●ジョージ・パイパー・ダンシィズ、最新作『ネイキッド Naked』
| バレエ・ボーイズことマイケル・ナン&ウィリアム(ヴィリー)・トレビット率いる、ジョージ・パイパー・ダンシィズ(GPD)初のフルレングス作品『ネイキッド
Naked』がサドラーズウェルズで上演されました。今まではマリファントやフォーサイスなどのコンテンポラリー小品を上演してきたGPDは、昨年7月にはTVシーリーズを通して振付に初挑戦し、その次なる挑戦としてフルレングス作品の発表となりました。踊りを通して物語を伝えることを常としていたバレエダンサー時代から一転して、アブストラクトなコンテンポラリー・バレエ、ダンスを追い求めてきたGPD。古典バレエに戻るのではなく彼らがGPDとして作り上げてきた独自のスタイルで、ナラティブな作品をと言うコンセプトの元、3組の男女間で入り乱れる関係―裏切りと復讐―を描く『ネイキッド』を発表しました。 |
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『ネイキッド』、そのタイトルや公演ポスターからは濃厚な男女関係の描写が予想されましが、実際の舞台は残念ながら何か物足りない印象となってしまいました。それぞれの男女間の関係、3組の人間関係、ストーリー、振付スタイル、コンセプトすべてに言葉を濁したようなどこかしっくりこない印象を覚えました。
マイムやあからさまな感情表現を使って物語を展開することを避け、ピュア・ムーブメントで感情変化や人間関係やドラマを描写しようとしたことは伺えますが、それを可能にするにはあまりにもムーブメントのヴォキャブラリーが乏しいように思えます。シフォンのドレスにハイヒールの3人の女性がフェミニンな雰囲気を醸し出して歩き回る振付、ドリス・デイやパッツィー・クラインなどのオールディーズをバックに、切なさのにじみ出るダンスを踊る点などからはピナ作品のような印象を受け、オリジナリティーを見出すことは出来ませんでした。
しかしマイケルとヴィリーが観客を満足させないまま幕を下ろすわけはありませんでした。クライマックス、カウントダウンするデジタル時計のプロジェクションの前での2人の男(マイケル&ヴィリー)の1人の女をめぐる争い(デュエット)は緊迫感と迫力に溢れ、作品の中で最もドラマティックな瞬間でした。彼らの驚異的なコントロール力は、喧嘩のシーンをスローモーションで見るようなムーブメントを可能にさせ、力強いジャンプやスピード感あるターンからは2人の男の闘争心が見られ、改めてマイケルとヴィリーのダンサーとして実力に興奮を覚えました。
豪華なプロダクションチーム(ボブ・クロウリーの舞台美術、パウル・コンスタブルとマイケル・ハルスの照明、写真家ヒューゴ・グレンディニングによるフィルムプロジェクション)と、GPD初の作品創作ということが必要以上に観る者の期待を高めてしまったために、非常に厳しい新聞批評が目立っています。しかし、マイケルとヴィリーがこれをばねに次回は期待を裏切ることのないものを創り出すに違いないと誰もが信じていることは確実です。
(2005年6月9日、サドラーズウェルズ)
●ネザーランド・ダンス・シアター 1 『ワン・オヴ・ア・カインド』
ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)1が久々のロンドン公演をサドラーズウェルズで行いました。オランダ憲法制定150周年記念に際して、オランダ政府からの創作依頼を受けたイリ・キリアン(当時NDT芸術監督)が振付けた『ワン・オヴ・ア・カインド』。3部構成のアブストラクトな作品は、どこか不気味でうまく言葉には言い表すことの出来ない不思議な雰囲気を醸し出す舞台空間が何よりも印象的でした。
日本人建築家北川原温が手がけた舞台美術は折り紙を思い起こさせるシンプルさにもかかわらず、空間を支配するその迫力は言葉を失うほどに強烈な印象を与えます。1幕から3幕までそれぞれ異なるデザイン(1幕:花道のような稲妻型の白い道と舞台奥の氷山のようなオブジェ、2幕:凧のような物体と空中を浮遊する巨大な円錐、3幕:天に通じるような細く長い階段とのれん状の細かいチェーンのシャワー)には、ダンサーの身体と空間の関係が建築的に計算された精密さが見られます。北川原の美術とミヒャエル・シモンによる照明デザインが創りだす舞台空間はこの世とは思えないほどにミステリアス。その空間に浮かび上がるように存在するダンサーのムーブメントと彼らの身体に張り詰められた緊張感が、自分の身体に突き刺さるような感覚を覚えました。
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霧がたちこめる中、浮遊するようなコントロールから稲妻が走るような強烈なスピードとパワーそして背骨の椎骨一つ一つの動きを強調する繊細さを要求するキリアンのムーブメントを、人間の自然な動作のようにこなすカンパニーダンサーの身体能力とテクニックの高さは圧巻でした。
振付、美術を含む作品構成、ダンサーのムーブメント、すべての点において、ここまで究極に研ぎ澄まされた完成度を持つ作品にはなかなかめぐり合うことは出来ません。「NDT1どうだった?」という質問に対して、「amazing.....(すごかった…)」の一言しか即答としては答えることの出来ない、そんな衝撃的な舞台でした。
(2005年6月14日、サドラーズウェルズ) |
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