関口 紘一
[2011.05.18]

宝塚歌劇団月組公演
ミュージカル『バラの国の王子』の魅力的な野獣と聡明な美女

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フランスの作家、ボーモン夫人の書いた童話『美女と野獣』は、ディズニーのアニメーション映画や、ジャン・マレーとジョゼット・デーが主演し、ジャン・コクトーが監督した映画(1946年)などでよく知られている。
宝塚では1955年に高崎邦祐により月組が上演している。宝塚少女歌劇の創設者小林一三翁は、この『美女と野獣』を観て、「…童話ものとしてはおもしろいと思う。既にしばしば映画にもなっているそうだから、お客様にもなじみのあることとて再演の値打ちがあると思う。」とコメントしている。そしてこの昭和30年には、アーニー・パイル劇場が返還され、東京宝塚劇場が再出発している。

月組公演『バラの国の王子〜ボーモン夫人「美女と野獣」より〜』は、脚本・演出は木村信司、振付は竹邑類、麻咲梨乃。配役は野獣(王子)が霧矢大夢、ベル(商人の末娘)は蒼乃夕妃。大劇場公演の初日は3月11日だったので、開演中に揺れたということもあり、地震などが起きた際の入念な注意が客席に行われた。
まずは、バラを愛する王子がお妃様の妹の謀により家臣とともに野獣に変えられるが、外見ではなくほんとうの心を見抜く女性が現れる時、その魔法が解ける、という物語が歌を中心に語られた。
それから何年か歳月が過ぎ、一人の商人がバラの花が咲き乱れる野獣の館に迷い込んで美しい末娘ベルのために、一輪のバラを手折ってしまう。すると恐ろしい野獣が現れて、バラの代わりに命を差し出すか、3人の娘のうちの一人を身代わりにするか、と迫られる。帰宅した商人の話を聞いた末娘ベルだけは、父のために野獣の館へと向かう・・・。
そして、恐ろしい姿の野獣(衣裳8キロ、頭の冠りもの2キロで靴も重い)は純粋な優しい心の持ち主のベルに深い愛情を抱く。しかし、その愛の前には様々な障害があり、さらに恐ろしい外見のために心が屈折して率直に愛を告白できない。結局、愛された聡明なベルは、野獣のほんとうの心に触れることができる・・・。というドラマだった。

野獣に扮した霧矢が愛を伝えられないもどかしい気持ちを巧く表して好演。素敵な野獣だった。バッファローとサイがミックスされたイメージという、ものものしい冠りものと衣裳を着けた演技だが、かえって野獣のダイレクトな気持ちが客席に伝わってきたのは興味深かった。ベルの蒼乃は優しく一途な気持ちと、それをどんなに厳しい状況でも決して失わない聡明さを見せた。獣のマスクをつけた家臣たちのグループの動きはなかなか機敏で、魔法の呪縛がどうしても解けない哀しい雰囲気も感じられた。「虎」の明日海りおの活躍が印象に残った。
少々、ドラマティックなシーンと物語を説明するシーンが分かれてしまった気がしないでもないが、愛の様々な局面を見ることができて心に残る楽しい舞台だった。

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宝塚歌劇月組公演
ミュージカル『バラの国の王子』〜ボーモン夫人作「美女と野獣」より〜
グラン・ファンタジー『ONE』-私が愛したものは・・・


●「バラの国の王子」脚本・演出=木村信司
●「ONE」作・演出=草野旦
●出演=霧矢大夢/蒼乃夕妃、ほか

<東京>
●4/29(金・祝)~5/29(日)
●東京宝塚劇場
●SS席11,000円/S席8,500円/A席5,500円/B席3,500円
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/219/index.shtml