取り壊しが検討されたそうですが、これまでコンクールに携わってきた事務局メンバーたちが、今後もコンクールをこの場所で開催したいと強く願い、何とかこのシアターを残そうと努力を尽くしました。そして今回のコンクールに間に合うように改装を行うことができたそうです。出場ダンサーの一人一人にホストファミリーが付いて、とても親切に接していました。ホストファミリーはボランティアメンバーで、ダンサーにブランケットや贈り物を届けくれたり、困ったことが無いか細かく気にかけてくれていました。ボランティアと事務局の多くの人々が、4年間かけてこのコンクールを準備し、開催を待ちわび、コンクール開催中は自らの仕事を休んでコンクールのために徹して働いているのです。
これだけ温かく出場者たちを迎え入れ、サポートの行き届いたコンクールは見たことが無いと、私は思いました。
3週間という長い期間のようですが、出場したダンサーたち、審査員や教師たちは町中の温かい歓迎に感激し、共にレッスンを受けたダンサーたちは互いに刺激を受けあい、素晴らしい経験が出来たことを喜び、また4年後にジャクソンに来たい!という声が多く聞かれました。この一言に、コンクールに尽くした町の人々も感無量の喜びを現していました。

最終日のファイナル・ガラ・パフォーマンスの後には、参加者を称える盛大なパーティが開かれ、深夜まで大いに盛り上がり、記念写真を撮ったりして別れを惜しむ人々の姿が見られました。
次回のバレエのオリンピック、ジャクソン・コンクールは2018年。
今回悔しい思いをしたダンサーは、次回までにレベルアップを図って再挑戦することを誓いあっていました。また今回のレポートを読んで挑戦してみたいと思う人は、ぜひ、4年後の出場を目指して頑張って欲しいと思いました。

1407jackson02.jpg 会場外 1407jackson04.jpg コンクール審査員、参加者、
コーチ全員のサイン入りポスター
1407jackson06.jpg 金賞受賞の加瀬栞さんと