[2005.02. 2]

劇団四季『エビータ』

ある日の午後。休日の昼間とういこともあって、地下鉄の車内はガランとしていた。ボケッと目的地までの時間をやり過ごしていると、何やら「鼻歌」が聞こえてくる。何となく気になり、「鼻歌」の主を探す。辺りの様子をうかがってみる。向いに座っている初老の紳士が、ステカセを右手、歌詞カードを左手に歌っていた。これから、カラオケ教室でも行くんだろうか? ものすごく上機嫌&気持ち良さげ。私は「鼻歌」を子守唄代わりに静かに目を閉じた。

1998年5月以来の公演となる劇団四季「エビータ」。今公演では演出が一新され、前公演より完成度の高い「完全版」だということ。私自身の「エビータ」観劇前認識といえば(不勉強で申し訳ございません…)、「エビータ」ってあれかな? 「ルン、ルルー アージェンチーナー ルル、トゥルーン レフゥッユー」ってあれかな? もしもその曲が劇中に使われてたら、昔から気になっていた曲(「曲名は知らないけど、ちゃんと聞きたいベスト10」)だし、「運命の出逢い」うーん、きたな。なんて、頼り無い予備知識と自分作詞作曲のヘンテコメロディを頭の中でくり返しつ、期待値120%で浜松町駅下車徒歩数分の四季劇場「秋」へ向かった。


公演が始まり、「Don't Cry For Me Argentina(アルゼンチンよ泣かないで)」。予感は確信へと変わる。あぁ、あの美しいメロディ。喜び。涙。感動。この時点でカウンターパンチ炸裂。でも、そのまま倒れないように、持ちこたえねば。先は長い。そんな、パンチドランカーと化した私をよそに物語は進む。エバの様々な感情表現を美しいメロディで彩り、人間の欲望や葛藤、優雅さに魅了され、民衆の力・激しく脈打つアルゼンチンの鼓動に胸が高鳴る。歌、ダンス、舞台装置、客席、劇場全体で物語が進められていくという「一体感」。すっかり私自身も「エビータ」に溶け込んでいた。一喜一憂をくり返すうち、あっという間に「エバ」の生涯は幕を閉じた。

浜松町駅から帰る電車の中。そっと、目を閉じて今さっきまで目の前で繰り広げられていた出来事を思い起こしていた。あのすばらしいメロディは、 まだ私の中で2重にも3重にも膨れ上がっていく。ありがとう「エビータ」。と、「鼻歌」を人目も気にせず歌った。いつかの初老の紳士のように。
「さようなら アルゼンチーナ お別れの時がきたの…」


四季劇場[秋](東京・浜松町)