守屋光嗣 text by Koji Moriya
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●23年ぶりのパリ・オペラ座バレエ、ロンドン公演

 パリでのシーズン開幕作品『ル・パルク』を引っさげて、パリ・オペラ座バレエが23年ぶりにロンドンを訪れた。ここで『ル・パルク』の説明を改めてする必要はないであろうから、『ル・パルク』初心者としての感想を少し。(サドラーズ・ウェルズ劇場、10月14日、15日、16日)

 数シーズン前、ロイヤル・バレエがこの『ル・パルク』を上演予定とアナウンスするまで、このバレエも、振付家のプレルジョカージュについても全く知らなかった。その時の案内に掲載されていた舞台写真から真っ先に思ったのは、アラン・レネの『去年、マリエンバートで』だった。以来、想像を膨らませていたのだが、実際に舞台に触れ、ダンサー、振付、音楽、そしてセットから刺激され膨らむイメージは、自分の中の記憶をくすぐられるようで大変面白かった。

『ル・パルク』


『ル・パルク』
 4人の庭師が醸し出す雰囲気からは、全く脈絡なく映画の『未来世紀・ブラジル』を想起した。この庭師の存在は、特に非現実・現実の境界をあらわしているように思えた。同行した、やはり『ル・パルク』初心者の友人から「彼らは庭師?僕は天使だと思ったよ」といわれて、第3場の始まり「ドリーム」の場面で何故主役の女性が彼らを踏み台にして「地上」に降りてくるのか、そして最後のパドドゥがどうして「Abandonment(放棄)」というタイトルなのかが、理解できた気がした。庭師がしているゴーグルが、「Love is Blind(愛は盲目)」というのは深読みのし過ぎだろうか?

 そしてグラン・パ・ド・ドゥ。背景に広がる、まるで嵐の後の空に残る大きな雲、その隙間からさす光のような照明からは、舞台は一転して海辺になったようだった。眼前に静かに広がる主役二人の他に誰も居ない海辺で始まるパ・ド・ドゥ。あれほど官能的なパ・ド・ドゥは、他に幾つもないだろう。


 想像力を駆り立てられ、そこからまた別のイメージが舞台から膨らむ。自分の感性を総動員するようなバレエは久しぶりだった。

 主役は、オレリー・デュポン/ロラン・イレールの組み合わせと、レティシア・ピュジョル/ヤン・ブリダールが2回ずつ。どちらのカップルも熱演だったが、デュポンとイレールのほうから振付自体の「意思」をより鮮明に感じた。また、初日のカーテン・コール時に、プレルジョカージュも舞台に現われ盛大な拍手を浴びていた。

 惜しかったのは、観客の入り。「パリ・オペラ座」だからか、それとも「プレルジョカージュ」だからなのか、はたまた、サドラーズ・ウェルズ劇場の最寄駅「エンジェル」が初日と二日目に閉鎖されてしまったからか、完売には至らなかったようだ。それでも観客の反応は熱く、盛大にブラヴォーが飛んでいた。レヴューなど気にしないで、20年後といわず、すぐにでもロンドンに戻ってきて欲しいものだ。


●ダーシー・バッセル、「プリンシパル・ゲスト・アーティスト」に

 ロイヤル・バレエのシーズン開幕直後、ただ一人のイギリス人女性プリンシパル・ダンサーのダーシー・バッセルが、2005/06シーズンを最後にフルタイムのプリンシパルをやめ、2006/07シーズンからはギエムやカルロス・アコスタと同じ「プリンシパル・ゲスト・アーティスト」として踊りつづけるというニュースが発表された。理由は、家族と過ごす時間を増やすため。

 今後どういう状況になるかは判らないが、「プリンシパル」からイギリス人女性ダンサーが居なくなるのは、矢張り複雑な気分だ。それも、ロイヤル・バレエの、更にイギリス・バレエの顔として活躍してきたバッセルならなおさらだ。

 ただ、全く踊らなくなるわけではないので、来シーズンも年間数回はバッセルの踊りを観ることが出来るだろう。11月22日に一般発売が始まる今シーズンの第3ピリオドの演目では、マクミランの『ロメオとジュリエット』、同じくマクミランの『レクイエム』、そして『ジゼル』に出演予定。

ダーシー・バッセル
「田園の出来事」ナタリア役

●マイヤ・プリセツカヤ80歳記念ガラ

 来年2月12日に、ロイヤル・オペラ・ハウスで、マイヤ・プリセツカヤの80歳記念ガラが催される。出演予定は、ロイヤルから、ダーシー・バッセル、吉田都ほか。ボリショイ・バレエからはガリーナ・ステパネンコ、スヴェトラーナ・ザハロワが、マリンスキー劇場バレエからは、ユリアナ・ロパートキナやファルフ・ルジマトフの名前が挙がっている。詳細は、ロイヤル・オペラ・ハウスのウェブから2月のカレンダーに進むと確認できます。
http://info.royaloperahouse.org/Home/Index.cfm

 

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