船引怜美 Text by Remi Funabiki
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●ノーザン・バレエ・シアター デヴィット・ニクソン振付・演出『ピーターパン』

次々に新しい物語バレエを創作しているノーザン・バレエ・シアター(NBT)が、2004年のクリスマス・シーズンに新作『ピーターパン』を発表。ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場では3月31日〜4月10日のイースター期間に上演されました。

『ピーターパン』と言えば、最も重要なのは空を飛ぶと言うこと。この振付・演出上困難がなかなかバレエ作品として実現されなかった理由かもしれません。NBT芸術監督デヴィット・ニクソン手がける『ピーターパン』の演出・振付はその問題点を見事に解決しました。使用されていた宙吊りのシステムは、東京ディズニーシーのマーメイド・ラグーン・シアターで見られるような、空中での宙返りが可能で自由に宙を飛び回ることの出来るシステム。現実的なことを言ってしまえば、ピーターパンを演じているダンサーの背中にワイヤーがいつ取付けられて、いつはずされているかを観客が察することは可能ですが、その取付け/取外しのすばやさと動きの自然さは、本当に空を飛べるのだ!という錯覚を覚えるほど。ピーターパンを演じたクリスチャン・ブルームホールとウェンディーを演じたピッパ・モーアの伸びのあるジャンプ力は常にワイヤーがついているのではと思えるほど非常に優れていました。ピッパ演ずるウェンディーには少女と女性の両面を持ち備えた魅力があふれ、彼女の演技力の高さが印象に残りました。

ネバーアイランド島の動物、海辺のマーメイドやフック船長との船上の決闘シーンなどには『ライオン・キング』などのミュージカルやディズニーランドのショー的なイメージを覚えますが、目の前で繰り広げられる世界はまさに大人でも子供に戻ってネバーランドに飛んでいくことが出来る、そんな夢を見ることができる世界でした。

音楽には、映画『恋におちたシェイクスピア』や『リトル・ダンサー』の作曲家として有名なスティーヴン・ウォーベックがニクソンの依頼を受けて初のバレエ音楽を作曲。バレエのクラシック音楽では味わうことの出来ないスペクタクル性に富んだ音楽が心を高揚させました。
その他特筆すべき点として、ネバーアイランド島で迷子になっていた子供たちの一人ニブスを演じていた高橋宏尚のまさに少年に見える自然な演技力、そしてカンパニー全体の連帯感と動きの質の高さが挙げられるでしょう。
(2005年3月31日、サドラーズ・ウェルズ)


●シルヴィ・ギエム、写真集『インヴィテーション』と気になる今後

シルヴィ・ギエムの待望の写真集『インヴィテーションInvitation』(写真家Gilles Tapie)が3月下旬に発売されました。縦×横40cm×30cm、厚さ5cmというボリュームはまさにコッペリウス博士の魔法の本並みの大きさ。それだけシルヴィの40年間の歴史の重みを感じさせます。シルヴィの家族、幼少時代、体操選手時代、オペラ座バレエ学校時代の写真(ローラン・イレールやエリザベット・モーランの姿も)、ヌレエフ/ベジャールらとの写真、リハーサル写真、公演写真(『マノン』『ドン・キホーテー』『ロミオとジュリエット』…)、日本での写真、シルヴィ制作の陶芸作品、花、木、自然…フォトキャプション・ナンバーが付いている写真だけでも362点、全429ページ。この写真集からではほんの一部に過ぎないということはわかっているものの、今まであまり知ることの出来なかったシルヴィ・ギエムという女性の素顔を見ることが出来ることはとてもうれしいことです。こうして彼女の魅力をさらに知ることが出来ることによって、今後舞台の上で観る彼女から受ける感動がまた変わってくるような気がします。

4月20日〜23日にはサドラーズ・ウェルズ劇場(SW)でバレエ・ボーイズとの『ラッセル・マリファントの夕べ』がアンコール公演として上演され、彼女の完璧主義者と言える探究心とさらに上を可能にする彼女の底知れない能力に圧倒されました。今回の『ブロークン・フォール』では昨年10月にSWで上演された時をさらに上回る動きの滑らかさがとても衝撃的でした。

公演初日の20日にはインディペンデント紙にインタヴューが掲載され、シルヴィは現在ラッセル・マリファントとのデュエットに取り組んでいるという情報があり、その発表が期待されます。そのインタヴューの最後には誰もが気になる質問がされました。2005/6シーズンもロイヤル・バレエ(RB)に在籍することが来シーズンの予定からも明らかになりましが、今後について「飽きたら辞めるわ」と一言。誰もがその日が永遠に来ないことを願うのは同じですが、それがいつになるかについては、「そんなの誰もわからないわ」とますますファンを怯えさせる答え。これからも女王様シルヴィの言動を、指をクロスしながらじっと見つめることになりそうです。

気になる来シーズンのRBでの活動ですが、4月20日に公式発表されたロイヤル・バレエ2005/6シーズン中でキャストが発表されている中で彼女の名前を見つけることが出来るのは2演目。『マルグリットとアルマン』(10月17,26,27日、コープと共演)と『マノン』(11月12日、ムッルと共演)が予定されています。
ロイヤル・バレエ2005/6シーズン詳細:www.royalopera.org/

 

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