フランス国立リヨン・オペラ座バレエ団が3作品を上演
リヨン・オペラ座バレエ団といえば、フランソワーズ・アドレーが芸術監督だった1985年、古典作品の再創造として『シンデレラ(サンドリヨン)』の振付をマギー・マランに委嘱した。マランはプロコフィエフの音楽を「甘ったるい」といってヴァリアシオンなどを削除し、赤ん坊の声などを挿入して再構成。ダンサーにはすべて着ぐるみを着せ仮面をかぶらせるという『シンデレラ』を振付けた。するとこの破天荒のアイディアが大受けして、世界的な大ヒット作となったのである。
マランの『シンデレラ』の大成功により、リヨン・オペラ座バレエ団の名前は一躍世界に知られたが、カンパニーの方針も定まった。以後、古典作品の再創造と新たなコンテンポラリー・ダンスの創作やレパートリー化に積極的に取り組むようになったのである。 |
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現在は、アドレーの下でバレエ・マスターを務めていたヨルゴス・ルーコスが芸術監督となり、ポストモダン・ダンスなどにも取り上げている。
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今回はレパートリーの中からアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル振付『大フーガ』(音楽・ベートーヴェン1992年初演)、マギー・マラン振付『グロスランド』(音楽・バッハ1989年初演)、サッシャ・ヴァルツ振付『ファンタジー』(音楽・シューベルト2006年初演)が上演された。これは時代性を念頭に置いたプログラムではない。レパートリーの中からフランス、ベルギー、ドイツの代表的と思われるコンテンポラリー・ダンスをプログラムしたものである。
実際、コンテンポラリー・ダンスがそんなに都合良く10年ごとに新しい傾向を見せてくれるわけはない。90年代の作品でも今日的な輝きを放っているいるダンスもあれば、今日初演されても古臭い舞台はいくらでもある。あるいは、来日するカンパニーだけを漠然と眺めているとそのような区分けになるのだろうか。 |
ケースマイケルの『大フーガ』は楽曲を分析してダンスの動きと組み合せて、彼女の振付らしい展開のある舞台だった。マランの『グロスランド』は、男性がシルクハットにサスペンダーの半ズボン、女性がワンピースという衣裳で丸々と太った着ぐるみを着けたダンサーたちが踊る。マランが妊娠した時の体験を生かして太った人の身体の感覚を、明るく可愛らしく、そしてグロテスクな美をみせたダンスだった。
最も新しい作品はヴァルツの『ファンタジー』。まずは照明を落とした暗い舞台の中央に二人のダンサーが間近に向き合い、一人が手を上げて拳を相手の口に突っ込むようにする。拳を突き付けられたダンサーは、めいっぱい仰け反る。そのほか様々な身体のシニックで滑稽な動きがあり、ルーズな動きやルーズなフォーメーションが繰り返される。身体の動きをインプロビゼーションを交えて追究し、一種のファルスが姿を見せたダンスだった。
(3月5日、神奈川県民ホール) |
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ザ・フォーサイス・カンパニーも来日公演を行った。Bプログラムを観たが、『Clouds after Cranach』は音楽なしで、闘争的な動きのインプロビゼーションの合間にストップモーションを折り込んだもので、ワークショップをそのまま舞台に上げたような作品。『7 to 10 Passages』は7人のダンサーが舞台の奥に間隔を開けて並び、奇妙に歪んだポーズをとりながらゆっくりと前進したり後退したりする。舞台脇に座った男女がそれぞれ存在に関するフレーズを叫ぶ、といったもの。ダンスというより、表現のレベルを極度に強化したパフォーマンスである。最後の『One Flat Thing, reproduced』は、舞台奥から20個くらいの長い机を、ダンサーたちが一気に舞台に押し出してきて始まった。鋭く素早い動きが、狭い机と机の間を巡って展開していく。結局、全部がコンセプチュアルな舞台であり、ダンスと対峙しようと思った観客には肩透かしだったのではないだろうか。
(3月4日、さいたま芸術劇場大ホール)
東京シティ・バレエ団 meets 民族舞踊
東京シティ・バレエ団が、いつもバレエを踊っているダンサーたちに、世界各国の民族舞踊を踊らせる、という興味深い公演を行った。六つの民族舞踊が踊られたが、それぞれが踊り終った後に山野博大と石井清子(理事長)がステージに現れ、解説と振付家やダンサーへの質問を行った。
インドネシアのバリ舞踊では、生活の中でかごを頭に乗せて歩く様子から生れたと思われる、目、手、腰の重心の低い動きが特徴的。中国は『奔馬』という、馬の闊達な動きを舞踊にしたもの。モンゴルに近い中国の古典的な踊りである。ロシアは、今では隣国となったウクライナの踊り。『コッペリア』で見られるような華やかな色彩が溢れる踊りだった。
最近の韓国の舞踊は、音楽や衣裳に韓国らしさを留めたコンテンポラリー・ダンスが流行しているそうだ。ユニヴァーサル・バレエでも踊っていたことのあるキム・ボヨンの振付『暗闇の中』。躍動感あるダンスで、来日した当時、言葉もまったく分からなくて苦労したころのことを思い出して振付けたそうである。スペイン舞踊はバイレクラシコ。カスタネットとアバニコ(扇子)を使い、サパティアード(足を踏み鳴らす)で踊る。スペイン舞踊独特の道具と衣裳によって踊った。
最後は日本。七五三以来という着物を着て、安達悦子が尾上紫の振付の『さくら』を踊った。安達は日本的な仕草や呼吸が特に難しかったと語っていた。
このようにバレエダンサーが異なったダンスに挑戦し、その実際の経験を話してくれる、という企画はたいへんおもしろかった。安達悦子の日本舞踊を見られたという眼福もあったし、東京シティ・バレエ団らしい楽しいひとときであった。
(3月9日、ティアラこうとう小ホール)
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