中でも鮮明に思い出されるのが、シーズン最後を飾った『田園の出来事』での、クリストファー・サンダーズの演技。主人公のナタリアの心がベリヤエフヘと移った事を知ったときに見せた、恐らくベリヤエフの若さに対しての、凍りつくような嫉妬の炎。その後、ナタリアがベリヤエフを突き放したときには、ほんの一瞬、唇の片方の端を、見えるか見えないかくらい微かに歪めながら酷薄な冷笑を浮かべていた。正直な所、「どうしてそこまで演技するのだろう?」、と思った。
が、バレエが終わって感じたのは、サンダーズが演じたキャラクターの心情、更に他の登場人物達の複雑に絡み合ったそれぞれの想いが、最後に一人、ナタリアに収斂することで、彼女の悲しみはより鋭く描き出されたのではないかと。深読みかもしれないけど、あの冷笑がなかったら、ナタリアの悲しみはこれほどまで心には響いてこなかったのではないかと思えてしまう。
2006年5月15日に、ロイヤル・バレエは創立75周年を迎えます。アナウンスによれば、2005/6、2006/7の2シーズンに渡って特別な催しが計画されているとのこと。詳細を随時こちらでお知らせできればと思っています。 |
『田園の出来事』
シルヴィ・ギエム
ジョナサン・コープ |