関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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NBAバレエ団のゴールデン・バレエ・コー・スター

『時の踊り』
原嶋里会、ヤロスラフ・サレンコ
 1995年に始まったNBAバレエ団のゴールデン・バレエ・コー・スターは、今年で8回目となった。毎回、世界の各地からじつに多彩なゲストを招いて、華やかに開催されている。この公演で初めて出会い、その後、注目することになったダンサーも何人か数えることができる。
 今年は、昨年のジャクソン・コンクールで銀メダルを受賞したブルックリン・マックに関心が集まっていた。
 まずは、ポンキエッリのオペラ『ジョコンダ』より『時の踊り』。プティパの原振付に基づいてボスクレンシェンスカヤが再振付したもので、夜の女王を原嶋里会、三日月をヤロスラフ・サレンコのNBAバレエ団コンビが踊った。朝、昼、夕、夜という時の巡りを、色彩やフォーメーションでコントラストをつけて見せる。なかなか整った舞台だった。
 次は注目のブルックリン・マックが「黒鳥のヴァリアシオン」を力強く踊った。しかし短い。あっという間に終わってしまい、もう少し観たかった。
 アメリカン・バレエ・シアターのソリスト、マリア・リチェットとコロラド・バレエ団の久保紘一が『スプレンディドアイソレーションV』。白いロングスカートの裾をなびかせて、ロマンティックなラインを描く。トワイラ・サープのカンパニー出身で、現在はABTのスクールで教えているジェシカ・ラングの振付作品である。久保の安定した見事な表現力に感心した。
「黒鳥のヴァリアシオン」
ブルックリン・マック
『スプレンディドアイソレーション3』
マリア・リチェット、久保紘一
  韓国国立バレエ団のプリンシパル、ユン・ヘーチンとやはり韓国で活躍しているリ・ウォン・クックの『タリスマン』。そして再び、ブルックリン・マックが『ディアナとアクティオン』の男性のヴァリエーションを踊った。全身にスプリングが入っている、鋭いバネ仕掛けのような圧巻の踊り、ステージが狭く感じるほどだった。
 サンフランシスコ・バレエ団のプリンシパル、ヤンヤン・タンは、自身で振付けた『カルメン』を披露した。舞台の背後に半円形に椅子を並べ、美しい肢体を充分に活かしたソロだったが、カルメンの強烈な存在感を表すには今一歩の工夫が必要かもしれない。
 休憩の後は、上海バレエ団出身で04年のヴァルナ国際バレエ・コンクールで銀賞を受賞した、広州バレエ団のプリンシパルのフ・シュと、サレンコの『海賊』で始まった。フ・シュは最初はやや固かったが小顔でバランスがいい。サレンコはピルエットにアクセントを付けて踊り受けていた。なかなか見目麗しいペアである。
 エレーナ・テンチコワとフィリップ・バランチヴィッチのシュツットガルト・バレエ団のプリンシパルのペアは、『眠れる森の美女』を豪華に踊った。
『タリスマン』
ユン・ヘーチン、
リ・ウォン・クック
「アクティオンの
男性ヴァリエーション」
  ブルックリン・マック
『カルメン』
ヤンヤン・タン
『海賊』
フ・シュ、ヤロスラフ・サレンコ
『眠れる森の美女』
  エレーナ・ティンチコワ、
フィリップ・バランチヴィッチ
『ジゼル』 
 デルフィーヌ・ムッサン、
カール・パケット
 パリ・オペラ座バレエ団のエトワール、デルフィーヌ・ムッサンと同じくプルミエのカール・パケットは『ジゼル』。ムッサンはオペラ座らしい悠揚迫らざる落ち着いた踊りだった。
 最後は、マリインスキー・バレエ団のプリンシパル、アリーナ・ソーモアとレオニード・サラファーノフが『ドン・キホーテ』を踊って締めくくった。ソーモアの愛らしい魅力的なキトリが素晴らしい。サラファーノフは少々抑え気味なのか、本拠地ではもっと海老のような躍動感の漲らせて踊っていたが。
 今年のゴールデン・バレエ・コー・スターは、久しぶりに舞台が熱く、観客も興奮したガラ・コンサートだった。

フィナーレ
『ドン・キホーテ』
アリーナ・ソーモア、
レオニード・サラファーノフ
(8月5日、メルパルクホール)

