関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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バレエ協会のトリプルビル、『カルミナ・ブラーナ』ほか

日本バレエ協会の第45回バレエフェスティバルが開催され、早川惠美子振付『シンフォニー・プラハ』(音楽モーツァルト)、中島素子振付『パリのよろこび』(音楽オッフェンバック)、石井潤振付『カルミナ・ブラーナ』(音楽カール・オルフ)が上演された。

『シンフォニー・プラハ』は、今年、モーツァルト生誕250年を迎えたことから、モーツァルト曲集によるダンスのアンサンブルを振付けたもの。3組のカップルのダンスから始まり、群舞、パ・ド・ドゥを交錯させて流麗な流れを見せた。よくコントロールされた流れのある舞台だった。女性ダンサーのピンクのチュチュが可愛らしかった。



『シンフォニー・プラハ』

『シンフォニー・プラハ』

『シンフォニー・プラハ』

『パリのよろこび』は、カフェを舞台に、かつてはここのギャルソンだったが、一夜にして大成功を収めた青年オペラ歌手とそれを援助した恋人、そして彼のギャルソン時代に想いを寄せ合った女性が、織りなす感情の絡み合いを描いている。
 下村由理恵、菊地研、田所いおり、橋浦勇、尾本安代、夏山周久、佐藤一哉など若手、べテランの実力者が出演している。賑やかに楽し気な雰囲気がよくでているが、愛の心理とコミカルな動きがさらに噛み合えばよかった、とも思った。フレンチカンカンは文句なく楽しかったが、何百年にもわたってカフェの床に滲みこんでいるワインの香りを感じることができたかどうか。下村、菊地にはもっと踊ってもらいたかった。



『パリのよろこび』

『パリのよろこび』

『カルミナ・ブラーナ』は力作である。運命そのものを表す大きな赤い布を駆使し、運命の女神を中心に、第1部「春」第2部「居酒屋にて」第3部「愛の庭」とつぎつぎに25曲が踊られる。じつに豊富な舞踊言語により、自転車や万国旗、丸焼きチキン、化粧セット、キャスター付きマネキンなどの小道具を操って、様々な演出シーンが展開する。しかし全体を通しては神話的な表現となっており、適度のユーモアが人間性の豊かさを表している。
 最後の4曲は力強い群舞の構成で描き、ラストの演出も見事に決まっている。運命の女神を見事に踊りきった寺田美砂子を讃えたい。遅沢佑介もシャープに動きを見せた。今後もこうした作品をどんどん上演して、日本のダンスの実力を大いに示していくべきである。
(11月10日、メルパルクホール)



『カルミナ・ブラーナ』

『カルミナ・ブラーナ』

谷桃子バレエ団 創作バレエ10「古典と創作」

 谷桃子バレエ団の「古典と創作」は、『パキータ』と新作『Shout on the line(シャウト・オン・ザ・ライン)』だった。
『パキータ』はプティパの振付を、キーロフ・バレエ出身のナターリャ・ボリシャコーワ、ワジム・グリャーエフが再振付、指導したもの。エトワールを永橋あゆみ、今井智也が踊り、そのほか佐々木和葉、朝枝めぐみなどが踊った。



『パキータ』

『パキータ』

『パキータ』


『Shout on the line』
『Shout on the line』は坂本登喜彦の構成・演出・振付による新作である。真紅の太陽から伸びているライン上に、出会いや死、強過ぎた愛や孤独、回想、運命の糸、妄想、行動、牡と牝、祭、偶然などのシーンが描かれていく。運命の上を際どく歩む人間たちの姿である。
 軽快なテンポと素早い動き、高部尚子と斎藤拓のカップルを中心にした様々なフォーメーションが描かれ、すべてが過不足なく踊られていて破綻がない。ただ、全編を通して、ダンスを通底しているリズムが同じ調子に感じられる。時折、中断するが、結局また同じリズムがつづく。全体にまとまりは良いのだが、作品展開のリズムが一貫していて、やや単調にも感じられた。どこかで自身のリズムを否定するような大胆さがあってもいいのではないか、と思った。ダンサーはみな、きびきびとしていてたいへん気持ちの良いダンスだった。
(10月31日、めぐろパーシモンホール)


『Shout on the line』

『Shout on the line』

篠原聖一バレエ・リサイタル『ロミオとジュリエット』

 確かに『ロミオとジュリエット』の物語はドラマティックである。きらきらと輝くばかりの青春の真っただ中にいる二人が、政治的対立を隔てて出会い、至上の愛を得るが、対立の中で起きた悲劇によって引き裂かれる。そしてパリスとの結婚を迫られたジュリエットは、乾坤一擲、起死回生のチャレンジに掛ける。筋だては整っていた、だがしかし、運命的な行き違いによって、消える必要のない命が落とされる。ジュリエットがもう少し早く目覚めていたら、とか、ロミオに牧師の手紙が届いていたら、とか。<たら・れば>がふんだんに込められた物語である。
 そこで篠原演出は、運命という役を創って登場させ、物語の要所要所に姿を現し、人間の存在を越えた力があることを示唆する。特に、ジュリエットが仮死状態になる薬を飲むかどうか迷うシーンは、入念に描かれるが、運命は、彼女の苦悩を人間の表情のひとつとしてとり扱っているのである。
 終盤の墓場のシーンでは、ジュリエットに策を与えた牧師を登場させ、若い二人を自殺させてしまった運命の悪戯を呪う。黒々とした青春の死体が激しく抗議しているかのようだったが、結局、運命が物語の幕を下ろしたのだった。

 オリジナルキャストであるジュリエットの下村由理恵、ロミオの山本隆之は、堂々と落ち着いた踊りで、説得力のある演技を見せた。
 三方に対立を表す二色のベルトを垂らし、死刑台のような階段の付いた台を自在に動かして使われるセットも、ドラマに応じてよく機能していた。
(10月26日、メルパルクホール)


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