関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
小島章司フラメンコ2005『鳥の歌 A PAU CASALS』
小島章司の今回の公演は、偉大な音楽家パウ・カザルスへのオマージュだった。 カザルスはスペイン、カタルーニヤ地方の出身の天才チェロ奏者であり、内線で亡命し、終生世界平和実現のために尽力した人物である。 「鳥の歌」はカタル−ニヤ地方のクリスマスの民謡で、晩年のカザルスはこの曲を愛し、しばしばアンコールなどでも演奏したという。
小島は最近は、「芸術においても政治においても一切の妥協を許さない、すぐれて一貫した思想の持ち主」で「己が信じるただ一つのものを通して平和を訴える、 そんなカザルスの精神に」通じるものを感じるようになった、と語る。揺るぎない厳格な精神に、フラメンコを追究してきたアーティストとして、共感を覚えるのであろう。
ゲストはカタル−ニヤ出身のミゲル・ポべーダ(カンテ)で、やはりバルセロナ生れの音楽監督はチクエロ(ギター)であった。
ステージは5つのパートに分けて、全10曲が唄われ、踊られ、奏でられた。ダンスは五曲ですべて小島自身が踊り切った。
前回の小島の公演は、小松原庸子とカンパニー同士の合同公演だったし、その前は上田遥演出で橋本拓也、三木雄馬、伊藤友季子などとの共演だった。 無論、小島が一人で踊り切った訳ではない。今回は観客としても、小島のダンスに集中して観ることができ、見応えがあったと思う。 やはり、私は小島が一人で踊り切ってしまう、そういうフラメンコのエネルギーを直接肌で感じられる舞台が好きなのである。
カーテンコールも派手さはなく、もちろんいつものフラメンコ公演のお決まりのスタイルではあったが、アーティスト同士の信頼感が客席にまで伝わってくるような、素敵な良い雰囲気のものだった。
(12月3日、ル テアトル銀座)
Copyright チャコット株式会社 All Rights Reserved.
当サイトに掲載されている情報の無断転載、無断掲載、無断引用 はお断り致します。