関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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「梅は咲いたか、桜はまだかいな」の季節。道を歩いていると、ふと梅の香りに春を誘われることがあります‥‥。と、のんびりしてもいられませんね。ダンスの舞台はバレエ、モダン、コンテンポラリーの来日ラッシュでもうとっくに熱くなっています。

ルジマトフ、フェジェーエフ、プリセツカヤが集った<バレエの美神>

 1999年に第1回を開催、以来3回目となる<バレエの美神>。第1回にも登場した<世界のバレエのミューズ>プリセツカヤを迎え、ルジマトフ、ファジェーエフ、ピエトラガラ、チェルノブロフキナ、レドフスカヤ、ムッサン、ロモリなどに加えて、レニングラード国立バレエ団のダンサーが集った。

 まず、『ドン・キホーテ』第2幕の夢の場面。イリーナ・ペレンがドルシネア姫、オクサーナ・シェスタコワが森の女王に扮し、レニングラード国立バレエ団と共に踊った。プティパの振付に基づいてボヤルチコフが演出しているが、コール・ド・バレエもよく整っていて幕開きにふさわしい雰囲気を漂わせた。続いてワシーリエフ版の『ロミオとジュリエット』からバルコニーのシーン。この作品を初演したモスクワ音楽劇場バレエのナタリア・レドフスカヤとゲオルギー・スミレフスキーが踊った。ワシーリエフの澱みないパ・ド・ドゥは、余情を残すくちづけしながらのピルエットで終った。第1部の最後は笠井叡がルジマトフに振付けたソロ『レクイエム』。あまりステップを使わず、観客に背中を見せるシーンの多いダンスだが、ルジマトフの内面をしぼりだすようなゆるぎないコンセントレーションが凄かった。

 第2部は、久しぶりのマリ=クロード・ピエトラガラがジュリアン・ドゥルオと踊った『忘れないで‥‥』で始まった。振付も2人で一緒に手掛けたもの。男と女の激しいやりとりが、幻想シーンを交えて展開された。レドフスカヤとスミレフスキーのモスクワ音楽劇場組は、ブリャンツエフ振付の『幻想舞踏会』の1場面。軽やかなクラシックの中に、床を転がったりする動きが自然に組み込まれていた。息の合ったペアである。

 第3部は、オクサーナ・クチュルクとレニングラード国立バレエ団による『眠りの森の美女』からローズ・アダージョ。これもプティパ版をボヤルチコフが演出したものである。クチュルクの落ち着いたオーロラだった。キーロフ・バレエのプリンシパル、アンドリアン・ファジェーエフはペレンと『眠りの森の美女』のグラン・パ・ド・ドゥを踊った。ファジェーエフの細心の注意を全身に行き渡らせた、たおやかな動きが際立った。

 そして、<美神>マイヤ・プリセツカヤの登場。ベジャールがプリセツカヤのためだけに振付けた『アヴェ・マイヤ』である。紅と白の扇を両手にもって踊る。あの白鳥の死の瞬間を描いたアームスの美しい流れるような動き。年齢をまったく感じさせない、まさに<美神>の舞台であった。さらにディルフィーヌ・ムッサンとウィルフリード・ロモリのオペラ座組が、ノイマイヤー振付の『シルヴィア』のパ・ド・ドゥを踊り、鮮やかなイメージをクールな美の中に描いた。

 おおとりは、ルジマトフとクチュルクが踊った『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥ。何度観てもルジマトフの完璧な舞台姿が、爽やかな解放感を味わわせてくれる。カーテンコールは、プリセツカヤを中心としたスターたちが居並ぶきらびやかなものとなり、惜しまれつつ幕が下ろされた。
(2月4日、オーチャ−ドホール)


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3月10日更新分の文中に誤りあり、13日AM10:30修正させていただきました。ご覧いただいた皆様、関係者の皆様には大変ご迷惑をお掛けいたしました。謹んでお詫び申し上げます。
※修正箇所「オクサーナ・クチュルクが森の女王に扮し」(誤)→「オクサーナ・シェスタコワが森の女王に扮し」(正)


バレエ協会の『白鳥の湖』、スターダンサーズ・バレエ団の『ジゼル』

 2006年都民芸術フェスティバルに参加する、バレエ協会による『白鳥の湖』が上演された。今回は、下村由理恵/李波、島田衣子/斉藤拓、岩田唯起子/法村圭緒のスリーキャストが組まれた。ヴァージョンはプティパ、イワノフの原振付を改訂したコンスタンチン・セルゲイエフ版を基本に、ドゥジンスカヤ、アンナ=マリ・ホームズが手を加え、さらに今回のために橋浦勇が再改訂したもの。道化と家庭教師が登場し、王子の友人にはキャラクターが与えられていない演出である。

 初日を観たが、下村由理恵のオデット/オディールは手慣れた踊りでめりはりがはっきりしていて見やすい。第2幕では、魔術で白鳥にされている境遇から早く人間に戻りたい、という気持ちが踊りによってくっきりと描かれている。オディールも感情の動きが明快に見える踊りだった。
 ロートバルト、パ・ド・トロワもトリプルキャストが組まれていたが、私が観た日では、とりわけ西田佑子が光っていた。もっともっと踊ってもらいたいダンサーである。
(2月28日、東京文化会館)

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 スターダンサーズ・バレエ団が、バーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパル、佐久間奈緒とニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパルだったロバート・テューズリーをゲストに迎えて、ピーター・ライト版の『ジゼル』を上演した。もともとこれはスターダンサーズ・バレエ団のレパートリーであるが、上演のたびに振付家によって手が加えられている。

 特に演出的に関心させられるのは、第1幕終盤のジゼルの狂乱のシーンである。結婚を約束したロイスは実はアルブレヒト伯爵であり、貴族の婚約者がいたことを知って絶望したジゼルの死に至るまでを、ピーター・ライトはごく自然にスムーズに展開する。母ベルタは椅子に掛けたまま、愛する娘ジゼルの死を見て茫然自失、立ち上がることさえできず村人たちに支えられている。しかし、意を決して立ち上がると、ジゼルの蘇生を願って虚しく揺り動かしているアルブレヒトをはねのけ、悲嘆にくれる。そうした母親の行動により、アルブレヒトは一縷の希望も残されていない現実を知り、その場を立ち去らるのである。

 ジゼル、アルブレヒト、ベルタあるいはヒラリオンのそれぞれの気持ちが過不足なく正確に捉えられており、それぞれがその距離を保ちながら演技している。そのために、緊張感のある見事な舞台が創られているのである。
 佐久間のジゼルは、ケレン味なく正確で腕が素敵に美しい。クラシック・バレエの美をきちんと表現のできる好感のもてるダンサーである。テューズリーも感情の高まりとジゼルへの深い愛を、よく表現して、最後の見せ場を見事に踊りきった。ピーター・ファーマーの美術も優れており、なかなか充実感のある舞台だった。
(2月5日、ゆうぽうと簡易保険ホール)


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