関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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●ノボシビルスク・バレエの『白鳥の湖』

 ノボシビルスクは、シベリア鉄道のモスクワと極東の中間地点の都市で、今から110年くらい前に、オビ川に橋を架けるために開かれた。人口は170万人でオペラ・バレエ劇場は2800席を有し、マリインスキー、ボリショイ劇場よりも大きい。1999年からマリンスキー劇場のセルゲイ・ヴィハレフがチーフ・バレエ・マスターに就任し、意欲的にクラシック・バレエのクリエイテヴな活動を展開している。03年には、アプローズでもご紹介したが、プティパの複雑な振付をノテーションに基づいて復活しロシアの全劇場を対象とした演劇賞「黄金のマスク」を受賞した『コッペリア』と、『くるみ割り人形』を持って訪日公演を行った。

 昨年は『白鳥の湖』を日本の11か所で上演した。これは、プティパ、イワノフの振付とコンスタンチン・セルゲイエフ演出・構成に、第4幕にブルメイスティル版を加えたヴァージョン。(公演当日のスタッフ・キャスト表には2002年セルゲイ・ヴィハレフ改訂となっていた。)

 オデット/オディールはナタリア・エルショワ、ジークフリート王子はヴィタリー・ポロヴニコフで、ともにノボシビルスク・バレエ学校の卒業生だった。コール・ドはプロポーションがそろっているが、われわれからみるとみんな大きく見える。小さな白鳥たちの踊りも小さくは感じられなかった。第4幕のコール・ドのフォーメーションは綿密に創られて見応えがあった。王子とロットバルトの1対1の対決があり、愛の力により悪魔を倒す。自力救済型のハッピーエンドである。次回には、ヴィハレフがマリインスキー劇場でプティパの振付を完璧に近く復元した『バヤデルカ』を上演する、という。
(11月27日、昭和女子大・人見記念講堂)

 
●ダンカンのダンスを継承するブレシアニ博士が来日し公演&レクチャー


 良く知られているようにイサドラ・ダンカンは、自然と古代ギリシャ世界にインスピレーションを受けて新しい舞踊を創造した。「精神表現が身体のあらゆる経路を通じて流出する」として、自然や神話のイメージを感情と関連させ、ベートーヴェン、ショパン、シューベルト、ワーグナーなどの音楽で踊った。同時代の舞踊家はもちろん、ロダンやスタニスラフスキー、コクトーなどにも多大な影響を与えている。

 ジーン・ブレシアニ博士は、ニューヨーク大学大学院で哲学の博士号を取得。マリア=テレサ・ダンカンの創立したイサドラ・ダンカン国際学校を引き継ぎ、現在、この学校の芸術監督を務めている。今回は、イサドラ・ダンカン国際学校日本大使で、ニューヨーク大学でダンスを学んだ舞踊家の佐藤道代の尽力により来日、津田塾大学、国際文化会館ほかの協力により公演とレクチャーが実現した。
 津田塾大学では、「永遠の回帰;イサドラ・ダンカンとその生き方」と題した公開講座と、ダンカン理論独特の胸(太陽神経叢)から流れ出る動きを体験するワークショップが開催され、定員を越える参加者があった。通訳は日本大使の佐藤道代。

 ついで、東京アメリカン・センターと国際文化会館の共催により、「イサドラ・ダンカンへのオマージュ」公演が行われ、ジーン・ブレシアニと佐藤道代が踊った。まず最初に、ショパンのノクターン、エチュード、ワルツ、マズルカなどがブレシアニと佐藤、それぞれのソロなどで踊られた。続いて、ダンカンが彼女のダンスの学校を創った国々の音楽たちへのオマージュとして、ワーグナー、ショパン、スクリャービン。さらに、1915年にダンカンが恋人のゴードン・クレイグへのラヴレターとして創った、ブラームスのワルツ『愛の諸相』----あいさつ,ララバイ、うお座の夢、ジプシーになりたい、アフロディテ、貴方は私に互角かしら、愛の交歓、ジプシー、ジプシーの血潮、バラの花びらなど11曲がつぎつぎと披露された。最後の曲は、百合の花束を中央においたシューベルトの『アベマリア』。

 衣裳はシルクのギリシャ風シミューズ・ドレスで、上半身の動きが美しいのはもちろんだが、細やかなステップの優雅さが一際、目を惹いた。身体という寺院を使って人間を表す、という言葉の通り、清新な生気溢れるダンスを体感し、イサドラ芸術の一端に触れることができたのは、まさに望外の喜びであった。これを契機に、今後、日本でもイサドラ・ダンスの継承発展が盛んになっていくことを切望したい。

(11月30日、ウェルネス・センター公開講座、ワークショップ津田梅子記念交流会館、12月3日、イサドラ・ダンカンへのオマージュ国際文化会館講堂)

 

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