関口 紘一
[2016.08.27]

今年最大の話題作、牧阿佐美バレヱ団60周年記念メイン・プログラム『飛鳥』世界初演のゲネプロを見る!

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牧阿佐美バレヱ団60周年記念公演のメイン演目にして、2016年日本バレエ界の最大の話題作である『飛鳥』は、8月27日いよいよ世界初演の幕を開ける。その前夜、ゲネプロを見せてもらうことができた。
すでに良く知られているように『飛鳥』は、1957年に牧阿佐美の母の橘秋子が台本から書き起こして振付けた『飛鳥物語』を、牧阿佐美が改訂演出・振付けたもの。今回の新製作にあたり、主役にボリショイ・バレエ出身の舞姫、スヴェトラーナ・ルンキナとボリショイ・バレエのプリンシパル、ルスラン・スクヴォルツォフを招いた。もう一人の主役は菊地研だが、日本の古代を描いた創作バレエの主役にロシア人ダンサーを招く、ということも大胆な試みだ。
そして音楽がまた、素晴らしい。日本のメロディーを底流に流しつつ力強くシンフォニックで、オペラ的な音楽世界を現出している。終始、単純な劇伴に陥ることがない。バレエの身体表現と輻輳し、登場人物の内面を音楽が良く語っている。
作曲家の片岡良和が未だ20代の時に作曲した(1962年)、という。片岡もゲネプロの会場に姿を見せており、作曲した頃は、ハチャトリアンに刺激を受けていた、と懐かしそうに語った。牧阿佐美も「音楽が良かったから、まずこの作品を手がけようと思った」と話してくれた。(指揮・デヴィッド・ガルフォース)
さらに絹谷幸二の絢爛の絵画を映像演出により、3次元的にアーティスティックな演出を施し、実に斬新かつ効果的に見せている。巨大な竜や古代の寺院や仏像などの具象的な迫力のある絵と、それらをモチィーフにした抽象的な背景を自在に展開して効果を上げている。それらの映像を背景の平面に映すだけではなく、左右に屏風状にパネルを立てて立体感を出し、日本的な感覚をも生かしている。また動きや衣装にも様々な見るべき工夫が試みられている。
観客に、橘秋子・牧阿佐美の二世代に渡って脈々と生きる「世界に通用する日本のバレエを生み出す」というスピリットが、ダイレクトに伝わってくる。そして、日本人であることを基本としてバレエを創ること、それはわれわれの決して避けることのできない命題である、そのことを改めて強く教えてくれる舞台である。
開幕以前なので物語をお話することはできないが、ルンキナ扮する美しい舞女とその幼なじみのスクヴォルツォフの岩足(いわたり)、芸術を司る竜神を演じる菊地研が織りなす壮大なファンタジーだ。めくるめく華やかな舞踊シーンもふんだんにある。

1608_cast1.jpg スヴェトラーナ・ルンキナ
(カナダ国立バレエ団 プリンシパル)
1608_cast2.jpg ルスラン・スクヴォルツォフ
(ボリショイバレエ団 プリンシパル)
1608_cast3.jpg 菊地 研
(牧阿佐美バレヱ団)