ローザンヌ・コンクール受賞者によるガラ・コンサート

 今月観た三つ目のガラ・コンサートは、ローザンヌ国際バレエコンクールの受賞者たちが踊った。
 オープニングは、スライドによる演目紹介に続いて、スズキ・クラシック・バレエ・アカデミーの『グラズノフ組曲』。
 第1部冒頭は、07年ローザンヌ・コンクールの受賞者、吉山シャール・ルイ・アンドレの『Rubrix』(マティアス・スパーリング振付)と河野舞衣の『グラン・パ・クラシック』のヴァリエーション。赤いシャツと黒いパンツで俊敏に踊った吉山、見事なプロポーションが光る河野、ともに若々しさあふれる舞台だった。
 ヴュルツブルグ・バレエ団のソリスト、菊地あやことフリーの遅沢佑介の「黒鳥のパ・ド・ドゥ」。レ・グラン・バレエ・カナディアンのソリスト・コンビの木田真理子と児玉北斗は、ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップスのバレエ・マスター、ショーン・ハウンセル振付の『Territoire』。アルヴォ・ペルトの曲を使った優雅な流れのダンスだった。
 第2部は、パシフィック・ノースウエスト・バレエのプリンシパル、中村かおりとソリストのリュシアン・ポストルウエイトの『Kaori & Lucien』(オリヴィエ・ウエバース振付)が幕開き。中村がローザンヌのスカラシップを受賞したのは、もう20年も前のこと。優れたリズム感と鮮やかな舞台姿が、時を越えて甦るようだった。
 谷桃子バレエ団の高部尚子と斎藤拓は、坂本登喜彦が振付けた『ロミオとジュリエット』を踊った。これはロミオとジュリエットの出会いから、寝室の別れまでを、マントと窓の映像と照明の変化だけで描いた見事なパ・ド・ドゥ。プロコフィエフの音楽を使って、『ロミオとジュリエット』の物語のエッセンスをうまくまとめていた。
『Kaori & Lucien』
中村かおり、リュシアン・ポストルウエイト
『ロミオとジュリエット』
高部尚子、斎藤拓
 英国ロイヤル・バレエ団のファースト・アーティスト、崔由姫とファースト・ソリスト、佐々木陽平はピーター・ライト版『くるみ割り人形』のグラン・パ・ド・ドゥ。崔の落ち着いて堂々とした切れのいい動きが印象的だった。
 べルリン国立歌劇場バレエ団のプリンシパルのペア、中村祥子とロナルド・サフコヴィッチは『Transparente』を踊った。ファドに乗せて魅力的な愛の姿を描いたサフコヴィッチの小品である。中村の長身を活かした動きが鮮やかで、特にステップが魅力的だった。
 第3部は、オハッド・ナハリン振付の『DANCE〜Minus 16より』で、05年に日本初演を果たした貞松・浜田バレエ団が踊った。舞台全面に半円形に椅子を並べ、連鎖的な全体の動きとそれと対抗する個の動きにより、ダンスの流れを創っていくが、最後には、ダンサー全員が一人づつ客席の観客を舞台の上に誘い、一緒に踊る。変化に富んだ動きが構成されていて、誘い込まれていくうちに、ついには観客が舞台に上げられてしまう、というパワーのあるダンスだった。
『くるみ割り人形』
崔由姫、佐々木陽平
『Transparente』
中村祥子、ロナルド・サフコヴィッチ
『DANCE〜Minus 16より』
(8月17日、青山劇場)

小林紀子バレエ・シアター『ザ・レイクス・プログレス』日本初演ほか

『ザ・レイクス・プログレス』
島添亮子
 小林紀子バレエ・シアターがマクミラン&ショスタコーヴィッチの『コンチェルト』、二ネット・ド・ヴァロワ&ゲーヴィン・ゴードンの『ザ・レイクス・プログレス』、マクミラン&スコット・ジョップリンの『エリート・シンコペーションズ』というプログラムを上演した。
『ザ・レイクス・プログレス----”レイク”放蕩児の生涯---』は日本初演だが、昨年、英国ロイヤル・バレエで上演されている。(作品については守屋氏が「英国ダンスロイヤルシート」で解説。
http://www.chacott-jp.com/magazine/around/uk_43.html)
 ステージングのジュリー・リンコン、指揮のフィリップ・エリス、衣装のマイケル・ブラウン、装置のスーパーヴァイザー、ダクラス・ニコルソンが招かれ、ゲストダンサーはロイヤル・バレエでもファーストキャストとして踊ったヨハン・コボーなど、ほとんどの主要スタッフとキャストが英国から招かれて創られた舞台である。
 ヨハン・コボーがレイクに扮し、島添亮子が裏切られた少女を踊っている。
 この作品は、18世紀英国の画家ウィリアム・ホーガスの風刺と教訓の込められた8枚の連作画のうち6枚に基づいて制作された。膨大な遺産を相続した青年とそれを取り巻く人々、青年に尽くす女性の関係を18世紀のロンドンを舞台として描かれている。それぞれの関係が具体的に進行していくわけではなく、ある時々の有様を断面のようにして見せる。
 青年を中心としたシーンはテンポが速く、大げさに戯画的に進められ、女性のシーンはゆっくりと情緒を込めて描いてコントラストをつけているのだが、いささか単調にも感じられる。あらゆる意味でディープに英国的であり、物語を追うのも少々苦労してしまうのだが、コボーは手慣れた動きで、島添は登場人物の細かい心理を追って丁寧に踊っていた。
『ザ・レイクス・プログレス』
島添亮子、ヨハン・コボー ヨハン・コボー
『エリート・シンコペーションズ』はマクミランが、スコット・ジョップリンのラグタイム・ミュージックを使って振付けた、じつに楽しいダンスである。
<ピエロのカーニバル>みたいなきらびやかな衣装と、様々に凝った意匠の帽子をかぶったダンサーたちが、ダンスの楽しさを競い合う舞台である。オーケストラのメンバーまでもが同じ衣裳を着て舞台上で演奏し、ミラーボールが回り、観客の目を楽しませる。
 ダンスはもちろん、バラエティ富んでいて、パ・ド・ドゥからカップルダンス、群舞、テクニック比べなどがつぎつぎに展開してまったく飽きさせない。
 中野孝紀のピアノ演奏が素晴らしい。ダンスと完全にシンクロして踊るように演奏していて、ダンサーを乗せてしまっているかのよう。
 ダンサーのバランスも良く整っていると思われた。特に高橋怜子の動きが印象的だった。
『エリート・シンコペーションズ』
   高橋怜子
(6月30日、新国立劇場 中劇場)
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