関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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●ザハロワ、ラカッラなどをゲストに、第15回日本バレエフェスティバル

 橘秋子記念財団の10周年を記して1984年に始められた、日本バレエフェスティバルは今年15回を迎えた。総勢38名のダンサーが種々の演目で妍を競った。

 初日の幕開きは田中ルリと遅沢佑介の『海賊』第2幕のグラン・パ・ド・ドゥ。田中は堂々と踊ったが、遅沢が体調を落としているのか、もうひとついつものイキの良さがでなかった。酒井はなと西島千博は、リン・チャールス振付の『内_uchi/外_soto』から「外soto〜Conversations not heard」を踊った。しっかりとタイミングをとって、コミカルなリズムを観客に感じさせなければならないパ・ド・ドゥである。酒井も西島もそつなく、息の合った踊りだった。志賀三佐枝、山本隆之のペアも『ライモンダ』第3幕のグラン・パ・ド・ドゥを落ち着いて踊った。

 キエフ・バレエ団のペア、アナスタシア・チェルネンコとデニス・マトヴィエンコは、『ラ・バヤデール』の幻影の場のグラン・パ・ド・ドゥ。見事なプロポーションのチェルネンコとキレとスピードのあるマトヴィエンコの踊りで、フェスティバルらしい雰囲気がいっそう盛り上がった。

 第2部は、島添亮子とロバート・テューズリーによるマクミラン振付の『コンチェルト』の2nd Movement。音楽はショスターコウヴィッチ、日本初演である。
島添の優れたバランス感覚が際立ったが、視線がやや安定性を欠いたようにも感じられた。テューズリーもしっかり支え、ケレン味のない緻密な振付の味を見せた。

『コンチェルト』

 ゲストのラカッラとザハロワが<ファムファタール>を競演した。ラカッラはプティの『カルメン』。彼女はカルメンのキャラクター、感情表現を自家薬籠中のものとしていてゆうゆうたる舞台である。共演はシリル・ピエール。
 ザハロワはゼレンスキーとやはりプティの『若者と死』。女そして死神を踊った。青春の輝く生命の中に宿る死を暗示する役だが、ザハロワはちょっと悪役的なイメージだった。ゼレンスキーも衰えを見せない踊りだった。


『カルメン』

『若者と死』

『ドン・キホーテ』

 第2日目は、橘るみと新国立劇場バレエ団のマイレン・トレウヴァエフが、『海賊』第2幕のグラン・パ・ド・ドゥを踊り、幕が開いた。橘るみはテクニックを軽々とこなす安定感抜群の踊り。こんれからどんなふうに自分を出して成長していくのか、楽しみである。志賀育恵と小林洋壱のシティ・バレエ組は『コッペリア』第3幕の平和のグラン・パ・ド・ドゥ。素直でたいへん好感のもてる踊りだった。佐籐朱実と菊地研は『ドン・キホーテ』第3幕のグラン・パ・ド・ドゥを手堅く踊った。菊地はこれからの日本人ダンサーとして、期待のもてる一人。もっと大きく成長してほしいものである。小嶋直也は『ラ・バヤデール』の幻影の場を島田衣子と踊った。小嶋の完全復活が強く望まれたが、まだ少々無理だったようだ。どうか、がんばっていただきたいと思う。

 第2部では、マトヴィエンコがチェルネンコと『海賊』の第1幕の奴隷の踊り。マトヴィエンコは余裕しゃくしゃく、難易度の高いテクニックを折り込んで会場を沸かせた。ラカッラとピエールはプティの『プルースト』から「囚われの女」を情感を滲ませるように踊った。ラカッラの完璧とも思える身体は、黒髪が乱れるとさらに感情が込められたように見えたのである。テューズリーと『ジゼル』第2幕のパ・ド・ドゥを踊った島添亮子は、緊張感を漲らせ舞台を引き締める踊りだった。
(8月5日、6日、新国立オペラ劇場)



『ラ・バヤデール』

『海賊』

『囚われの女』

●第7回ゴールデン・バレエ・コー・スター・ガラ 2005が開催

 NBAバレエ団が二年ごとに主催するゴールデン・バレエ・コー・スターのガラ公演。第7回目はアジア圏のニューウエーブに目を向け、中国、韓国のダンサーたちもゲストに迎えて行われた。
 中国からは3人のダンサーが4演目を披露、それぞれがコンテンポラリー・ダンスをソロで踊った。中国人のダンサーはみんな素早い動きで、中国的な印象を与える動きや仕草で作品を構成している。身体能力はたいへん優れていると思われる。韓国からは国立芸術大学のペアが『華の命』(振付はへー・シック・キム、音楽はYae Jin Jo)とグソフスキー振付の『グラン・パ・クラシック』を踊った。

 日本組のトップは、パリ・オペラ座バレエ団のカドリーユ、藤井美帆と遅沢佑介の『海賊』のパ・ド・ドゥ。ゆったりとしておおらかさを感じさせる動きで、中国の動きとは異なった印象を与えた。山本禮子バレエ団の渡辺美咲とNBAバレエ団の田熊弓子、セルゲイ・サボチェンコがゴルスキー振付、ドリゴ曲の『海と真珠』を踊った。

『パキータ』

 デミトリー、ダニールのシムキン親子は、デミトリー振付の『My Way』。音楽はポール・アンカ、歌はシナトラである。腰を曲げて頭を床に着ける動きを多用した作品。パリ・オペラ座バレエ団からマルセイユ国立バレエに移ったデルフィーヌ・バエとオペラ座バレエ団のカール.パケットは『エスメラルダ』。サンフランシスコ・バレエ団のプリンシパルで人気者のヤンヤン・タンは、同じバレエ団のディヴィット・アーシィーと『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥを踊った。ヤンヤン・タンの相変わらず美しいプロポーションには思わず見とれてしまう。彼女は自身が再振付した『瀕死の白鳥』も踊った。さすがに形は美しかったが、力が抜けきらなくてやや細やかさに欠けた部分も見受けられた。最後の白鳥が息絶えるところは、鳥の動きを人形振りのように見せる工夫があった。

 山本禮子バレエ団の出身でオレゴン・バレエシアターの飯野有夏が、ダニール・シムキンとワイノーネン振付の『パリの炎』を踊った。コロラド・バレエ団の久保紘一と同じバレエ団のシャロン・ウェナーは、バランスのとれたペアで『タリスマン』をしっかりと踊った。また、デミトリー・シムキンはベートーヴェンの曲を使って自身で振付けた『アダジオ・カンタビレ』を披露。鉄棒のように宙吊りのバーの上で演技した。たいへん変った動きを考える舞踊家である。
 最後は、バエとパケットを中心にNBAのダンサーたちが踊った『パキータ』。そして華やかに全員が再び登場しデフィレで幕を閉じた。
(8月1日、メルパルクホール)

『風吟』

『海賊』

『瀕死の白鳥』

『My Way』

 

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